【七十四階層】第一ダンジョン攻略⑤
十四階層に降りて、光太郎のヘロヘロタイムが終わるまで休憩を取る。
その間に、マジックポーションでMPの回復をする。
この先の探索は、スキルがないとキツくなってくるからな。
もちろんフロー、フェイは除くぞ。
2日目の朝から苦戦しているから、この先が微妙に不安だ。
「よし、俺様回復」
光太郎の軽いノリが、何故か不安を軽減する。
よし!
「なら、行こうか」
「はい」
「はい」
「にゃっ」
「ニャッ」
この階層はきれいな廊下のような造りをしている。
わりと多いパターンの階層だ。
例えばスライムとか。
と、思った先からモンスターが出現した。
そう思った矢先に例の奴が。
ワゴン車並の大きさ持つ巨大スライムの登場だった。
「ガルガンスライム、モンスターランク7。8つの触手攻撃をする。魔法に弱い」
8つ?
確かこいつは、超長距離、長距離が2本、中距離の足元、短距離の薙ぎ払い、至近距離が2本の7つじゃ……
あっ、体全体を使った投網攻撃をカウントしてるのかな?
なら、解説に回ろうかなって思ってたら、もうフローとフェイが突進してるし。
「みんな、よく見てて。こいつは戦い方を知らないと手強い」
頷く3人。
俺は解説を続ける。
「このスライムはかなり遠くからの触手攻撃が1本、今避けたのが遠くの触手攻撃2本だ」
すでに長距離攻撃を反撃しながら掻い潜って、さらに接近する。
「次は足元の攻撃から、さらに近づくと薙ぎ払い、至近距離で2本の触手が襲ってくる。こいつは長距離付近を維持しながら触手に対してカウンター攻撃をじわじわ与えるのが安全だ」
「でも、猫ちゃん至近距離で無双してます」
「ある程度格上なら至近距離が効率が良いんじゃないか?」
「いち、にい、さん………あれ7つ?」
翠ちゃんが気付いた。
「もう少し見ててな」
フロー、フェイの攻撃を受け続けるガルガンスライム。
スライムは飛び上がって大きく拡がる。
「なっ!?」
「あっ」
「あっ」
包み込む様な攻撃をするが、フローとフェイはそれの範囲外に逃げる。
あの距離で同じ真似は今の俺じゃ出来ないな。
せめて、瞬速くらい使わないと。
あの投網攻撃をした後は、しばらく攻撃自由時間なので、ガルガンスライムは消滅して魔石を落とした。
この階層も魔石は無視して、早期攻略を目指す。
「長距離からチマチマ攻撃してればほとんど届かないし、もし届いても失速してるから来ると分っていれば避けられるんだ。あと魔法なら一番弱い魔法で仕留められるからMPが多い人は便利なモンスターだ」
時間はかかるけど、一度3人だけで長距離戦を体験してもらってから、フロー、フェイ、俺で狩りまくった。
「ボス部屋発見……しかし、十三階層より難易度が低い件」
「でも復数出た時は、魔法攻撃なしだと普通詰みませんか?」
「そこが、弥さんと猫ちゃんずですね」
「俺、これからダンジョンではフローさんフェイさんと呼ぼう」
「俺は?」
「お前は弥で充分だ」
「ぷっ」
「ふふっ」
光太郎に和ませて貰ったところで、索敵を使う。
「今回は6体だ」
「初期位置は?」
光太郎の言いたいことが解ってしまった。
「2体重なるのが2つだけ」
「なら、弥にLV2を一発撃ってもらって、俺がLV1を一発使う。フローさんフェイさんに1体づつ任せて、残りは長距離の3本触手を俺、翠ちゃん、ひかるちゃん。中距離に弥でいくのは?」
いいね、さすが光太郎。
「良し、光太の作戦でいこう」
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まあ、戦いがいはあったけど、なんの危険も感じないままボス部屋を攻略してしまった。
十五階層に降り立つ、ここは洞窟をイメージするとわかりやすいが、分かれ道と部屋が多めな造りになっていた。
ここでは十一階層で出会ったゴブリンと違い、こん棒を持っていて厚手の服まで着ている。
