【八十階層】ひかる、翠、光太郎、フロー、フェイ
毎回遅くなりましてすみません。
『ようこそ【悠久の迷宮】1界層を攻略した者よ。ここは初めて界層を攻略した者に開かれる【選択の間】だよ。君はここの扉を開けて【書庫の間】に入るんだ』
千歳ひかるは、選択の間から書庫の間へと入った。
ひかるは自分の異常な成長の秘密を聞いて、世間では初期ブーストと言われる補正値が複数あることを知らされた。
「わたしには兄弟がいることがわかりましたが、所在は分かりますか?」
ただその情報は、本の色が黄色となっているので重要事項と判断できる。
『ひとりは、アメリカ合衆国ノースカロライナ州フォートブラッグ近郊にある第三ダンジョンの地下10階にいるよ。もうひとりは日本〇〇県〇〇市〇〇駅付近にある第一ダンジョンの地下20階下層にいるね』
この情報で、ひかるは弥のことを兄だと確信する。
もともと、兄ではないかと疑っていて、養父に調べて貰っていた最中だったのだ。
ただ、ほぼ確信していたのに兄であるか聞いてしまった。
その情報も重要事項だったため、質問が終わってしまった。
『これで質問の答えは終わりになるよ。覚醒の間と同様にここでの記憶は全て失われる。せっかくの情報だけど君は覚えていられないよ。まあ、知識欲を満たした満足感だけは残っているかもね。 では第二界層を制覇したときに、また会おう』
ひかるは、不思議と満足感を覚えたが、ダンジョンを攻略した達成感だと思ってしまった。
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『ようこそ【悠久の迷宮】1界層を攻略した者よ。ここは初めて界層を攻略した者に開かれる【選択の間】だよ。君はここの扉を開けて【再強化の間】に入るんだ』
七瀬翠は再強化の間に入った。
「さ、い、きょ、う、か……はっ、私強くなれるんですか!?」
翠は今の自分が一番望んでいた事に歓喜が隠せないでいた。
『喜ぶにはまだ早いよ。ここで強くなれると言っても実感できるかどうかは別の話だよ』
「……どういうことですか?」
『ここで得られるスキルは0から3つ、例えばドラゴンキラーなんてスキルを貰っても無用の長物となりかねないよ』
翠は悟った、全てはこれから得られるスキルの回数と種類次第だと。
結果、翠の得られたスキルは2つとなった。
『1つ目は【常態化】のスキルか……残念だったね』
「これはどういったスキルなのでしょうか?」
『これは一部の強化スキルをパッシブ化するスキルなんだ。だから強化スキルを持っていなかったら意味がないし、限界突破などリスクのあるスキルなんて持っていたら大変なことになるよ』
翠は想像した、光太郎の強化とその後にくる弱体化が1日中発動していたらと考えると、光太郎が可哀想になってきた。
せめて光太郎が違うスキルを貰っていれば、と祈るばかりだった。
『2つ目のスキルは【速度上昇】のスキルだよ。良かったね。先のスキルを無駄にしなかったよ』
こうして、翠は強くなって現実世界に戻っていった。
『やはり、スキルの鍵は【欲】だね。それが強さに直結するわけでなないけど、決め手は【欲】だよ。フフフ……』
案内人は翠が取得した都合の良いスキル構成に、何故か楽しそうに笑っていた。
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『ようこそ【悠久の迷宮】1界層を攻略した者よ。ここは初めて界層を攻略した者に開かれる【選択の間】だよ。君はここの扉を開けて【覚醒の間】に入るんだ』
一関光太郎は、しばらくの間キョトンとしていたが、目を光らせて踊りだした。
「やったぁ!! やっぱり俺はここから伸びていくんだっ! ありがとう美人のおねぇさん」
『……君、僕の姿が判かるの? 』
「いや……見ているのに見えてない感じがするけど、このパターンって確実に美人だと、俺の経験則が訴えてる」
もし、光太郎をよく知る者がこの場にいたら『お前はブス専じゃねぇかっ!』と怒鳴られていたことだろう。
