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中村兄妹の異世界冒険譚  作者: 柚根蛍
第2章 〜最強のアサシン〜
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#16 本当のトラップ

 ジメジメ、とても陰湿な空気。

 閉鎖、とても狭くて息が詰まりそうだ。

 ダンジョン、侵入者(ハンター)は最深部、宝を求め先へと進む。

 それは二人も決して例外ではない。


火属性(ファイア)も魔力を抑えて、灯りにすると三時間が限度。それ以上の長居は危険ですから早く攻略しちゃいましょう」

「おっけー!にしても、暗いねー」


 ダンジョンの内部は、縦横二メートル程で背の高い人だとかなり息苦しい高さだ。壁や天井、床は土で出来ており、掘られた感じのする如何にも手作りのダンジョンという感じ。

 道を進む。大半は一本道で、たまに分かれ道があるが、ハズレを進むとすぐ行き止まりになる。トラップも仕掛けられておらず、あまりにも簡単すぎる。

 まるで誘われてるのかと錯覚するくらいに。


「おっ、大広間に出たよ!最深部かな?」

「うーん、どうでしょうか。とりあえず警戒しておいてください」

「言われなくてもやるよ!」


 大広間、相変わらず土を雑に掘ったような部屋で、中心付近に四本の土の支えがある。そのほかに気になるものと言えば、土で作られた巨大な像。……って動いた?

 もしかして、ゲームによくいるゴーレムとかそういう類?警戒を強めて狭い通路へと進む。


ボゥン……


 大広間をやっと抜けるといったところで突然、目の前の通路に障壁魔法が張られる。

 もしかしてと思ったけど、やっぱり先戦闘か!


「罠だね、おにぃ!」

「ええ、引き締めていきますよ!」


 そして数秒後、あたりの土人形が突然、命を吹き込まれたようにピクッと動く。

 すると、ゆっくりと動き出し、立ち上がる。

 三メートルほどの巨体で、荒々しい咆哮をする。そして二人を圧倒しようと、手始めに地面に全力で攻撃をし、威嚇をする。

 ゴーレムの叩きつけた地面はひび割れ、隆起。大きな破片を撒き散らしながらポップコーンのように弾ける。


「うわぁ、すごいパワー!」

「一撃でも食らうのは避けたいですね。連携を意識して倒しましょう!」

「もちろん!」


 あのゴーレムには属性が効くのか。

 二本のクナイを持ち、それぞれに火属性(ファイア)氷属性(アイス)を付与させ、それを相手に投げつける。


 手応えはなく、むしろクナイ自体のダメージの方が属性攻撃より効いてるように感じた。

 属性は効かない、通常攻撃の方がダメージが大きいと。柊の雷属性(サンダー)もきっと効かないだろう。


「魔法は効きません!打撃で決めましょう」

「おっけー!」


 柊が、攻撃を避けつつ刀でゴーレムの体を削っていく。

 

 僕はヘイトを分散させるように出来るだけMPを使用し、大量のクナイを投げつける。

 でもあまり効いていない。


「おにぃ、攻撃だよ!」

「了解!」


 こちらに向けられた攻撃を、距離をとって避ける。

 そして前へ戻る。相手の攻撃範囲内に常に陣取って錯乱させる。

 相手は狙う相手を迷っているようで、困った様子だ。


 それでもこのままじゃ僕のMPが尽きる方が早いだろう……。


 何か、弱点は?

 じっくりと観察をする。


「弱点、何かありますか!?」

「えっ!?はぁっ──ええと、首かな?」


 首……確かに何か隙間がある。

 柊ももうそろそろ体力が厳しそうだ、一か八か!


 クナイを出し、狙いを定める。命中率が上がるように三本ほどだす。


 そして、首の関節目掛けて投げる!


「────ガガガガガッ!」

「おっけ!ビンゴだよ!」


 クナイが関節に挟まり、ゴーレムは首が動かせなくなる。


「いっくよーっ!」


 それにより出来た首の隙間を狙い、柊が刀を突き刺した。

 深く、それは首を貫通した。


 これなら勝てる!


