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自殺の罪は重い…らしい。

はぁ…!はぁ…!はぁ…!はぁ…!」


俺は道新雄也(どうしんゆうや)。22歳。

洞窟を全力疾走している。


何故ならば…


火吹きトカゲに追われている。


ボォォオ、ドカンドカンと炎の噴射、岩を砕き、俺の背中目掛けて突き進んでくる音が直ぐ後ろに迫ってくる。


なんだ、このあり得ない状況は。

現実味なんて全く感じない。

でも現実なのだ。


何故、こんなファンタジーなリアルを味わうことに至ったか?と言うと


死んで転生したから。


そして、何故死んだか?と聞かれたら


自殺した。


何が辛くて、何が悲しくてか?

と、聞かれたら自分でもわからない。

一瞬、頭が空っぽになって、気がついたら屋上から地面に飛び込んでいた。


衝動とは恐ろしいもんだ。


好きなものは沢山あったはずだ。


服が好き。音楽が好き。アニメが好き。漫画が好き。小説が好き。スポーツは観るのはまぁ好き。


それこそ、漫画やアニメや小説なんかは続きが気になるし、音楽は日常の活力にもなっていた。


家族間の関係もごくごく普通に良かったほうだと思う。


本当になんでだろうなあ。


ただ『死』には漠然とした興味はあった。

死ねばどうなるのか、何処へ行くのか、何も無いのか。


そんな小さな興味と日頃テレビやネットから入ってくるニュース、愚かで悲しい出来事。


無意識に溜めていたネガティブが心が空虚になった一瞬に暴走した結果が自殺という選択だったのか。


そして、死んだ後に待っていたのが読んでいた小説よろしくの異世界転生とやらだった。

天国に行くか、もしくは無か。

正直な話、このニ択だった。

異世界は物語として好きだったか、在るはずがないと思っていた。


とはいえ在ったらいいな!が在った喜びは無くはない。

また人生があるなら、それに越したことはない。


ただ、『まんま俺』のままでの転生はキツくない?って話。




ここで少し時を戻そう。


死んだ後、気がついたら何もない、辺り一面が真っ白な空間にいた。


「ようこそ。あの世とこの世の境、選択の間へ!」


そう言って目の前に現れた緑色の髪、青い目、白い装束の小学生?くらいの少年の言葉に目をパチクリとしていた。


「私は神様…とは言ってもまだ見習いなんだけど。マナって言います!よろしくお願いいたします!」


凄い礼儀正しいな。

てゆーか待て。何このファンタジーな感じ。

ラノベか漫画の世界的な。

これが『死』?


困惑する俺をよそにマナは話を続けた。


「さて、あなたのこれからについてなんですが。人間の皆さんが思うとおり死後の世界では天国と地獄があります。あなたが事故、病、殺人被害、災害、自然死で亡くなられたのであれば、このまま成仏して天国に行って頂くことになります。ですが…」


少し困った顔でマナは頭をポリポリと掻いて俺の顔を見た。


「俺の場合、どうなるの?」

何やら口ごもっているので俺から問うてみた。


俺は衝動的な自殺だ。誰かに追い詰められたとか、他者が責め立てられることのない、ただただ俺の自分勝手で選んでしまった死だ。

となれば、家族を悲しませ、迷惑をかけ。

俺が悪い…よな?


マナが口を開き、言いにくそうに話す。


「あなたは特別犯罪に加担したり、意図して人を傷つけたりした悪い人というわけではないです。でも…あのような自殺は他者の迷惑にもなりますし、何よりせっかくの命を粗末にして、ご家族を悲しませていらっしゃいます。これは悪意がないとはいえ、罪と言わざるを得ないのであります」


ごもっとも。

一瞬のネガティブな感情に飲まれ、衝動のままに死へと踏み出した愚か者。

それが俺だ。


「…地獄行き…になるのかな?ちょっと軽めの…的な?」


恐る恐る聞いてみると、マナは首を横にふるふると振った。


「人間の世界での一説では自殺者は地獄にて数年は石を運び、積み続ける罰を受けるなどがありますが違います。いわゆる…異世界転生ですね」


へ?異世界転生って罰なの?

あのオタクみんなの夢、異世界転生が?


驚きつつ思わず「むしろ御褒美だろ…」と呟いてしまった。


「そりゃ平和そのものの世界なら御褒美でしょうけど。一応、罰ですから。そんな甘くはないか、と」


何やら試練がありそうな含みのある言い回しでマナが言うと俺は「…ですよね」と納得した。


「で、何をすればいいの?それが終わったら天国へ行けるとか?」


この異世界で天国へ行くための試練か何かがあるのだろう。

そう考えた俺はマナに尋ねた。

すると返ってきたのは地獄のような返答で。


「ええ。終われば成仏していただきます。その試練がですね。魔王討伐となります!」


…は?今なんつった?

魔王討伐?

つまりは「命懸けで世界を救え」と?


頭の中で数秒のうち思考して、与えられた試練…というか使命を理解した。


「待て待て待て!もっぺん死ねって言ってるようなもんじゃんか!死ぬよ?絶っっ対死ぬ!俺は普通の一般ピープルなの!魔法はおろか、剣も使えないし、せいぜい学生時代にヤンキーと喧嘩したくらいの経験しかないわけ。人外、しかも魔王?そんな化け物の極みと戦争して無事なわけないだろ!!無茶苦茶だぞ、神様よ!!!」


子供の姿とはいえ、神様(見習いだけど)相手にまくし立てるように突っ込んでしまった。

でも当たり前の反応だろう。

悪どいことしたわけではないのにこんなハードル高くて重い罰があるか。


「確かに。今のままでは即死まっしぐらでしょうね。でもご安心を!ちゃんと普通の村人レベルで始めて、修練していただきます。武道→剣術→魔法の順番でスキルを会得。後にいざ魔王討伐の旅へ!という流れでお願いいたします!更にコンティニューが3回できますよ!」


…は?今なんつった?(2回目)

コンティニュー?今の俺の命、ひとつじゃないの?

「ゲームかよ!!」

また神様相手に突っ込んでしまった。

もうこの異世界の人生は神様がプレーヤーで俺はゲームのキャラという立ち位置のような。


『神々の遊びに付き合わされる人生』

それが俺が自殺というリセットボタンを選んでしまったことへの罰。

そんな気分だ。



姿形、記憶、能力。

チートにはほど遠い『まんま俺』で始まる異世界ライフ。


果たして俺はラノベ主人公になれるだろうか?


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