【七十一階層】第一ダンジョン攻略②
【6人1組で第一のダンジョン『UNO』を攻略せよ】
この手紙が何を意味するのか確かめようと思う。
俺は今考えたことを、みんなに話した。
「話はわかった。行動予定は決まっているのか?」
光太郎が聞いてきた。
「ああ、先ずは二泊か三泊して泊まりのダンジョン探索になれる。その進み具合で本攻略の日程を決めようと思ってる」
「それでいいかと思います。でも弥さん、それならここのダンジョンは『ウノ』でないと言うことですか?」
翠ちゃんの質問は理解できる。
「分からない、でも違う可能性はあると思うんだ。なら確実に『ウノ』と分かってる駅前ダンジョンに行った方が確実だろ?」
「わたしからお願いがあります。攻略準備の三泊はともかく、本攻略するにあたっては長く泊まりになるので、その前に皆さんに私のおじいちゃんに会って貰えないでしょうか? 信頼できる人達だって知って貰わないと」
『ゴクリ』
ひかるちゃんの言葉に光太郎の喉が鳴る。
お付き合いの挨拶じゃないからな。
俺の話しが終わった後には、恒例の握力検査が始まる。
「どりゃあぁ!! よし、また上がった。255キロだぜ! まあ、あの日より上がり幅が少ないけどな」
たしかフロー、フェイと4人でダンジョンに入った日だよな。
どこに連れていかれたんだ?
「はい、325kgです。私もレベルが上がりました」
「もう翠ちゃんには勝てる気が全くしないわ。差が開きっぱなし」
「でも、私もそろそろここまでかもです」
光太郎と翠ちゃんがひかるちゃんをじっと見る。
そう、彼女の能力上昇値は驚異の一言だった。
『もう彼女が日本のヒロインでいいんじゃないか』と光太郎が言うほどにね。
「わたし325kgですね。みどりさんに追いつきました」
「あっさり追いつかれました。今までの私の努力は……」
「どうせなら、このまま弥をぶち抜いてしまえ!」
「それはさすがに無理では?」
俺はみんなのレベル上げをサポートしてから、レベルが上がっていない。
フロー、フェイと3人でダンジョンに入った時はたまにレベルが上がることから、もしかしたら、弱いモンスターからは、経験値は入らないのだろうか。
「変わらない……565キロだ」
やはり、成長してない。
「まあ、気を落とすな。弥は恐らくマジックキャスターの職業だから、筋力系はカウンターストップだ」
違います、軽戦士です。
「確かに身体能力は追いつきましたが、ダンジョン経験の差はスキルで現れてますね」
因みに、俺のいない間にスキル使用限界数で簡易的にマジックポイントをみんなで計ったらしい。
ひかるちゃんは3回が限度で、光太郎が6回、翠ちゃんが7回だそうだ。
オマケにフロー、フェイのスキル使用数が9回までと調べてくれた。
光太郎の話を理解して実行するこの2人(匹)、どこまで頭が良いのだろうか。
因みに、俺のスキル使用数はレベル1なら20回以上はイける。
転職イベントで軽戦士って判っていなければ、光太郎じゃないけど魔法系統の職業を疑ったかもしれないな。
「弥さん、本当に落ち込んでるみたいですね」
「やはり、わたし達と低層階にいたのが原因でしょうか」
考え事をしていたら空気が悪くなってきた。
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~駅前ダンジョン入口~
宿泊用の装備は『武藤探索店』で揃えた。
既に普通の生活レベルでは消費しきれない金を稼ぎ出しているから、節約せずにいろいろ買い込んだ。
「しかし、あれから1年も経ってないけど、変わったなぁ」
「一階層から五階層までのダンジョンMAPが五千円で売られてますから」
「これでコピー防止機能がついてるので、利益がでるか心配ですね」
混雑緩和を目的として作られた『ダンジョンMAP』を眺めながら光太郎、翠ちゃん、ひかるちゃんが呟く。
「だけどありがたい。俺たちは二泊でどこまで進めるのか確かめに来てるからな」
ダンジョンMAPにはその階層で出現するモンスターまで記載されている。
「Gモール、Gバット、スライム、化けキノコ、コボルトソルジャーか」
「そこから先は、ラージスライム、キャリオンクローラー、Gラビット、巨大化けキノコ、ヒュージスライムと少しづつ強くなっていきます」
「さらに翠ちゃんは六階層のルートまでなら暗記してるぜ。すごいだろ? おれたちはここで散々レベリングしたからなぁ。知ってるか? ここから下階層の探索者は激減してるって」
光太郎が懐かしそうにしながらも、挑戦的な質問を投げてくる。
ふっいくつか想像できるけど、正解は知らないぞ。
知らないって、雰囲気を出したら翠ちゃんが教えてくれた。
「時間をかけて下階層に行くよりも、第二ダンジョンの『ドス』に行った方が効率が良いんですよ、弥さん」
言われて見ればそうだよな。体感でも自宅ダンジョンの四倍は広いと感じたからな。
