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【八十九階層】探索者ランク試験




 結局、転職はしたけど予定通りに、ランク試験を受けに行くことにした。



 今は交代で、武藤さんのところで魔石の換金をして、まとまったお金は装備の修理と容量の大きなマジックバッグに換えていた。



 既にパーティーで計算すると数億円稼いでいるので、今更ランク試験の更新料20万円など微々たるものだった。



「弥さん、次からはみんなE級魔石の単価は3000円に下がったので、気にしておいてくださいね」



 恐ろしいまでの読心術だ。


 今の俺たちは自宅ダンジョンの九階層ワージャッカルがメインの狩り場としている。



 駅前ダンジョンもそうなのだが、ランク10のモンスターは倒すのが面倒で、肉体的にも精神的にも消耗させられる。


 もちろん本気で戦えば命の危険は皆無なのだが、乱獲するには不向きな相手なのだ。


 だから、潤沢な資金とアイテムが揃ったら、ゆっくり十一階層に潜ろうと話は決まっていた。




 例の駅前ダンジョンがある駅の改札口でみんなと待ち合わせ、急行で20分で行ける試験会場のある駅にたどり着いた。


 今回、光太郎の希望で遅めにしたのだけど午前中は何をしてたのだろう?


「光太郎さん、たまにひかるさんの実家で素振りしているようです」


 また、心が読まれた。

 顔に書いてるのかな?





 会場は新しい施設と思われ、免許更新センターと似たような印象を受けた。

 ただ、テレビで見たよりも人数が多い気がする。


 用意するのは探索者カードと免許証または住民カードの2点だけだ。


 それが済めば、スキル申告カードに該当スキルにチェックを入れる。


 項目はこうなっていた。


 ◻ 武技系統スキル □つ

 ◻ 身体強化スキル □つ

 ◻ 防御系統スキル □つ

 ◻ 回復系統スキル   

 ◻ 魔法攻撃スキル □つ


 回復スキルだけ個数の記入欄がなかった。



 索敵や鑑定スキルはランク判定に関係ないってことだな。


 俺は隠す必要もないし正直に書いてしまおう。

 俺の強さの秘密はフローとフェイなのだからな。





 □■□■□■□■□■




 今日も簡単な仕事が始まる。


 ランク判定にやってくる探索者を順番に測定して、指定の端末に入力するだけの簡単なお仕事。


 ただ、ナンパする探索者が毎日ちょっとだけいるのが難点だけど、それでも居酒屋の接客と比べれば天国よね?

