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ここで、私自身の変化にも気がついた。
私はこの街そのものであり、それを支える大地だ。
以前は、私の感覚は街全体に散っていた。
どこで何が起きているかを、私全体で感じ取っていた。
しかし、今は違う。
私の感覚は、この社に集中している。
私自身が社を中心として存在しているような感覚だ。
社から遠くなるにつれて感覚がボヤけていくのがわかる。
はて、いつからだろう。
不思議と不快ではない。
社が、ほぼ街の中心に位置していることもあってか違和感は少ない。
この変化は、子がもたらしたものだ。
私はこれからも変わっていくのだろうか。
さぁ、この子に着る物を用意しなければ。
私はこの日の社の中の栄養を吸収した。
この中に、子に合う服があるやもしれぬ。
私は、私の中を巡る物に意識を向ける。
栄養として送られてくる中で衣服は少ない。
布は貴重だからだ。
袖口が破けたシャツが1枚あったが、子には大き過ぎるようだ。
所々虫食った大判の布もあった。
服とは呼べないが、今回のところはこれにしよう。
私は、その大判の布を地上に吐き出した。