「じゃ打ち合わせ通りに行くぞ」
「おー」
「はい」
「はい」
「ニャ」
「にゃ」
五階層に降りるまでは、駅前ダンジョンを知り尽くしている光太郎と翠ちゃんが先導する。
しかも、駆け足でな。
理由は、入口から階段までの動線はほとんど他の探索者に駆逐されているからだ。
時間も短縮したいしもしかして不意にモンスターと遭遇しても低階層なら余裕で対処出来ないことには攻略なんて目指せないからな。
光太郎と翠ちゃんのランニングは、スポーツ選手の全力疾走くらいだと思う。
下に降りれる階段を発見するのに、普通なら1時間から10時間かかると言われてるところを10分弱で見つけてしまった。
「ここが下に降りる階段になります。さすがに最短ルートではGモールと遭遇しなかったですね」
「翠ちゃん、替りにボーゼンと眺めていた探索者なら二桁は見つけたぜ」
光太郎の言う通り、疾走6人組を見かけたらビックリするわな。
「頼りになりすぎますね」
「ああ、さっさと三階に降りる階段まで行くか」
「三階層に降る階段までは少し距離があります」
翠ちゃんは走りながら俺たちに教えてくれた。
以前一緒にダンジョン探索した時は、グルグル廻っていたから俺にはさっぱり分からない。
「ニャ!」
「にゃっ」
フローとフェイが鳴いてから間もなく、Gバットを2体見つけた。
「はっ!」
「とぉ!」
地上から2.3メートル辺りにいたGバットはそのまま2人のジャンプ攻撃により光の粒子となって消えていった。
「打ち合わせ通り魔石は無視な」
「はい!」
「にゃん」
「ニャン」
少し勿体ない気もするが、既にF級魔石は
はした金にしかならない。
急いでいる時は、いずれこの場所に来るだろう
別の探索者にプレゼントだ。
二階層の階段のあるボス部屋まで到達した。
10人単位で戦えそうな、大きな部屋にはモンスターはいなかった。
「さすが、駅前ダンジョンだな。何回もここに来てるけど未だにここでモンスターと出会ったことないんだよなぁ」
「そうですね、先を急ぎましょう」
そうだな、今日一日でどこまで降りれるのかチャレンジしたしいな。
三階層のモンスターはスライムだ。
自宅ダンジョンのラージスライムと違い、鈍く触手も1本しかなく。
物理攻撃に耐性のあるスライムでも一撃で始末できる程の雑魚モンスターだ。
さすがに翠ちゃんと光太郎は、一撃とはいかないので、数が3体以上なら応援を入れて倒した。
それは四階層も同様で、階段のあるボス部屋までそれほど時間がかからなかった。
「ここまでで1時間半ですね」
「ここから下はコボルトソルジャーだ。さすがに駆け足でダンジョン探索はきつかもな」
「よし、ここから先はフロー、フェイを先頭にしよう。翠ちゃんは2人の道案内を頼む。その後ろに、光太郎とひかるちゃんで最後尾が俺な」
「にゃん」
「ニャン」
「わたしのダンジョン常識が通用しないパーティです」
「化け物三人組がいるからなぁ」
五階層のコボルトソルジャー、六階層のラージスライムはフロー、フェイのオモチャにしかならなかった。
「案内できるのはここまでです」
「翠ちゃんありがとう。ここからは歩いて探索しよう」
俺たちは七階層に降り立った。
この階層の壁は岩肌のような壁で、多少の凹凸が確認できる。
これにぶつかると怪我をしそうな感じがする気がする。
しかし触ってみると、硬いゴムのような感触で逆に怪我をしにくいような感じだった。
「弥、地面も若干のクッション性があって走りやすいぞ。近代の競技場みたいだ」
「わたるさん、今までのフロアと違って踏ん張りが効きやすいです。戦う時はその点を考慮した方がいいですね」
みんな床の感触を確かめるため、自由に辺りを動き回っていた。
個人的な感想だと、急に止まろうとすると躓きやすいので、その点だけ注意が必要だと感じた。
「索敵LV1。こっからは一旦俺が先頭になる。分かれ道がない限り軽く走るから」
分岐を右側右側と進んで行き、10分もするとモンスターの反応を確認した。
「この先30m程度、2体!」
名前は事前情報から『キャリオンクローラー』と分かってるけど、初めて戦うモンスターだ。
今いる地点は戦うスペースは充分にあるので、このまま迎え撃とう。
「1体はフロー、フェイ。もう1体は光太たち。3人でやってくれ!」
「ニャン」
「にゃっ」
「はいっ」
「はい!」
「わかった」
俺たちはひさしぶりに初見のモンスターと戦う。
ネーム……六角橋 弥
レベル……34
ジョブ……軽戦士
ヒットポイント……1024
ストレングス……187
デクスタリティ……221
マジックポイント……238
スキル……回復魔法3、火魔法3、速度上昇3、索敵3
パッシブスキル……早熟、アイテム鑑定、消費MP半減、転職
コレクション……孤児補正、双子補正、四兄弟補正
誤字修正ほんとうに感謝しています。