6話 スコスコスコスコ
気づいたら休日が終わっていた。軽く後悔?
※予約投稿試してます。失敗してたらごめんなさい。
草原の奥にある森の茂みより、ハルトとアズライールを見詰める者達がいた。
彼等の体軀は皆子供の背丈程、手足は短く、顔は下膨れのように腫れぼったい。彼等は荒々しく息を吐きながら2人の様子を伺っていた。
ある者は口より涎を垂らしながらにたりと嗤い、ある者は自分の下腹部をまさぐり興奮している。
そんな彼等が飛び出さないように抑えているのは、奥に控える通常個体のボスの存在だ。彼はこの群れの中で、誰より強く、残忍で、しかし狡猾だった。
本来なら、ハルトとアズライールを囲い込むまで待っていたかったのが、このボス個体の本音だ。しかし、彼等の食欲と性欲の高まりは、もはや自分を含め抑えることも難しく、アズライールの泣き声が耳まで届くと、遂にそれは爆発した。
「ぐぉ~~~!」
彼等はゴブリンと呼ばれる種族。この世界でもっとも人を殺し、人から奪う者達だ。
「なんだ?」
ハルトは、咆哮が聞こえた方に顔を向けると、森からゴブリンがわらわらと飛び出してくるのを見やった。
「くそ! 20以上は居やがる! おい、魔王!」
「ふぇ?」
アズライールが、何とも気のつける声をあげる。
「泣いてる場合じゃねーぞ。あれ、お前の手下共だろ。何とかしろよ!」
アズライールは涙で濡れる目を擦ると、ゴブゴブと合唱しているゴブリンを見詰める。
「ふん! ゴブリンなぞ、強者に従うことしかない、生まれついての奴隷よ!」
そう言うと、アズライールは胸を張り、意気揚々と前に出る。
「ゴブリン共! 余に従え!」
そう言うと、アズライールは杖を高々と振り上げた。雲の隙間より差し込む光はアズライールを明るく照らす。太陽の光を反射し、キラキラと輝く赤い髪をもつ少女は美しく、そして威厳に満ちていた。
その姿を見たゴブリン達は皆一様に足を止める。
「流石は魔王だ。」
見れば、ゴブリン達は膝まつき、ギラギラとした目でアズライールを目つめていた。
ハルトは、その圧倒的なカリスマ性を素直に称賛した。
―― スコスコスコスコスコスコスコ
微かに聞こえてきた、この音の正体を確認するまでは。
「当たり前よ。力は失っても余は魔王!」
「いや、魔王。」
「ん?」
「したした。」
アズライールはハルトに誘導され、視線をハルトが指差す先に向ける。
「……ひっ。」
そこには、ゴブリン共が自分を見詰め、はぁはぁと息を吐きながら、手で自分のなにをスコスコと擦っている姿があった。
そして、アズライールはあまりの光景に絶句し、そして…。
「い、いやぁ~~!」
「「ごぶーーーーー!」」
耐えきれず、絶叫した。
ゴブリン達も絶叫し、アズライールへと殺到していく。
「流石は魔王。ゴブリン共はやる気でギンギンだ。」
「まずは一匹。」
ゴブリン達がアズライールに夢中になっている間に、こっそり接近していたハルトは、一体のゴブリンの隙だらけの首に刃を突き立てた。
しかし。
「なん…だと。」
見れば、突き立てた刃はゴブリンの首を浅く刺さっているだけ、力を込めるも、ゴブリンの筋肉に阻まれる。
そうしていると、ゴブリンはゆっくりと顔をハルトに向け、目があった。にたり。ゴブリンが口角を上げるのを確認した時、ハルトの顔面をもの凄い衝撃が襲い、吹き飛ばされる。
ゴブリンに殴られたのだ。
「何をやっている! ゴブリン相手に情けない!」
グルグルと廻る視界と定まらない頭に、アズライールの声が聞こえてくる。
「そのゴブリン相手に情けなくも悲鳴をあげだのは、どこのどいつだよ。」
「ふん、あれは気合を入れていただけよ! …おぞましいゴブリン共め。」
「刮目せよ。魔法とは魔力だけが全てではない。その本質は創意工夫と取捨選択。闇魔法 悪夢―」
そういうと、アズライールは杖を振り、自分にいち早く接近する数体のゴブリン相手に魔法を使った。
しかし、魔王は慢心し忘れていた。闇魔法 悪夢は使用する魔力も少なく、敵を労せず、無力化するには確かに使い勝手の良い魔法だ。だが、その効力は自分より力の弱い者に対してしか発揮されない。つまり―。
アズライールは、ゴブリン達の接近を許し、むんずと自慢の赤い髪を捕まれ、地面に引き倒される。
「きゃ!」
アズライールの女性らしい叫び声を聞いたそのゴブリンは更に興奮に、げひゃげひゃと涎を振り撒き嗤い出す。
「魔王!」
見れば、アズライールの顔は恐怖に染まっていた。流石に見てられないとハルトはアズライールの元へ駆け出し、剣闘気の力を足に集中させ、アズライールに跨がっていたゴブリンの頭を蹴飛ばし、アズライールより引き剥がす。
「さっさと起きろ!」
「分かっておるわ!」
初めて感じた恐怖を押さえ付け、アズライールは起き上がる。
「くそ! これで打ち止めかよ!」
苛立ちの声を発したハルトを見やれば、その体を覆っていたオーラは霧散していた。
「ぐぎゃ~~!」
ハルトの渾身の一撃を受けたゴブリンであったが、ハルトにとっては悔しい事に、全く効いている気配はない。その顔はお楽しみの邪魔をしたハルトを憎々しげに睨みつけていた。
ここまで、読んでくださってありがとうございます。今後とも、宜しくお願い致します。
【土下座】
作者は、皆様からの反応を楽しみに小説を書いています。なので、プライドなんてゴミ箱にポイして皆様にお願い申し上げる。
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