12.5話 書けなかった話【リビングの真相】
「ところで、俺も一つ良いか?」
「何かしら?」
実はリビングに降りてから、一つ気になっていることがあったので、次いでとばかりにハルトも質問してみることにした。
「これ、空き巣にでもやられたのか?」
そういうと、ハルトは周囲を見渡した。
リビングで辛うじて無事なのは、今3人が座っているテーブル位なもの。カーテンは中程から留め具が外れ、床に垂れ下がっているし、飾り物や、お茶請けの茶菓子なんかも、床に散乱していた。
「流石に、これは酷いわね。犯人は検討がついてるの? どちらにせよ、さっさと片付けた方が良いわよ。」
うんうんと、アズライールも同意を見せる。
「今は、パーティーメンバーがダメになったものを買いに行ってるわ。私とレンは念のため留守番と掃除。あなた達もいたしね。」
2階は何とか片付いたけど、1階はまだなのよ。とアズマリアは溜め息をつきながら答える。
「それと、犯人については、というか人じゃないのだけれど。それについては、私からあなたを達に聞くつもりだったのよ。」
カチャカチャと台所から、レンが此方に向かっている音が聞こえる。
今はゴミとなった物が散乱している床を慎重に歩きながら、此方に向かっているレンを視界に入れたアズマリアは話を切り替える事にした。
「レン、あなからこの子達が此処に居る理由を説明してあげてくれる? リーダーなんだし。」
「あぁ。うん。分かったよ、アズマリア。」
レンはアズマリアに優しく微笑みながら答えると、用意してきた飲み物をそれぞれの前に配り、席につく。
「それは、僕から説明するよ。」
レンがハルトとアズライールに説明を始めたその頃、ところは変わり、リテラルの商店街。
そこの居酒屋にビール片手にスライムと飲み比べをするドワーフの姿があった。
「くそぉ、このスライム中々やるのぅ! これ以上は俺も飲めねぇぞ!」
「ぷっぷるぅ」
そう言うと、ダルトンは空になったジョッキをどんと置き、腹を擦りながら未だぐびぐびと酒を飲むスライムを睨み付ける。
「だが、次は負けん! ドワーフのダルトン。スライムごときに負けたままでは名が廃る!」
「そのスライムに負けて、家のリビングはめちゃくちゃにされたんだけどねー。」
けらけら笑いながら獣人のルルカは1人と1匹の勝負を眺めていた。
「ぷひゅー」
スライムも酒を飲み干し、ぷるぷる近付いてダルトンの腹に乗っかり体をぐてんと預けている。
「本当めちゃくちゃ強いし、人懐っこいし、不思議なスライムだね。」
ツンツンと体を指でつつかれながら、今日もスライムは楽しげに揺れていた。
「ぷっぷるぅ。」
今回も読んでくれてありがとうございます。
今後ともご贔屓に。
【作者土下座】
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