「よし、てこの原理でごり押してください!」

「ん!?……あぁ理解、やってみる!」


 深く突き刺さった刀を放置したまま、柊はジャンプした。

 着地点は刀の上。


 刀に柊の重みが掛かる。そして……バキン!と音を立てゴーレムの首が飛んだ。


「やった!」

「ナイス柊!」

「でもまだ終わってない、やるよ!」


 ゴーレムは、頭が無くなってもなお動いている。

 

 柊は、落ちた刀を拾い上げ、グッと握りしめる。

 そして刀に雷属性(サンダー)を付与して、ゴーレムの頭上に勢いよく飛びかかった。


 そして、文字通りがら空きになったゴーレムの胴、コアのある場所に首から刀を突き刺した。


「ガガガッ……ガッ……」


 コアを潰されたことにより、ゴーレムを操作する魔法が溶け、ゴーレムは土となり地面に一体化した。

 無事勝利、なかなかの連携ではないだろうか。


 柊の方に近づいて、軽くハイタッチをする。


「よくやりました、最初の頃とは大違いですね」

「おにぃも、武器のコントロールが上手くなってたよ!」

「マグルさんのお陰ですね、さぁ、ダンジョンはまだあります。進みましょう」


 最後の雷属性(サンダー)は必要だったのかと思ったが、あえて触れないことにした。



**********



 それから一時間後、ダンジョンはまだ続いていて、その癖トラップや魔物、アーリエもいない。

 むしろ歩いて消耗させるのが目的か、それなら成功と言えるだろう。ジメジメした土の中で景色が変わることが無くただただ進み続けるだけの”作業”だ。

 

 当然、柊も僕も、どんどんやる気が下がるし心が暗くなっていく。

 先ほどのゴーレム戦で消耗したこともありもう十数分程度で僕の魔力も尽き、灯り(炎魔法)も消えてしまう。

 柊の雷属性(サンダー)は、そもそも本人のMPが少ないこともあり持って五分、十分程度だろう。


 なので、そろそろ最深部に辿り着けなければ、灯りのない真っ暗闇になってしまう。


「あ、光だよ!」

「本当ですね、ここが最深部ならいいんですが……」


 光の漏れる方へと向かうと、そこは部屋だった。

 大広間よりは小さく、宝物庫程度の大きさ。


 でも、中を覗いても宝があるわけでもない。

 そのまま入る。


「うーん、でも行き止まりですよね、ここ」

「だねー。何も無いよ」

「まぁ既に誰かが持ち去った可能性もありますよね、とりあえず部屋を一通り調べて、何もなかったら帰りましょう」

「うん、そうしよー」


 その後数分、調べる。

 結局、何もなかったのだが。


 さらに奥に続く道、隠し扉、スイッチなどの可能性も考え隅々まで調べたが、何も無かった。

 これはハズレだったか。


 柊と一緒に大きなため息をつくと、僕たちは帰ろうと部屋を出る───出れない。

 障壁魔法だ。


「なんで!?」

「閉じ込められた……この部屋自体トラップだったのかもしれません」

「ど、どうする!?」

「どうしましょう」


 冷静、というか適当に受け答えするがかなりヤバイ状況だ。

 閉じ込められてって、土を掘りすすめるにしても入り口以外に、壁や床、天井にも障壁魔法が張ってある。

 これじゃ物理突破もできない。


「ええと、攻撃すればいいかな!」

「ダメです、この障壁魔法、カウンター系みたいです、ほら」


 クナイで切ってみたが、跳ね返され、結果腕に切り傷ができた。痛くはないが血が流れている。


「ええ!危なー、刀でやったら大惨事だよ!」


 すると、突然僕たちの足元に魔法陣が出現する。

 うっ、この気持ち悪い感覚はまさか──。


「転移魔法だよ!」

「わかってま──おろろろろろ」

「おにぃ!?」

「だ、だいじょぶ、まだ、喉から、出かかってるだけ」

「それって大丈夫じゃないってことだよね!?」

「あっ、意識が──」

「あああああああ!」


 全く、これだから転移魔法は嫌いなんだ、作った人ほんと出てきて……。



**********



「うっ、あっ……もうダメ、お墓は綺麗な景色の場所に」

「生き返って!もう大丈夫だから」


 転移が完了したのか、吐き気が徐々に治る。

 ここはどこだろう、外みたい……だけど。


「無事か、秋。そろそろ慣れてほしいものだが」

「あれ?マグルさん……」

「監視していた結果、まずい事態になったと思ってな。瞬間移動(テレポーテーション)よりも強い強制転移魔法を使わせて貰った。お陰で久々にMPがごっそり消えたが」


 どうやら、転移魔法はトラップではなく助けてくれたマグルさんのものだったらしい。

 事前に言ってくれればもう少し耐えれたのにと、心の中で意味のない愚痴を零す。


「いやー、焦ったよねー」

「本当、宝もなかったし、ハズレだったみたいですね」

「……違うな」

「え?」

「これはきっと仕組まれていたことなのだろう。行くぞ、ゴブリンの族長に話をつけに行く」

「え!?」


 まさか最初から罠だったって言うのだろうか?

 それは、聞いてみないとわからないか……。

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