【七十八階層】第一ダンジョン攻略⑨
いつも遅くなってすみません。
スケルトンナイトとの連戦は、ひかるちゃんに大きな変化をもたらした。
しばらく戦っていたら……
『わたし、強くなりました速度上昇スキルと攻撃力上昇スキルがアップして、風刃の攻撃魔法を覚えました』
さらには……
『攻撃スキル、二連撃と風刃がLV2になりました、ここからはわたしも戦えます』
ただ、調子に乗ったひかるちゃんは、あっさりMPが枯渇してしまった。
ひかるちゃんの脅威的な成長に、MPは含まれていなかったようだ。
「…………」
「…………」
光太郎と翠ちゃんを見ていると、仲間の成長を喜んでるようには感じられない。
嫉妬か? 恐怖か? どれも違いそうな気がするけど、翠ちゃんと違って、顔で心とか読めないしな……分からん。
戦力が1名追加されて、戦いの幅が少しだけ広がる。
強くなったと言っても、武器の相性が悪くひかるちゃんではスケルトンナイトを1体相手にするのがやっとだ。
それに、闇撃は避けきれていないので、フローの魔法防御や光太郎の再生で援護しながらの戦いなので、2人のMP切れで、あっさり戦線離脱した。
だけど、もう扉のある部屋まで到着してしまった。
仕舞っていたアナログ時計を出すと、時間は夜の九時を過ぎていた。
「みんな、スケルトンナイトの数次第だけど、厳しい戦いになるかもしれない。光太、お前の最大魔法で数を減らしてくれ」
光太郎は無言で頷く。
俺のLV3の魔法でスケルトンナイトが一撃で消えたから、2体を倒せると期待したい。
マジックポーションも服用できる限界まで飲んだ。
出来れば魔法だけで、4体に減らせれば安定した勝ちが拾える。
索敵を使ったけど、部屋の中に入ってから出現するパターンだったので判別出来ない。
「よし、いくぞ」
「はい」
「はい」
「おぅ」
「にゃ」
「ニャ」
扉を開けて部屋に入ると、モンスターは居ない。
最下層なら下に降りる階段もないのだからどうすればいいのだろうか?
ゆっくりと部屋の中心部まで移動する、すると前方の奥から光の柱が立ち昇り、スケルトンナイトが出現した。
その数9体!!
「ニャニャ!(石城壁)」
「にゃにゃっ(魔障壁)」
「火弾LV3! 光太は待て!!」
先ず動けたのは俺、フロー、フェイだ。
フローとフェイは翠ちゃんに防御スキルを使う。
これは守るためじゃなく盾になれって意味だと思う。
翠ちゃん伝わるかな。
翠ちゃんとひかるちゃんは移動を始める。
2人の動きから逃げる動作じゃないのが解った。
よし、先ずはスケルトンナイト1体集中だ!
俺は目の前のスケルトンナイトと戦いながら位置を少しずつずらす。
「フロー、フェイ、出来るな?」
「にゃん」
「ニャン」
「光太郎さん!」
「おう! 光波LV3!!」
「風刃LV2!」
「こちら3体撃破!」
光太郎たちも頑張っている。
俺は、スケルトンナイトを誘導してフローとフェイに押し付けた。
フロー、フェイならば、3体まとめて相手に出来ると信じて。
残りは5体、早々に4体倒せたのはデカい。
翠ちゃんのバリアがまだ残っている。
「限界突破Ⅱ」
「カカカッ 闇撃LV2」
「カカカッ 闇撃LV2」
スケルトンナイトの闇撃は、ひかるちゃんと翠ちゃんを狙った。
「グッ……」
パリン「きゃっ」
防御態勢を取ったひかるちゃんと、魔法防御のかかった翠ちゃんに攻撃が来た。
なんて都合の良い展開なんだろうか。
翠ちゃんの魔法防御は消えたけど、物理防御の壁はまだ残っている。
ひかるちゃんをサポートするだけなら、少しは持つだろう。
「加勢する!」
「助かります」
「はいっ」
「出来れば次に来る、LV2の魔法攻撃前に援護を頼む」
光太郎も戦いの急所を理解している、それまでは全力で目の前のスケルトンナイトだ!