 あとは数値をやたら気にする探索者は多いわね。


 マニュアルに書いてある通りに、数値に対して文句を言わないってサインした方々には教えている。


 私だって単位が解らないから、詳しく聞かれても困るのよね。



 他はの試験会場は知らないけど、ここではパンチ力測定をして、測定機がリセットされるまでの待ち時間を利用して、速度測定を実施する。


 入力は隣の人とダブルチェックで入力する。


 私達では不正は見抜けないけど、スキル判定後にもう一度再測定することって何度かあるらしいの。



 この人は、パンチ力20−5に反応速度30−4。


 沢山の探索者を見ていて気付いたことがある。


 探索者の半数以上が2:3の数値割合で収まるの。


 さらに、ランク無しの判定を受ける可哀想な探索者のほとんどが、この割合に当てはまる。

 ただ、後ろの数字の意味が分からないし教えてもくれない。

 分かるのは、後ろの数字は今まで一桁しか表示されていない。





 前半の数値に対して、私はこっそり無能比率と名付けました。

 スキルも2つしかないから、おそらくランク無しになるでしょう。


 判定方法は知らされてないけど、これだけ探索者を見ていれば、大体判ってしまう。


 次の人は……パンチ力85−2そして反応速度102−3。

 この人は私の考えた無能比率じゃない。

 DランクかCランクね。


 次の人は……パンチ力36−7、反応速度54−2か……無能比率だけど、能力値が高いしスキルも1つもっている。

 Dランクになれるかもしれないわね。




「あ、あの、もし良かったら、お仕事終わったらお食事しませんかっ?」


 また、ナンパだわ……

 探索者のナンパは下品な誘いはしないことが多いけど、流石に毎日はね。


 でも、誘い方は嫌いじゃないから、ちょっとだけ試してみよう。


「そうね、仕事中のお誘いはお断りしてるんだけど、シルバーの探索者カードを見せてくれたら受けてもいいわよ」


 これで諦めるかと思ったけど、物凄く気合を入れちゃったみたい。




 速度結果は……パンチ力43−7で反応速度63−8

 オマケに

スキルが魔法攻撃と武技アリ。

 Dランクは確実そうだけど、Dランクの探索者カードはブロンズよ。

 残念ね。


 でも、ふざけた罰が当たってしまった。

 下心丸出しの探索者が沢山並んでしまったから。


 中には、ランク無し確定のスコアを叩き出した人までやってきた。


 あーあ、あんなこと言うんじゃなかったわ。



 でも、このあと本日…いや、今週ナンバーワンのイケメンがニコニコしながらやってきた。


 男は見た目だけじゃないと解ってるのに、食事くらいなら良いかも、と思わせるほどでした。



「弥、突発イベント発生中だぜ、ここにしよう」


 イケメンはフツメンを連れていた。


「はぁ、別にいいけど飯代は光太が全部出せよ」


「光太さん、サイテーです」

「ひかるさんがいるのに、ほんと呆れます」


 えっ、女連れ!? いったいどういう事?



「ではいつも通り俺から始めるぜ! どりゃあ!!」


 ズンッ!



 ……あっ、パンチ力171−2、100点台後半は本日最高かも。


「あっそうだ、おねーさん数値って教えて貰うこと出来ます?」


「えっ、あっ、はい。ひゃ171−2です」


 私はマニュアルにあった確認を怠ってしまった。


 隣にいる仕事仲間も指摘してくれなかった。


 反応速度を計測して貰う間に、入力した数値とスキルを2人で確認する。


 えっ魔法が2種類に、回復持ちで武技まであるの!?


 嘘でしょ!?


「終わったぁ、おねーさん結果教えて」


 なんと反応速度も171−3もあった。

 これってBランクに成れちゃうかも。


「これも171−3です。す、凄いですね」


「ふっふっふっ、それほどでもあるよ。次翠ちゃんね〜」


 この女性も数値が高く、パンチ力、反応速度ともに155−6と155−5という数値を叩き出した。


「分かっていても、光太郎さんに負けるのは悔しいです。でも最後の数値は何でしょうか?」


 この4人は、全員スコアの通知を希望していて、イケメン男性より少しだけスコアが低かった。


 この人、多分Cランクまでいきそう。



「では我らがひかるちゃんの登場でぇす。ぱんぱかぱーん!!」


 やたらテンションの高いイケメンはひかると言う女性でさらにテンションが上がってる。


 もしかして4人組のリーダー格?



 パンチ力測定機の準備をしながら、名前を見る。


 千歳ひかるか……スキル多っ!? 魔法攻撃スキル1つに、身体強化2つで武技系統もあるの!?


「ゴクリ……では、準備が出来ましたので、色の違う壁に向けて、思い切り叩いて下さい」


 千歳さんはコクリと頷いてから右拳を振り抜く。


 ズンッ!!




 私が見てきた中で一番の感触を覚えた。

 200くらいでたわよね?


 少し間をおいて数値が表示された。

 えっ、この数値を言うの? ここで!?


 気がつくと、みんなが私を見つめている。


「に、237−4です。 引き続き反応速度試験をお願いします」


 ごく一部の探索者しか聞いてないはずなのに、どよめきが聞こえる。


 そして先に測ったイケメンよりも速い反応。


「に、237−3です……」


 なに!? 一流の探索者は反応速度どパンチ力が同数ってルールがあるの!?


 もしかして一流探索者の数値は1:1って法則があったりして、絶対にあるわよね?


「次は弥かぁ」

【一ノ関光太郎さん、試験室Gにお入りください】

「ええっ!? これからいいとこなのに、ひかるちゃんに負けた弥が見れないっ!」


「はいはい、行った行った。他に迷惑かけるなよ光太」



 4人組の最後のひとりが、パンチ力測定の準備に入った。


 今までの会話から察するには、イケメン以上、千歳さん以外ってことなのかしら。



「六角橋さんお願いします」


「はい……ふっ!」


 ズンッ!!


 こ、この人も凄くないですか?


「パ、パンチ力測定……232−4」


 な、なんなのこの人たち。




「お、おれ、隣に行くわ。ここで測るのイヤだ」


「オレはもう帰ろっかなぁ……」


 私も帰りたい、食事の話って無効よね?

 探索者全員に有効だなんて言ってないし。




 言い訳を考えていると、反応速度の測定が終わり、数値が表示された。

「あ、あははは……272−7です」 


 この人達きらぁい。


 この人もスキルが沢山あるから、Bランク確定よね?


