【八十五階層】ダンジョン再攻略③
ギリギリ活きてます。ビチビチ
十九階層のヒュージトレント、体長約6メートルで、初期は防御枝が4本に攻擊枝が1本、さらに頂点付近に回復枝が1本あるモンスターだ。
2体出て来たから、前回の復習も兼ねてフロー、フェイが1体、俺が1体受け持ち、光太郎たちは見学してもらうこととなった。
バシン!!
やはり攻擊枝1本だけなら全く問題ない。
いや前回よりも対処しやすい。
反撃したあと、今度は盾で受けてみる。
ガンッ!!
うん、以前感じていた重さほどではない。
これなら、戦えるかも知れない。
バシン!
「痛ってえ!」
考えが甘かった、攻擊枝が3本までは順調だったのに4本になった途端、受け止め切れなくなった。
弱いはずのヒュージトレントの攻擊にダメージを受ける。
頭にきた、こうなったら被弾覚悟でやってやろうじゃないか。
攻撃を貰いながら気づいたことがある。
痛みはしっかりあるのだが、受けるダメージが以前とは軽減した気がする。
最初は受け身や防御が上手くなったと思っていたけど、もしかして、HPがかなり上がってることもダメージ軽減の要因じゃないかと感じた。
今はHPがやばいと思うまで戦うことだ。
そして、ヒュージトレントを倒した。
フローとフェイはまだ戦っている。
なら、みんなのところに戻ろう。
「ヒュージトレントの攻略法を見つけたぜ、相手の攻撃が激しくなったら、歯を食いしばって攻撃しまくればいいんだ」
「…………」
「兄さん……」
「……アホだ」
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光太郎たちに酷い扱いを受けたが、俺の考えは間違ってなかった。
この戦い方をすれば、回復スキルを使えば『治癒(微)』と『治癒(小)』を使えばだいたい全回復する。
以前の検証結果から、治癒(小)と火弾LV1と同じMP消費なので、ガリガリ肉弾戦したほうが燃費がいい。
こうして調子に乗って歩いていたら、1体だけのトレントを見つけた。
「おい弥、ひかるちゃんと挟み打ちで戦ってみて」
光太郎の言われるままにしたら、無傷でヒュージトレントを圧倒できた。
だってこっちに襲ってくる枝は、最大で2本までだったからだ。
確かにこっちの方が楽ですね。
今度は2体のトレントと遭遇した。
「ネコちゃん、奥のトレントをお願い」
「にゃっ」
「ニャッ」
翠ちゃんの言葉を受けて、凄まじい速度を出し特攻するフローとフェイ。
こういったお願いは、誰が言っても簡単に受けてくれる。
「ここは私とひかるさん、弥さんでいきましょう。光太郎さんお願いします」
翠ちゃんの言葉に若干の引っ掛かりを感じたが、光太郎はここでは待機要員だ。
戦闘力の爆上がりした光太郎だけど、流石にヒュージトレント相手にはまだまだ力不足だった。
早い段階で1つの枝から葉が落ちきると、翠ちゃんが指示を出す。
「3人で同時に攻擊しましょう。私に合わせて下さい!」
翠ちゃんの攻擊なら俺もひかるも合わせられる。
言うがままに同時攻撃をする。
攻擊が単調だったせいか同時に防衛枝に阻まれた。
「光破LV1!」
光太郎がタイミングをわずかに遅らせて、魔法攻撃を使った。
「なっっ!?」
光太郎が放った光破は、ヒュージトレントの回復枝に向かっていった。
防御枝は俺たちの攻撃に反応していたので、そのまま回復枝に命中した。
ドシャァァァァ……
一気にトレントの葉が落ちて消えていく。
残ったのはたった枝が一本で、その残りも5分の1程度しか葉が残っていなかった。
「弥さんっ、今です!」
掛け声のお陰で、気を取り直してトレントをまたもや無傷で倒せてしまった。
「やったな弥、次はダメージをもう少し調整して、魔法でとどめを刺すことも出来そうだな。こっちの方が燃費がいいし、戦闘時間もぐっと短縮だな」
そう、あの小枝の面倒な回復を封じるどころか、かなりの弱点だったようで、LV1の魔法攻撃でも、相当なダメージを与えることができた。
