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私は賑やかなのが好きだ。
朝、日が昇ると鶏が声を上げる。
その声に人は目覚め、どんどん音の輪が広がっていく。
私は、その様が好きだ。
けたたましく金物を打ち鳴らす音。
何かを切る音。焼く音。
こどもの泣き声。
誰かの怒鳴り声。
朝を告げるラッパの音。
私の中に人が増えるたびに音も増えていく。
こうして私も朝を実感するのだ。
私は眠らない。
眠る必要がないからだ。
人々は常に在り続け、私の上に安らかな寝息を落とすのだ。
もし、私が寝返りをうったらどうなるだろうか。
きっと、人々は慌てふためき、この土地から離れてしまうだろう。
たまにむず痒くなり、身体を揺することもあった。
そのたびに人々の生活は大きく変わってしまうのだ。
過去にそうしたことも幾度かあった。
だから、私自身はなるべく動かないように静かに静かに過ごすのだ。