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It's a Another World 【旧題:まさか魔王と異世界転移】  作者: 東雲なおき
第一章 勇者と魔王と伝説ジュエル
4/18

4話 そして草花は悲しく揺れる

連結してるシステムでバグがあって二次感染。

何とか帰ってこれた。

今年は巻き込まれ事故が多いなぁ。

 鬱蒼と繁る森の中を、懸命に走るハルトとアズライールの姿があった。アズライールの少し前を走るハルトの額には(たま)のような汗が滲み、アズライールは荒い息を吐きながらも、懸命にハルトの後ろを走る。


「はぁはぁ……ちょっと勇者!待ちなさい!!」


 アズライールは、先刻からハルトに呼び掛けているが、一向にハルトが応じる事はなかった。


「いやいやいや!むしろ何で追いかけてきてんの?!本当迷惑だから止めてくれませんか?!」


「こんな、いたいけな少女が必死で頼んでるのよ!ここは、甲斐性(かいしょう)を見せる場面でしょう!!」


「俺とお前は男と女である前に、人間と魔族!そして勇者と魔王!決してその道が交わることは……………ない!!」


 このままでは、いずれ追い付かれる。その時に魔王が近くに居れば自分も巻き込まれる事は必須。それだけは避けなきゃならん。


 ハルトは気合を入れ、アズライールを引き離すために全速力で走り出す。


「この!!待てって………言ってんでしょうが~~!!」


 そういうと、アズライールは杖を振りハルトの足下に魔法で氷を張った。


「ぬぁ!!」


 見事に足を取られたハルトはバランスを崩し、地面にゴロゴロと転がる。


 ハルトは急ぎ起き上がり、走り出そうとするも、後方より飛び付いてきたアズライールがそれを許さない。


 アズライールはハルトの背中から腹に腕を回し、ハルトの背中を自身の火照った体に力いっぱい引き寄せた。そして、熱い吐息をハルトの耳にかける。


「はぁ、はぁ……絶対に離さないわ―――」


 端から見れば、男女の逢瀬のような熱く甘い少女の声。しかし、ハルトにはそれが地獄への誘いのように聞こえた。


 ――――― 数刻前


 ハルトとアズライールが見事スライムに敗北を決した後、ハルトは自分が置かれている状況を正確に把握する為に、目の前の自称魔王の少女に話し掛けることにした。


 というのも、このスライム。ハルトを倒した後は、何が楽しいのか、ハルトの頭の上でぷるぷる言いながらぽよぽよと跳ねているだけで、害は無いと判断したからだ。


「おい、そこの自称魔王。」


「なんだ、自称勇者。」


 自称じゃないと言い返したい所であったが、話を進める為にハルトはこらえ、気になっていることを聞くことにした。


「ここはアルカディアか?」


「それは余が知りたいことでもあるが、だが、恐らく違う。」


「何故分かる?」


「…………草と花だ。恨めしいが、魔大陸にはこのように綺麗な草も花も決して咲く事はない。」


 そう言うと、アズライールは(いとお)しげに花に手をやると、優しく撫でる。


「余からも一つ聞きたい事がある。」


「………なんだよ。」


 ハルトはアズライールの様子を見ると、口の中に苦虫が這いずり回る感覚がして、少し遅れて言葉を返した。


「貴様本当に()()か?」


 アズライールは感情の籠っていない目でハルトに尋ねた。


「さっきまで、俺を自称と呼んでたヤツが今更なんだよ。」


「その喋り方、白亜の髪。そして何より、その目だ。余が闘った勇者よりも幼く、そして遥かにお前は弱いが、冷静に見れば成る程確かに似ておる。」


 目が覚めたら知らない場所で知らない人間が居て、更にスライムに負けた。故に、アズライールの思考は冷静さに欠けていた。


 しかし、一度落ち着いてみると、不可思議な事にさえ目を瞑れば、確かに目の前の少年は勇者と似ていた。


 だからこそ、アズライールは尋ねなくてはならなかった。


「だからこそ、問おう。貴様は()()()()()か?」


 そういうとアズライールは片手に携えた杖の、その先端をハルトに突きつけた。


 そして、ハルトに明確な殺気をぶつける。


 ハルトもその本気の殺気をうけ、そこに既視感を感じ、そして確信した。


「あの時、俺の近くにいた魔族は1人だけ。魔王本人だ。背丈も声も違ぇから全く結びつかなかったが……。この殺気だけは骨身に染みてる。俺からも聞かれてくれよ?」


「……なんだ?」


「お前が魔王アズライールか?」


 そう言うとハルトは頭でぽよぽよと跳ねていたスライムを地面に降ろすとすくっと立ち上がり、腰に提げていた小刀をアズライールに向けた。


「ぷる?」


 可憐な草花で彩られた、騒がしくも長閑な草原がアズライールの殺気とハルトの剣気で悲しく揺れる。


「答えが欲しいか、勇者ハルト。」


 アズライールはハルトから目を離さずに尋ねた。


「要らねーよ。お前もそうだろう?魔王アズライール。」


 そして、ハルトもまた、アズライールより真っ直ぐに向けられる視線を真っ向から受け止め答える。


 向かい合う人間の少年と魔族の少女。2人を心配げに見ているスライム。


 その先にある森の茂みに隠れて、卑しく赤く光る目玉が3人の様子をじっと窺っていた。


本当はもちっと長く書きたかったんですけど、眠さの限界が来たので投稿します。

バグさえなければ、、、。


それと、評価を付けていただけた方、とても励みになりました。


何としてでも、投稿しようって気持ちになったのは読んでくれる人、そして応援してくれる人達が居るからなんですね。


という訳で、今日も読んで下さったこと、深くお礼申し上げます。


ありがとうございました。

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