「ゴブリンソルジャー、ランク8。連携攻撃が得意で単体だと単調になる。です」
出できたゴブリンソルジャーは2体だから、フロー、フェイに任せる。
それだけこの2人の回避能力を信頼しているのだ。
「ゴブゴブ 硬壁」
「ゴブゴブ 硬壁」
ゴブリンの服に水色の膜が展開された。
これは物理防御スキルだ。
しかも服限定に使った応用技を使用している。
これから暫くはゴブリンの服は無敵の鎧と化した。
ただ……
「にゃにゃにゃにゃ!!」
「ニャニャニャニャッ!」
フローとフェイには関係なかった。
服のない部分だけを正確に攻撃して、ダメージを蓄積させていく。
「ゴブゴブ 高速剣」
「ゴブゴブ 高速剣」
ゴブリンの高速剣はフロー、フェイには『鈍速剣』にしかすぎない。
途中背中合わせにしたり、2体で同時にフローを攻撃しようとするが、全く通用しなかった。
この後も部屋で出現するゴブリンソルジャーは、連携攻撃を引き離すことができたし、逆に1体のゴブリンソルジャーなら、光太郎3人組で戦えるようにもなった。
ここのボス部屋も、スキルを小出しにする程度で攻略できてしまった。
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十六階層に降り立つと、またもや見たことのある洞窟をイメージする階層だった。
これは自宅ダンジョンでトレントの居た階層とそっくりだった。
強歩で進んでいると広間の中に聳え立つ樹を三本見つけた。
枝の本数で判る、翠ちゃんの実家ダンジョンに出でくる『ラージトレント』だ。
「ラ、ラージトレント、ランク8。枝が攻防で別れていて、火魔法が弱点」
翠ちゃんの言葉が一瞬詰まった、たぶん一見モンスターだとは気付かなかったのだろう……俺と同類だ。
俺は不意打ちまで喰らったけどな。
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何度かラージトレントと戦って、今は楽に倒せるようになってきた。
光太郎、翠ちゃん、ひかるちゃんの3人とも力不足だけど、防御だけに集中してくれれば対応出来る。
すると俺の攻撃が楽なものに変わってくる。
フロー、フェイも同様で3体までならラージトレントも雑魚モンスター確定になった。
ボス部屋のラージトレントは俺の火魔法で半壊させた後、安定の無血殲滅に成功した。
「6人パーティのありがたさが実感できた階層ですね」
ひかるちゃんの言うとおりだな。
「この階層でも役に立てるのが嬉しいです」
翠ちゃんは足手まといになるのを嫌うからな。
「なんか、階層下るごとに楽になってる気がするんだが」
戦いにも相性があるみたいだな、光太郎。
「次から十七階層だな、このパターンでいけば次は『モンスターランク9』になる。俺の予想だと自宅ダンジョンの『ワージャッカル』級のモンスターが出てくると思われる」
「ワージャッカルって、どれほど強いのでしょうか?」
ひかるちゃんの質問に答える。
「んー、少し前の話で、狩るなら適正の階層だったな」
「ということは同じモンスターだったら、まだまだ戦えるって事か」
「これからはラージトレントのように、サポートがうまくいくようなモンスターじゃないと思います。わたしたち足手まといになってしまいますね」
まあ、光太郎なら限定的に手伝えるけど、連発出来ないスキルだからな。
2日目も夕方に差し掛かる前に、俺たちは十七階層に降り立った。
ネーム……千歳 ひかる
レベル……14
ジョブ……剣士
ヒットポイント……584
ストレングス……96
デクスタリティ……96
マジックポイント……80
スキル……速度上昇2、剣技1、攻撃力上昇0、風魔法0、闇魔法0
パッシブスキル……エンペラーキラー、メタルキラー
コレクション……孤児補正、四兄弟補正
誤字修正、毎度ありがとうございます。