 はぁ気が重い……こうなったら。

「あの人たち、奢ってくれるみたいだから、一緒に行きましょ」


「ふえっ!?」


 私は隣で、一緒に計測してる娘を道連れにした。



 □■□■□■□■□■





 スキルチェックまでの全行程を終わらせたけど、トラブル発生で時間がかかるそうだ。


 翠ちゃんのスキルが判定するのに、必要な人を呼んでいるらしい。



 翠ちゃんに聞いてみたら、例の少ないパッシブスキルの可能性があって、レベルの測定が必要になったんだと。

 流石のお役所も、ジョブとレベルくらいしか分からないらしい。




 待っている間にも、交付の準備は進めているようなので、帰り時間は夕方の5時までには確実に終われるって話だった。



「でもさ光太、なんであんなことしたんだ?」

 俺はナンパまがいを実行した光太郎に質問した。


「なんだそのことか。俺の予想通りなら、これからスカウトがやってくる筈だから、代わりの誰かに壁になって貰おうとしたらさ、ちょうど募集してた(たて)を見つけてな。なんか洞察力もありそうだったから、翠ちゃんやひかるちゃんのメル友に使えるかもなって、秒で考えた」



 ああ、光太郎も頭の回転が超人だったわ。



 探索カードがやっと交付される。



「一関光太郎さん、Cランクです。おめでとうございます」


「よっしゃぁ!!」



 光太郎は銅色の新しい探索者カードを受け取った。



「七瀬翠さん、Cランクです。おめでとうございます」


「ありがとうございます」


 翠も無事Cランクとなった。



「千歳ひかるさん、Bランクです。おめでとうございます」


「ありがとうございます」


 ひかるは銀色に輝く探索者カードを貰う。

 ひかるはこれで、単独で第二ダンジョンも入れる。


 自宅ダンジョンは、第一ダンジョンとなっているから、安心してみんなにダンジョンを開放できる。


「六角橋弥さん、Bランクです。おめでとうございます」


「ありがとうございます」


 俺もBランク冒険者になった。





 光太郎の予想通り、どこで嗅ぎつけてきたのか、スカウトらしきスーツを着た人が数人待ち構えていた。



「君たち、これから時間あるかな?」


「えっと、すいません。俺たちこれか食事を兼ねた打ち合わせがあるんです。あっ、こっちこっち!」



 驚きの顔の女性がふたりこっちを見ている。



「なんだ、もうお手つきだったか」

「役所絡みかよ、空振りだった」


 どうやら、役所と繋がってる探索者と勘違いしたのか、スカウトはあっさりいなくなっていった。


「なっ弥、大正解だろ?」


 みんな優秀で困るな。


 天才光太郎、準天才で読心術の持ち主翠ちゃん。

 戦いの申し子ひかるに、戦闘力ダントツトップのフローフェイ。


 普通なの俺だけじゃん。



 だけど俺には、自宅ダンジョンがある。

 物凄く便利なダンジョンがある。


 そう、俺は自宅ダンジョンと仲間を使って、ガンガン稼いで大金持ちになるんだ。


 それにもっと強くなれと俺の本能が訴えている気がする。


 さあ、転職もしたし、これからめっちゃ稼いで、さらなる上質の肉を探し出そう。



 俺の探索者物語はチュートリアルが終わったところ。

 これからが本番の冒険だ!!





 ステータス



 ネーム……六角橋 弥

 レベル……10

 ジョブ……上級戦士

 ヒットポイント……1264

 ストレングス……232

 デクスタリティ……272

 マジックポイント……304

 スキル……回復魔法4、火魔法4、速度上昇4、索敵3、剣技0、攻撃力上昇0

 パッシブスキル……早熟、アイテム鑑定、消費MP半減、転職

 コレクション……孤児補正、双子補正、四兄弟補正、第一迷宮制覇補正




 ネーム……フロー

 レベル……41

 ジョブ……ネコ

 ヒットポイント……886

 ストレングス……118

 デクスタリティ……352

 マジックポイント……232

 スキル……魔法防御4

 パッシブスキル……悪食、成長補正2倍、ドロップ確率2倍

 コレクション……孤児補正、五つ子補正、五兄弟補正、ネコ補正、第一迷宮制覇補正







 ネーム……フェイ

 レベル……41

 ジョブ……ネコ

 ヒットポイント……886

 ストレングス……118

 デクスタリティ……352

 マジックポイント……236

 スキル……物理防御4

 パッシブスキル……悪食、成長補正2倍、モンスター遭遇率2倍

 コレクション……孤児補正、五つ子補正、五兄弟補正、ネコ補正、第一迷宮制覇補正








感想見るようになりました。

誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >普通なの俺だけじゃん。 寝言は寝て言え!?
[一言] ランクは全員順当に獲得した感じですねぇ。 知り合いの探索者達のランクはどうなったでしょう? 『盾』扱いされた女性職員の方々、お気の毒様でした~
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