【七十階層】第一ダンジョン攻略①
ひかるちゃんの大きな強化に、翠ちゃんと光太郎もしばらく無言で呆れていたが、仲間としてダンジョンに入るのは歓迎しているようだ。
それから20体弱のGモールを倒して、家に戻った。
「ひかるちゃん、トラウマ克服と探索者覚醒、アーンド俺たちのパーティ加入おめでとう!!」
「はい、よろしくお願いします」
「ひかるさん、これからよろしくお願いしますね……でも急にパーティに入りたいってどんな心境の変化が?」
翠ちゃんは、俺と同じ疑問を持っていたようだ。
「急にって訳じゃないんですが、パーティを組むにあたって理想な人数、競合しないダンジョンの環境、謎の手紙、一番は信頼できると分かったからですね」
「ひかるちゃん、そんなに俺の事を……」
「申し訳ないですが、一関さん個人の事じゃないです」
バッサリと切られた。
「日帰りならともかく、ダンジョンの深い所まで潜るとなると、どうしても泊まることになると思うのですが、そうなると信用できる仲間が一番重要だと思います。このパーティなら翠さんもいますし男女間のトラブルは……ないと思いました」
言葉に間が空いたとき、チラッと光太郎を見たな。
完全には信頼してないみたいだな。
まあ、探索者資格の取得が厳しいとはいえ、それだけで信頼できる訳じゃないのは、俺でも分かる。
現に、光太郎は人として信頼出来るが、男としては信じられない部類にいる。
あと、ゲームやアニメのネタバレを楽しそうにしやがるしな。
私服に着替え終わったら、光太郎がアレをもってきて、例の握力測定が始まった。
まあ俺たちは、前回と同じ数値だったけど、今回から千歳さんもこの行事に加わるのだろうか?
当然光太郎は測定を進めて、千歳さんもあっさりと受け入れる。
「面白そうですね、簡易レベル測定器みたいです。…………はい145kgと出ました。やはり皆さんは凄いですね。特に六角橋さんは……」
「……」
「うっそぉ!? なにそれ探索者初日でなにその数値? おれ、そこまでになるのにどのくらいかかった?」
さすがに呆れるな、って俺も似たようなものだったか。
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新しいメンバーが入ったので、これからの日程を相談した。
明日は千歳さんのレベリング。
明後日は少し深い階層に潜って、3人のレベリング。
そこから、3日間は俺に用事があるので休みにするはずだったのだけど、翠ちゃんと光太郎がダンジョンを使わせて欲しいとの事なので、フロー、フェイと一緒にダンジョンに入る予定となった。
そのうち1日は千歳さんもダンジョンに行けるようなので、みんなで行ってもらうことにした。
その翌日の日曜日は、軽くダンジョン探索して、その後駅前ダンジョンの準備をすることにした。
で、平日の月曜日少しでも空いている平日に、例の手紙にあったダンジョンの攻略を始めよと思う。
まあ、千歳さんは勿論のこと、翠ちゃんと光太郎も深い階層はまだまだ厳しいだろうから、本当の攻略作戦はまだまだ先の事だと思うけど。
あと、週に4日ダンジョンに潜る予定にしたら、千歳さんに異常ですと言われたので、慣れるまでは週に3日とすることにした。
空いてる日は自宅ダンジョンで稼いでおこう。
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パーティ探索初日、レベリングと言っても、万が一を考えるとそんなに深い階層は潜れないから、地下三階でレベリングをすることにした。
「改めて気づいたんですが、モンスターの出現率とアイテムのドロップ率が多くないですか?」
俺の代わりに翠ちゃんと光太郎が答える。
「はい、体感で2倍の出現率とドロップ率です」
「しかも、ここのダンジョンって、競合相手がいないし、雑魚モンスターなら化け物三人組が瞬殺するから、最低でも6倍は探索が捗る」
「これなら早いうちに一人前の探索者に成れそうですね」
そう言えば、スキルが使えると『一人前』って世間の流れだよな。
三階層のラージスライムを乱獲していた。
今のモンスターを倒したら、食事休憩しよう。
「スキルが使えるようになりました。六角橋さん、個人的には薦めたくないですが、この環境を提供するだけで、富裕層の新米探索者相手なら1回10万円くらい取れる価値があります」
そんなにか?