焦ると想定外のダメージを受ける事がある。
早めに倒すの事は諦めて、着実にスケルトンナイトにダメージを蓄積させる。
「カカカッ 高速剣」
巧い剣技と相まって放たれる『高速剣』は避けにくいが、今までで1番軽いダメージですんだ。
そして……
「カカカッ 闇撃LV1」
「カカカッ 闇撃LV1」
「くっ……」
このあとのスケルトンナイトは大きな隙が出来る。
「火弾LV3!!」
モンスターランク10の強さでも、一撃死する威力の魔法で形勢が変わった。
残るスケルトンナイトは4体、余裕がないので一瞬だけフロー、フェイを見る。
……問題ないかな。
「カカカッ 闇撃LV2」
危なっ!
速度上昇スキルのお陰かギリギリで避ける。
後は『高速剣』にさえ気を付ければ俺の仕事は終わりだ。
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だいぶ時間をかけたけど、スケルトンナイト9体を倒した。
ドロップアイテムのマジックポーションと魔石を回収する。
俺にはまだMPの余裕があったので、光太郎とひかるちゃんを回復させた。
翠ちゃんはフロー、フェイの防御スキルで無傷ですんだ。
結果的にみると翠ちゃん、フローとフェイのパーティの半分が無傷だったから楽勝に感じるかもしれないが、薄氷の勝利だったと思う。
光太郎が光魔法を使えてなければ……
フローとフェイが翠ちゃんに防御スキルを使っていなかったら……
ひかるちゃんが急成長して、スケルトンナイトと戦えるようになっていなかったら……
スケルトンナイトの数が10体以上だったら……
こ、これからはもう少し慎重に戦おうかな。
「弥! 階段が出てきたぞ!? 20階までじゃなかったのかよっ」
「地上に帰る魔法陣があるだけかもしれませんよ?」
「降りてみましょうか?」
ひかるちゃん、フロー、フェイが先頭で階段を降っていく。
俺もあとから付いていく。
階段を降りきると、6階、11階、16階と同じパターンの1階の地上に帰れる魔法陣と休憩部屋があった。
ただ、他の階層と違うのは、休憩部屋が1つしかないことだった。
みんなで休憩部屋に入る。
部屋の奥には1つの宝箱があった。
「宝箱だ、これがダンジョンのクリア報酬なのか?」
光太郎がつぶやく。
「期待していいのかな?」
「期待が膨らみます」
翠ちゃんとひかるちゃんが不吉なフラグを立てる。
罠とかないよな?
ドキドキしながら、箱を開ける。
中には大量のアイテムが入っていた。
そう……数えるとコボルトスパイスが20本あった。
「……」
「……」
「……」
「ショボっ」
ついつい口に出してしまった。
だって仕方ないよな? 自宅ダンジョンにいるコボルトジェネラルがドロップするのは6本だぞ!
平均5回に1回ドロップすると考えて、20体倒して得られるアイテムより価値が低いって事だ。
「わたるさん、わたしたちに手紙を書いた謎の人物は、呪った方がいいのでしょうか?」
呪いたい気持ちは当然あるけど、ひかるちゃんってスーパールーキーと出会ったからなぁ。
流石に疲れたから、はやく帰って家で寝るとするか。
せこい収穫にトボトボ肩を落としながら、魔法陣に入る。
一瞬視界が白くなり、水色に変わる。
えっ水色!?
今までは、白からダンジョンの出口付近になるはずなのに……
『ようこそ【悠久の迷宮】1界層を攻略した者よ』
声のした方には、説明の出来ないヒト型の何かがいた。
ステータス
ネーム……六角橋 弥
レベル……35
ジョブ……軽戦士
ヒットポイント……1054
ストレングス……192
デクスタリティ……227
マジックポイント……244
スキル……回復魔法3、火魔法3、速度上昇3、索敵3
パッシブスキル……早熟、アイテム鑑定、消費MP半減、転職
コレクション……孤児補正、双子補正、四兄弟補正