『ははは……ようこそ【覚醒の間】へ。ここでは君の潜在能力、過去100時間までの生き様等、いくつかの要素を鑑みて、新たなる職業が決まる』
「俺はどんな職業になるのかな、回復魔法と攻撃魔法の使える賢者とかになったらどうしよう……」
『……教えることは出来ないんだよ。(それにしても候補が多すぎる、この人間は八種類もの可能性を秘めている) 君には見えないけど、今ルーレットが回ってる。結果だけは見えるから心して見るんだよ』
案内人は驚愕した、ルーレットは【勇者】になり、条件を満たしていないとして、職業の再選択が自動で行われたからだ。
「……ね、ねぇ俺の職業は何になったんですか?」
案内人は、3回目の選択を始めたルーレットに、光太郎でも解かる機能を自分で追加した。
[勇者になりました。 ブーー!! 勇者の条件を満たしていません、再選択を開始します。 勇者になりました。 ブーー!! 勇者の条件を満たしていません、再選択を開始します。 勇者になりました。 ブーー!! 勇者の条件を満たしていません、再選択を開始します。 勇者になりました。 ブーー!! 勇者の条件を満たしていません、再選択を開始します。 勇者になりました。 ブーー!! 勇者の条件を満たしていません、再選択を開始します。 勇者になりました。 ブーー!! 勇者の条件を満たしていません、再選択を開始します。 勇者になりました。 ブーー!! 勇者の条件を満たしていません、再選択をカイシします。 勇者になりました。 ピーー!! 勇者の条件を満たしていません、再選択をkaisiします。 ]
「な、何なんですか? これは……」
『それは、僕が聞きたいよ……』
ただ、この現象は256回で終わった。
[勇者になりました、勇者の条件を満たしていないので、【仮勇者】の職業を作成し、仮勇者になりました]
「…………」
『…………』
光太郎と案内人の言葉が出ないまま、光太郎は仮勇者となり、この【覚醒の間】をあとにした。
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『ようこそ【悠久の迷宮】1界層を攻略した者よ。ここは初めて界層を攻略した者に開かれる【選択の間】だよ。君たちはここの扉を開けて【渇望の間】に入るんだ』
フローとフェイは知らないが、渇望の間に入る探索者の数は少ない。
力や富を欲する者は【再強化の間】
自分の殻を破りたい者は【覚醒の間】
疑問を抱えた者や知識欲がある者は【書庫の間】
それ以外の欲が強く現れた者には【渇望の間】
渇望の間入る資格があっても、殆どが再強化の間へに行ってしまう。
フローとフェイが望んだことは、弥とずっと一緒に、戦って、食べて、遊んで、寝る、だった。
「にゃぁにゃにゃ、にゃんにゃんにゃっ」
(またこの部屋に来たね、でも名前がちょっと違う)
「ニャニャニャ、ニャァニャ? ニャッ!」
(ここは、どんな事がおきるのかな? 教えてっ!)
『元気がいいね。しかも記憶を保持しているのか、やっぱりあっちは人間にしか対応していなかったのか。君たちにあげられるスキルや職業はここにはないんだけど、これを君たちにあげる。もう一度ここにこれた時は、それが贈り物に変わるよ。ざんねんだけどここの記憶は君たちでも持ち帰ることは出来ない。じゃあ、またね……』
フロー、フェイは【パデストの欠片】を受け取ったまま意識を手放した。
ステータス
ネーム……一関 光太郎
レベル……1
ジョブ……勇者(仮)
ヒットポイント……710
ストレングス……83
デクスタリティ……117
マジックポイント……166
スキル……限界突破3、光魔法3、再生2、剣技0、火魔法0
パッシブスキル……EXP2倍
コレクション……第一迷宮制覇補正
ネーム……七瀬 翠
レベル……32
ジョブ……農耕士
ヒットポイント……830
ストレングス……134
デクスタリティ……134
マジックポイント……190
スキル……攻撃力上昇3、速度上昇3
パッシブスキル……EXP1.2倍、M鑑定、常態化LvⅠ
コレクション……第一迷宮制覇補正
そしていつも誤字修正ありがとうございます。