ただ、それを商売にしたら自分のレベルアップは何ヶ月先になることやら。
だから薦めたくないって言ったのか。
「ひかるちゃん、どんなスキルを覚えたの?」
「はい、素早さを上げるスキルみたいです『高速』と言う名称のようです」
俺と同じスキルだ。
「なんか……羨ましいです」
「今日の終わりに、ラージスライムと戦わせてください。一体ならもう戦えると思います」
えっ、成長速度おかしくない?
そして帰る時に、モンスターの大量に出現する大部屋で、最後の一体になったラージスライムと戦わせてみた。
結果は楽勝で、その動きは一ヶ月前の翠ちゃんくらいだった。
自宅ダンジョン2日目。
五階層のコボルトジェネラルを狩り始めて少ししたら。
「新しいスキルが使えるようになりました」
「えっ」「もう!?」「早すぎだろ」
翠ちゃん、俺、光太郎の順に驚く。
ちょっと考えたら、遭遇効率6倍で更に強いモンスターと戦えるなら、駅前ダンジョンの10倍以上のペースで経験値が入りそうだもんな。
で、新たなスキルを聞いてみた。
「はい『高速剣』というスキルです」
高速のスキルに高速剣ってどんだけスピード好きなんだろうか。
部屋に帰る頃には、コボルトジェネラルまで相手に安定して勝てる力を身につけていた。
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3日後。
家の手続きや引越し、旧家の改築など相談をしていたから、光太郎たちとは少ししか顔を合わせていない。
荷物を取りにダンジョンのある旧家に行ったら、話し声が聞こえた。
「へぇ、光太さんって意外に有能なんですね」
「ははは、酷いなぁひかるちゃん」
「光太郎さんの第一印象が、かなり残念でしたから」
この3日間に一体何があったら、あんなに親しげになるのかな?
「お疲れさん、戻ってきたみたいだなっ!? えっ、千歳さんこれは……」
「あっ、六角橋さんこんにちは。これですか? はい私、光太さんのお陰でもうふたつの目的まで達成できました」
「光太郎さんたちプライベートでも友達になったんですよ」
そこには笑顔満面の3人組がいた。
急展開だよね? 何があった!?
理由を聞く前に、ひかるちゃんは癖で掛けているメガネを『じゃ~ん』と言いながら外す。
「ああっ」
ひかるちゃんの眼が……
「はい、私は『赤色』を克服するだけでなく、眼も治したかったんです。強いダンジョンの最深部にはこの眼を治せる万能薬があるという話しがありました。いつかたどり着く事ができるようにと探索者になる前から身体を鍛えていましたが、まさか光太さんの『再生』のスキルで眼が治ってしまうなんて」
と、言いながら光太を見ながらニコッと微笑むひかるちゃん。
光太、好感度爆上がりだな。
これだけの事でとは言わないからな。
「で、もう一つとは?」
ひかるちゃんのもう一つの目的もかなり気になる。
「う~ん、間違いないと確信していますが、証拠がないので内緒です。ねっ」
今度は翠ちゃんを見ながら、ニコッと笑う。
なんなんだ? 意味が分からないぞ。
まあ、分からないことを気にしすぎても無駄だから、みんなでダンジョンに入ってレベリングをした。
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まあ、ひかるちゃんの馴染むこと馴染むこと。
ひかるちゃんの人柄のせいなのか、フロー、フェイ、光太、翠ちゃんまで、信頼を置いてるようすだ。
しかも身体能力は翠ちゃんとほぼ変わらない域まで達している。
俺はまだ先だと思っていたことを実行しようと思う。
ダンジョンから自宅に戻ってきたところて、みんなに話しかけた。
「みんなお疲れ様、早速だが相談を含めた話があるんだ」
俺はあの手紙を思い出す。
「なんだ弥?」
「弥さん?」
「わたるさんどうしました?」
「にゃ?」
「ニャ?」
みんなの視線が俺に集中したところで、深呼吸して話す。
「すこし早い気がするけど、駅前のダンジョン『ウノ』を攻略しよう」
【6人1組で第一のダンジョン『UNO』を攻略せよ】
ネーム……千歳 ひかる
レベル……13
ジョブ……剣士
ヒットポイント……544
ストレングス……90
デクスタリティ……90
マジックポイント……76
スキル……速度上昇1、剣技1、攻撃力上昇0、風魔法0、闇魔法0
パッシブスキル……エンペラーキラー、メタルキラー
コレクション……孤児補正、四兄弟補正
お久しぶりです。
いつも、誤字修正ありがとうございます。
活動報告にあとがきの続きを書きます。