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【九階層】自衛隊の探索式

 日本は、比較的『ダンジョン』と上手く共存している数少ない国家だった。


 始めは、中国とインドに『ダンジョン』は現れた。

 数ヵ月もしないうちに、未知の資源が無尽蔵にあると判断した国家や大企業が、軍隊や私兵を投入した。


 だが『ダンジョン』が出現してから、中国とインドは、たったの3年と半年で滅んでしまった。


 きっかけは、採算の全く取れない強力なモンスターが出現するダンジョンを、放置したために起きた『スタンピード』だ。


 スタンピード発生時は、一般人に大きな被害が出たが、軍隊が何とか制圧出来る程度だった。


 しかし、度重なり発生するスタンピードに、国家はだんだんと疲弊していった。


 中国とインドに『ダンジョン』が出現して約3年後、アメリカ、インドネシア、ブラジルの3国にも出現する。


 この、3つの国にも一定の月日が経過すると『スタンピード』の脅威が襲ってきた。


 アメリカは、中国とインドが広域に重爆撃を仕掛けて、壊滅しかかっていたのを学習して、実験的に砂漠地帯に出現したダンジョンを貫通力のあるミサイルで攻撃を仕掛けてみた。

 結果、スタンピードとは関係なく大量のモンスターと戦うはめになった。



 ただし、アメリカは想定以上の被害を出したが、ただでは転ばなかった。


 ダンジョンの仕組みと、探索者とスキルの存在を知ることが出来た。


 さらに魔石の利用法を、世界各国と共同開発し、経済の発展に繋げようとした。

 結果、日本とアメリカの合同チームが魔石の電力化に成功したうえ、電力以外の使用法もいくつか発明していた。



 そして、最初にダンジョンが出現してから6年後、パキスタン、ナイジェリア、バングラデシュ 、ロシア、日本、メキシコ、フィリピンに次々とダンジョンは出現していった。


 日本を含むいくつかの国は、予備知識のお陰で、スタンピードを最小限に抑えていた。




 そして、現在の日本…………



 各ダンジョンの入口で、自衛隊の『探索式』が行われていた。


 ダンジョンの出現当初、日本の自衛隊もアメリカ軍ほどの被害はなかったが、それでも多数の死者を出していた。


 だが、それは数年前までの話だ。


 日本は、かなり早くダンジョンの仕組みを解明して、被害を少なくしていた。


 先ず職業なのだが、3年以上勤めている自衛官が探索者になると、職業が『軽戦士』となり『一般人』より、レベルアップ時のステータスの上昇率が上がる。


 さらに、探索者同士なら、とどめを刺していない仲間でも経験値が入る事にも気づいた。


 ただし、多すぎるとその仕組みは無効になるので、探索式に参加する自衛官は、熟練探索者1人と、ダンジョン未経験者4人の5人パーティで挑む事になっている。


 熟練の探索者……引率する自衛官以外の装備は、防弾チョッキと透明の防弾小型シールド、刃渡り50㎝程度の大型ナイフ。

 サブウエポンとして、刃渡り20㎝ 程度の投擲にも使えるナイフを2本と、ハンドガンを1丁持たされている。

 経費の関係もあって、モンスターを倒し『軽戦士』のジョブを得ると、拳銃は非常時以外、使用禁止となる。



 そして半年間、(ジャイアント)モール、Gバット、Gスネークを想定した訓練を積み重ねていた。


 去年から導入されたこの制度のお陰で、昨年の探索式の死者は数百人中、僅か1名だった。





 ここのダンジョンには、20組の自衛官が集まっている。


「お前らにもう一度言っておく、訓練に訓練を重ねたお前らは、5人1組で挑めば、間違いなく探索者となるだろう。ただし、自衛隊として探索者となれば、手にしたアイテムは全て国の物になる。 それが不服なら今すぐ除隊するがいい。 今なら2年間の監視付きで辞められるぞ?」


 その言葉を聞いても、動き出す自衛官はいない。


 探索者となった自衛官は、退役時に大きな制限を受ける。


 それは、5年間の監視が付き、収支の監視と通話記録、ついでにダンジョンで得た収入に限り、税率が高く設定されていた。


 その代わりに自衛官が探索者になった場合、ほとんどの者が強く成長出来るのである。



 ◇

 ◆

 ◇



 夕方、20組の自衛官が1人の脱落者もなく、ダンジョンから帰ってきた。


 その帰ってきた自衛官を、個別にチェックする2人の自衛官がいた。


 その2名は『看破』のスキルを所持する自衛官で、そのスキルを使用して、探索者になったか判別している。


「看破…………看破…………看破…………看破…………看破…………看破…………看破…………看破……辻堂さん、MP切れました、打ち止めです」


「ん? そうか9人か、まだまだ未熟だな。今度『ドス』のダンジョンに潜ったらどうだ?」


「いえ、自分には荷が重いです。それより……」


「ああ、そうだな……看破、看破、看破、看破、看破……」


「さすが、辻堂さん」


 次々とチェックしていく、辻堂という男に感心していたら、最後の1組で動きが止まった。


「あっ隊長、遅かったですね、何かありました?」


「おう、辻堂か。1人、活きの良いやつがいたから、2階まで降りた」


 辻堂は4人の、新人探索者を見た。

 他の隊員達と違い、体力を使いきった感じだ。


 普通なら帰り道の事も考えて、体力は残して帰るのが常識だ。


 その中でも、いつ倒れてもおかしくない人が2人いた。


「あれ? 隊長、有望株は1人じゃ……」


「ああ、もう1人は大ヘビを倒したとたんに強くなりやがった。活きは今一つだが、ついでに鍛えてやった」


「へぇ、同じチームに2人も隊長に好かれる奴がいるなんて、珍しい事もあるなぁ」


「ところで辻堂、明後日は暇か?」


「暇な訳ないですよ。 これから10日も休みなしで、こいつと『職業』のチェックですよ。どうしたんですか? ダンジョンのお誘いなら、上官とケンカしてでも……」


「ああ、ダンジョンはダンジョンだが『ウノ』らしい新穴の見学に行くんだ」


「なんだ『ウノ』ですか、それじゃ行きません。隊長こそ、なんでそんな最弱のダンジョンに?」


 現在の日本には、強さの異なるダンジョンが3種類あって、ダンジョンの弱い順に『ウノ』『ドス』『トレス』と呼んでいた。


 しかしアメリカ、インドネシア、ブラジルでは、さらに強いモンスターがいるダンジョンが出現している。


「ああ、暇だからってのもあるんだが、今回は家の中がダンジョンの入り口なんだ。興味あるだろ?」


 辻堂はあきれていた。

「えっと……隊長らしいですね」


「まあ、そういう訳だから、上の許可が出れば一緒に潜ろうな」


「はい、頼みますよ」

(でも、隊長とチームを組む事は、もうないだろうな)


 辻堂は、スキル『看破』のせいで、隊長と呼んでいた男と、チームを離れた事を悔しく思っていた。



 しかし、ある人物がきっかけで、辻堂は隊長とチームを再び組む事になるが、それは暫く先の話である。














 ステータス


 ネーム……辻堂

 レベル……92

 ジョブ……軽戦士

 ヒットポイント……2890

 ストレングス……525

 デクスタリティ……627

 マジックポイント……682

 スキル……速力上昇5、索敵5、攻撃力上昇5、ステータス看破5

 パッシブスキル……消費MP半減、リキャストタイム半減

 コレクション……双子補正、ウノ攻略補正、ドス攻略補整、トレス攻略補整






辻堂さんのステータスは、自衛隊のトップクラスは、こんな感じですとの参考資料だと思ってください。

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