結局この戦法は、光太郎と翠ちゃんに負担をかける。
ヒュージトレントの攻撃はスキルを使わないで戦うと、かなり厳しいらしい。
前回の俺が、諦めて逃げるようなモンスターだからな。
結局、ある程度MPが残っているうちに下の階層まで突き進んだ。
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モンスター肉と焼き野菜を食べながら、今回の振り返りと明日の行動方針を話し合う。
「ダンジョンってさ、基本ノースキルで戦って、最終部屋でスキルを使いまくれば安全に攻略できるよな?」
「その基本が難しいんです光太郎さん。ねこちゃんずがいなければ、この下の階層すらままなりません」
「でもさ、あと1ヵ月もすれば戦えそうじゃね?」
「光太さん、わたしたちは成長の鈍化が始まっています。簡単にはいかないかと、でもどうして光太さんだけ成長が早いんでしょうか?」
光太郎は髪をかきあげ、ポーズをとる。
「ふっ、これが俺様のオリジナルスキル『セカンドウインド』さ。2度の成長期を経てこのパーティの主役になる!!」
調子に乗ってるが、まったく憎めない奴だ。
しかも落とし穴のフラグもしっかり立ててる。
「とりあえず、あのトレントは狩りには向いてないよな? せっかくのドロップアイテムも他に比べて嵩張るから、大量に持ち運べないしね」
そう明日は、地下二十階層のスケルトンナイトと戦おうと思う。
狩りには向いていないだろうが、前回と差を比べてみたい。
「光太郎さんのスキル使用回数も増えたし、ダンジョンのクリア補正の確認もしたいですよね」
流石は翠ちゃん、あまり俺の心を読まないでくれるかな?
前回の戦いでは、フロー、フェイなら無傷で倒せるけど、俺は無理だった。
高速のスキルを使ってやっと安定して倒せる。
ひかるちゃんもスキルを使って互角だったから、光太郎と翠ちゃんは完全に外野で待機だった。
みんなもダンジョンに慣れてきたことだし、ダメージ覚悟の戦いも再度経験して貰いたい。
翌朝、お決まりの微低温階層で探索する。
早くも10分程度で、スケルトンと遭遇する。
「3体だ……」
今回はスケルトンナイトの数で作戦を決める、1体ならひかるちゃん、2体なら追加で光太郎と翠ちゃん。
3体目は俺が担当して、それ以上はフロー、フェイが入る作戦にしていた。
一部の例外はあるけど、人を使えばモンスターの分断は容易い。
「フロー、フェイ。見張りよろしく」
「フニャン」
「にゃ〜ん」
元気がないけど、あとでちゃんと戦わせてやるからな。
そしてかなり苦戦したけど3体のスケルトンナイトを倒した。
「はぁ、ひぃ、こんなのあと3回もやったら死んでしまう」
「常に全力ですからね」
「あの闇撃LV2はやっかい過ぎます」
うん、あと1回だけやったら止めよう。
スキルを使えばなんとか戦えるけど、魔法攻撃だけはどうすることもできなかった。
「よし、3人にはあと1回だけ頑張って貰って、その後は、1体なら俺、2体ならフロー、フェイ。3体なら3人でそれ以上は皆で攻撃魔法を使って数を減らしてから戦おう」
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うん、ここでレベリングするのは無謀だった。
攻撃魔法もLV3を使わないと効果が薄いのが判明した。
みんな直ぐにガス欠になって、マジックポーションも1日の限界まで使用した。
「もう、止めよう。明日は完全な状態でボス部屋に入って帰ろう」
みんな疲れ切ってるせいか、頷くだけで声が出ていなかった。
ステータス
ネーム……一関 光太郎
レベル……26
ジョブ……勇者(仮)
ヒットポイント……1070
ストレングス……119
デクスタリティ……119
マジックポイント……290
スキル……限界突破3、光魔法3、再生2、剣技2、火魔法0
パッシブスキル……EXP2倍
コレクション……第一ダンジョン攻略
前話の光太郎のステータスに誤りがあったので、後日こっそり修整します。




