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【八十一階層】クリア報酬

 いつの間にか、入口に戻れる階段前にいた。


 いつも通りのパターンに『ウノ』のダンジョンを攻略した実感が湧かない。


「弥、早く上がって恒例の儀式をやろうぜ」


 後ろには翠ちゃんとひかるちゃん、足元にはフロー、フェイがいる。



 なんとなく心がざわつくけど、俺もレベル測定もとい握力計で測りたいのかもしれない。



 前回の測定値は550kgだったっけか。



 これで、あの手紙にあったダンジョンの攻略要請の意味が分かるのかな?



 駅前ダンジョンだと、光太郎が騒ぎすぎて迷惑になるから、カラオケ店に入ることにした。




 ■□■□■□■□■□■□





 握力計の前で、光太郎がマイクを持って語りだす。



「いいか翠ちゃん。弥は勿論だが、ひかるちゃんも化物の領域に足を踏み入れてるはずだ。2人がどんな数値を叩き出しても、心が折れないように覚悟しよう!」


 コクコクと無言で頷く翠ちゃん。


 ひかるちゃんは光太郎に何か言いたそうで、口をパクパクさせているが、声は出ていない。




「ハァァァァ!! ……さ、305キロだぁぁ!

 うおぉぉぉっ、60キロも上がってる! 俺の時代キター!!。みんなっ、あのダンジョンのクリア報酬かもだぜっ!」



 光太郎がめっちゃ喜んでる。

 落とし穴の予感が止まらない。



 翠ちゃんの測定結果は。

「435kgです。びっくりしました」


 驚いた表情のまま拳は硬く握られている。

 相当嬉しいのが判る。



「シクシク、次はひかるちゃんね。俺の時代は終わった……」


 落とし穴の予感的中、しかし光太郎の賢さとスキルの有用性はずっと健在だぞ。



「555kgですね、ついにわたるさんと同じ領域になりました」




 それを聞いて、光太郎は泣いた。


「わかってた、わかってけど俺の予想より数ヶ月速い成長速度ってなんですか? もうひかるちゃんに養ってもらうかな?」




 次は俺の番だな。

 測定したら590との数値が表示された。


「上がった……しばらく成長しなかったのに……」



「弥はどのくらい上がったんだ?」


 みんなが俺の握力計を覗き込む。


「40キロ上がって590キロになったぞ。マジでクリア報酬なのかもしれないな」



「バラバラなクリア報酬に不満ありありだぜ。ん、ひかるちゃんどこ見てるの?」



 光太郎の言葉で、ひかるちゃんが握力計を見ているんじゃなく、俺の腕を見ている事に気づいた。


 そして、その腕には爪を食い込ませて出来た傷跡があった。



 えっ!? 心当たりがまるでないんだけど?



 しかも爪跡の形に覚えがあった。

 昔の記憶なんてほとんど残ってないのに、この形だけはわかっていた。


「前に進め?」「前に進め?」


 俺とひかるちゃんの言葉が重なった。


「ひかるちゃん、知ってたのか?」


「えっと詳しい記憶じゃないんですが、小学校のときに流行ったサインだったかと」



「俺はそんな流行り知らんぞ」

「私もです」



 翠ちゃんと光太郎は知らない事らしい。



「小学生時代は全く覚えがないと思ってたんだけど、暗号だけは覚えてたんだな。もしかして同じ小学校か近い所に住んでいたのかもな」


「そう……ですね……」


 ちょっと歯切れの悪いひかるちゃん。


 ただ、爪跡だと思われる傷は治りかけで、どんなに思い出そうしても心当たりがなかった。


 大抵の傷は、回復スキルで完治してしまうから最後のスケルトンナイトとの戦いでしかありえないんだけど、治りかけってのが理解できない。


 でも、もし自分で付けた傷ならば『前に進め』は何を意味するんだろうか?





 ……

 …………

 ………………



 考えても解らないのしょうがない、みんなで力を合わせてガッツリ稼ごうってことにしよう。


 これって前向きな考えだし、暗号通りに行動してるから問題なし!!


 よし、次だ。




「光太、翠ちゃんとひかるちゃんの握力計の数値は無視して、俺と光太だけなら仮説が立てられるぞ」



「なにっ!? 思考能力で弥に負けただと!」



 後で殴ってやろうか……


「ざっくりで言うなら、俺の上昇値がウノの攻略ボーナスで、光太の上昇値が攻略ボーナスとレベルアップの上昇値がプラスされてるなら、辻褄が合う」


 光太郎が真面目に考え込んでる。


「う〜ん、ありえるな。すると気になるのはもう一度『ウノ』をクリアしてどうなるか調べたいな。たぶん変化はないと思うけど」



 そうだな、俺も光太郎と同じ意見だけど、実際体験したほうがいいだろう。


「わたしも賛成です。ちょうど5泊くらいする予定で、わたしの親と合って貰う約束をしていたので」



 そうだった、今回は本格的に駅前ダンジョンを攻略するための下見だったんだ。



「じゃあ、ここに入ってから時間が経ってないけど、遅い時間帯だから解散するか」




 そう言って立ち上がろうとしたとき、翠ちゃんが手を上げる。



「私のスキルがおかしな事になっていました」



 みんな翠ちゃんの方を見る。



「新しいスキル、速度上昇スキルが使えるようになりました。代わりに今まで使っていたスキルの一段階目が使えなくなっているみたいです」



 翠ちゃんに起こったよく分からない現象。


 俺たち探索者は、新しいスキルを覚えると自然と頭に入ってくる感覚だから、使えなくなるって感覚が理解できない。



 今の話を聞いて光太郎が今までに見ない真剣な顔をしている。


 いつもヘラヘラしてるから、かなり新鮮だぞ、これは。



「仮説を立てられたぜ弥。翠ちゃんの攻撃力上昇スキルの『1』って、握力計計算だと『1.13〜1.15』倍くらい上昇するんだ、最近は1.13倍だけどな。これが今かかっていると想定すると、素の握力は385キロって事になる。なら今回の探索での上昇分は75キロになるからレベルアップとクリアボーナスの仮定がピッタリはまる」


「光太、15キロの誤差は?」



「これは職業の違いで間違いない。翠ちゃんは『農耕士』らしいし、一緒に探索していて、力はジリジリと離されていったからな。弥は家のことで数日忙しいんだろ? その間に検証してみようか? 翠ちゃんもそれでいい?」



「はい、明後日からなら大丈夫です」


「明明後日ならわたしも行けるから、参加してもいいです?」


「ひかるちゃんなら大歓迎♡」



 あぁそうですか、良かったですね光太郎、両手に花で……



「にゃぁん」

「ウニャァ」


 ゲージの中で大人しくしていたフロー、フェイに慰められた気がするな、俺も両手に花だったわ。



 ■□■□■□■□■□■□


 駅前ダンジョン付近のカラオケボックスを出てから、解散して、帰路に着く。




 俺はここ一週間ほど、新居の手続き等で忙しかったから、夕方にフローとフェイで少しだけダンジョンに潜った生活をしていた。



















 ステータス 



 ネーム……千歳 ひかる

 レベル……27

 ジョブ……剣士

 ヒットポイント……1134

 ストレングス……189

 デクスタリティ……189

 マジックポイント……162

 スキル……速度上昇3、剣技3、攻撃力上昇2、風魔法2、闇魔法0

 パッシブスキル……エンペラーキラー、メタルキラー

 コレクション……孤児補正、四兄弟補正、第一迷宮制覇補正






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