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大正四年四月
植草家。
「おはようございます、お嬢様」
「おはよう、ワンちゃん」
朋子お嬢様は相変わらずだな。
何度目も繰り返し聞かされて、慣れてしまった自分自身が怖い。
「本日のご予定は、学校を終えられましたら千代子と行儀見習いです」
「ふーん、分かったわ」
俺は一礼してお嬢様の部屋を後にした。
真の終章を目指して、自動は使わずに全ての会話を自分自身で行う。その上で、お嬢様の夢を叶えなければならない。
既に前回、俺は練習としてお嬢様の夢を叶えている。後は同じ手順を繰り返すだけだ。
「令人さん、旦那様がお呼びです」
「分かりました、姉さん」
千代子は当然ながら女中頭だ。
「旦那様、ただいま参りました」
「伊集院くん、当家には慣れてくれたかね?」
旦那様、植草連は臣民新報新聞社の専務理事だ。社長の弟という立場で稼ぎも凄い。