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私は街だ。
ただそこに在り、人々の生活の様をただ眺めている。
初めは1組の夫婦が私の上に住居を構えた。
畑を耕し、ヤギを飼い、5人のこどもを産み育てた。
そのこども達もやがて大人になり、それぞれの住居を持ち住まうようになった。
畑も広がり、牛やヒツジも飼うようになった。
私も、少しずつ成長していった。
私として認識できる感覚を、範囲を、どんどん広げていった。
気付けば、私は村になっていた。
私の上には13もの家が建っている。
中には商いを行なっているものもいる。
外からも人が訪れるようになった。
私も、この地が発展していくのを嬉しく思い、できるだけ肥えた土を産み、澄んだ水を湧かせた。
緑も良く生い茂り、畑の作物も立派な実をつけた。
私はそれを誇らしく思っていた。
豊かな土地に人は集まり、さらに発展していった。
交易が盛んになり、人々をまとめる役目を負うものが何人も変わっていった。
ある者は村に川の水を引く方法を考えた。
ある者は村の内外の道を整備した。
ある者は村の農作物を周りの村に売り出した。
ある者は村をまとめ、人を呼ぶ祭を企画した。
ある者は村に住む者への制度を編み出した。
そうして、いつしか私は街になった。