【七十二階層】第一ダンジョン攻略③
2体のモンスターが視界に入った。
緑色の体躯で多数の脚をチャカチャカと使い、思った以上の速度で突進してきた。
「キャリオンクローラー、ランク4! 口から生命力を奪う触手があり、爪脚は壁も移動可能」
翠ちゃんのモンスター鑑定スキルが、敵の特徴を暴く。
ほほう、それでこの摩擦の高い床や凹凸のある壁になるのか。
ダンジョンの環境は探索者だけでなく、モンスターにも好環境なんだろう。
しかし、突進と言っても自宅ダンジョンに出てくるGラビットやコボルトジェネラル程度しかない。
フローとフェイは奥のモンスターを狩りにいったから、光太郎、翠ちゃん、ひかるちゃんが手前のやつと戦う。
フロー、フェイの方は参考にならないから、こっちを見よう。
キャリオンクローラーはどんな戦いをするのかな?
キャリオンクローラーの体当たりを鮮やかに避けて、側面からめった刺しにする3人。
触手が近い位置にいる光太郎に向かって伸びてきた。
「光太!」
「はいよ、ほいっ……ん? うわっ!?」
光太郎は盾を使って触手を防ごうとしたけど、触手に盾ごと絡まれて、慌てて距離をとった。
「ビックリさせやがって!!」
触手の脅威度は未知数だけど、突進や方向転換、射程距離を考えると、完全な雑魚モンスターだった。
キャリオンクローラーは『E級魔石』を一つドロップして消滅した。
「お疲れさん。どうだった?」
「ああ、雑魚っちゃ雑魚だったけど、触手の力がかなりあったから、捕まったらヤバいかもな」
「復数を相手にすると、怖いモンスターかもしれません」
「あと、触手は長く伸びないのが分かったから、モンスターの後半身から攻撃し続ければ安全かもです」
光太郎、翠ちゃん、ひかるちゃんの意見も聞けたし、大量に出現しない限りは警戒の必要性はないと感じた。
何回かキャリオンクローラーに遭遇したけど、壁歩きの状態は見れなかった。
キャリオンクローラーは糸の塊をドロップしたけど、売る以外に使い道がなさそうだった。
ここの階層は1時間程度で下に降りる階段を見つけたけど、大部屋のモンスターはいなかった。
他の探索者が倒したのだろう。
ここで出現する八階層のモンスターは『Gラビット』だった。
Gラビットは、自宅ダンジョンの四階層で出現するモンスターだったから、問題なく進んでいく。
「なぁ弥」
「何だ? 光太」
光太郎が深妙な顔つきで話しかけてくる。
「やっぱり弥んところの『自宅ダンジョン』はおかしいよな。だって『駅前ダンジョン』は二階ごとにモンスターランクが上がってるのに対して『自宅ダンジョン』は一階毎にモンスターランクが上がってる」
今更なんだけど、たしかに家のダンジョンとは違いが如実だ。
「翠ちゃんとこの『実家ダンジョン』にしたって、情報は少ないけど、モンスターランクは6,6,7,7と上がってるんだぜ?」
翠ちゃんとひかるちゃんも深刻な顔になる。
俺は、随分前に気にしないようにしたんだよな。
翠ちゃんのモンスターのランクが判るスキルで、法則性がありそうだと感じたが、心構えの対策が出来ないからなぁ。
役所に報告の義務があるのはスタンピード兆候が出たときだけだし、あのときは確かに『ウノ』だと言ってたから、『ウノ』でもニ種類以上ある可能性だってあるはずだ。
「光太、俺はそこんところは考えないことにしたんだ。今は気にしないでおこうぜ」
「……今はそうするか」
半分納得した感じの光太郎は、話題を切り替える。
「次の休憩地点でメシにしようぜ。このパーティ誰かが言い出さないと何時までも働いてる気がするんだが?」
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「約半日で、八階層まで攻略したけわけだが、今回2泊の様子見だったよな!?」
「光太、それは甘い考えだぜ。探索で順調なのは12階層までと予想してるから、明日くらいから探索に時間がかかると考えてるんだ」
「わたるさんが自分の実力を把握していない件」
「それね」「それな」
「にゃん」「ニャン」
納得がいかない……
「巨大化物キノコ、ランク5。キノコ弾を4連射する。連射後は動きが止まる」
「ヒュージスライム、ランク5。4本の触手攻撃をする。物理攻撃に強く魔法に弱い」
「ゴブリン、ランク6。連携攻撃が多彩、単体攻撃は単調」
「スケルトン、ランク6。刺突攻撃が効きにくいが光魔法に弱い」
今は十三階層まで到達した。十二階層からは他の探索者を一回も見ることがなかった。
スケルトンのボス部屋では、10体のスケルトンが出てきたので、光太郎と翠ちゃんがスキルを使って対処した。
光太郎、翠ちゃん、ひかるちゃんの3人は十二階あたりが適正階層だと感じた。
明日からは、スキルを使いつ3人で1体を受け持つか、サポート役になることだろう。
十三階層には大部屋の安全地帯はないので、階段付近の空いているスペースでテントを設置して、みんなで食事を取っていた。
「しかし、今日一日でどれだけ稼いだんだ? 金銭感覚が崩壊寸前」
「ふふっ、分かります。でも私たちは上を目指すので、それなりに費用がかかりますよ」
「そうです! みどりさんの言うとおりです。ヒールポーションは必須なのに高価ですし、遠征するならマジックポーション、マジックバック、装備のメンテナンス費用だってかさみます。保存食もモンスター肉が最適ですし、資金はいくらあっても困りません」
確かにひかるちゃんの言うとおりなんだが……
「因みに弥の自宅ダンジョンだと、七階層で特上肉。八階層でマジックポーション。九階層でヒールポーションが出るってさ」
「なんですか、そのチートなダンジョンは……」
言われると、同意しかしないな……自宅ダンジョンスゲー。
「色々あって、ここ最近はそこまで潜ってないけど、このダンジョンを攻略したら。肉・ポーション・マジックポーションの三点セットをかき集める予定だからな」
ここで一泊した俺たちは、さらに降る階段を見つけるため、探索を始めた。
ステータス
ネーム……フロー
レベル……35
ジョブ……ネコ
ヒットポイント……736
ストレングス……91
デクスタリティ……298
マジックポイント……182
スキル……魔法防御3
パッシブスキル……悪食、成長補正2倍、ドロップ確率2倍
コレクション……孤児補正、五つ子補正、五兄弟補正、ネコ補正
ネーム……フェイ
レベル……35
ジョブ……ネコ
ヒットポイント……736
ストレングス……91
デクスタリティ……298
マジックポイント……182
スキル……物理防御3
パッシブスキル……悪食、成長補正2倍、モンスター遭遇率2倍
コレクション……孤児補正、五つ子補正、五兄弟補正、ネコ補正
あっ書き溜めがもうない……