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【六十八階層】謎の手紙

 休憩が終わって会見が再開された。



 記者が質問をするため、手を上げている。



『どうぞ』


『探索者資格条件の緩和とは、どんなものなのか具体的に教えて頂けますか?』


『はい。今までは過去15年間に犯罪歴があると、探索者にはなれない事となっていますが、最終犯罪歴が10年を経過していれば、半日の講義と性格診断テストを行ってもらいまして、それに合格しますと、探索者資格が得られます。さらに年齢制限が16歳以上18未満の方でも、運動能力テストを行ってもらい、一定の基準に達していれば探索者の資格が得られます』




『優遇措置とは具体的にどんなものなのか、詳しく説明をお願いしてもいいでしょうか?』




『はい。新探索者を含め経験一年未満の探索者は、1回に限り国の負担で探索者ガイドを雇う事ができます。さらに武具の無償貸出し。全探索者に対して、ランク5までのモンスターの攻略マニュアルを閲覧することが出来るようになりました。

 』



 す、凄いな。

 なんか俺のあの苦労はどうしてくれるんだと叫びそうになるくらいの優遇措置だった。



『今までの探索者から不満の声とかあがりそうですが、そのことについてコメントをお願いします』



 記者さんナイス!


『E級魔石の買取実績がある探索者限定で、上級探索者ガイドの斡旋や、体験などを語ってもらう催しを予定しています。有料ではありますが、強い探索者においては有意義なイベントになると自信をもって言いましょう』



 あとはいくつか、つまらない質問もあったけど、大きなトラブルもなく会見は終わった。




 今は、光太郎と翠ちゃんとモンスター肉を食べながら、このことについて話し合いをしている。



「やっぱり、魔石を大量に集めたいから、新規探索者を増員して、ダンジョンで探索者が飽和しないように中堅探索者を下層に追いやる作戦だと思うんだ」


「私もそう思うんですが、なにかそれだけじゃないような……」


「弱いダンジョンのスタンピードくらいは、民間でなんとかしろってことだったりしてな」


 俺は思いつきで言ってみた。


「……その考えもあったか」

「弥さん、良い発想だと思います。ですが今までスタンピードを処理していた自衛隊の方々は何をするのか気になりますね」



 俺は気にしないし、やることはほぼ変わらない。

 もう少しだけ光太郎と翠ちゃんを鍛えて、自分の行ける最下層を狩場にするんだ。



 ただ、僕が考えた予定はだいたい狂うことになる。




 ■□■□■□■□




 翠ちゃんと光太郎がマジックバックを買い、防具も新調した。


 まだ倒せはしないが、ホブゴブリンとも戦えるようになったので、八階層のモンスター、スケルトンのいる階層に行くと決めた日、光太郎が郵便屋さんを連れてやってきた。



「弥、サインお願いします」


「お前が言うな」


「配達記録です。判子かサインをお願いします」


「ご苦労さまです」



 もらった封筒は、海外からのものだった。


「光太、わりぃ翠ちゃん来るまでに読んでおくから」


「おう」



 光太郎を部屋で待たせて、封筒を開ける。


 中には1枚の手紙が入っていた。


 中には慣れないと思われた字体でこう書かれていた。


【6人1組で第一のダンジョン『UNO』を攻略せよ】


『UNO』って駅前にあるダンジョンの『ウノ』の事だよな?


 なんで?


 宛先を見てもアメリカのニューヨークしか理解できない。

 名前らしき物も書いてあるが、心当たりはない。


 気味の悪い手紙だ。



 ピンポーン!



 おっ翠ちゃんが来たようだ。


 玄関のドアを開けると、そこには翠ちゃんでだけでなく、もうひとりの女性がいた。



 翠ちゃんより、色の濃いサングラスをして、五センチほど身長が低くいせいか、見てるだけで安定感を覚える佇まいをしている。



「初めまして、私は千歳ひかるといいます。眼に問題がありましてサングラスのままの挨拶で申し訳ありません」



 やたら丁寧に挨拶をしてくれるこの人は何者だろう。


 翠ちゃんも俺と面識がないことを今知ったみたいだし。


「はい、ここにどのような用件でしょうか?」


 まずは話を聞かないとどうにもならないからな。



「すいません、そちらの家主さんでいらっしゃいますか」



「あ、はい……そうです。六角橋弥といいます」


「唐突ですが、六角橋さんはこれに心当たりがございませんか?」


 カバンの中から見せてくれたのは、一通の手紙……そうアレと同じ手紙だった。


【6人1組で第一のダンジョン『UNO』を攻略せよ】と……


 ただ違うのは、その下にうちの住所が記載されていた。



 差出人は俺の手紙と同一人物で間違いないだろうな。


 話を聞くために部屋に案内しようか。


「すいません、どこでもいいので『赤色』の全くない場所があれば、そこでお願いします」


 よく分からないが、何も使ってない部屋に案内した。


「わがまま言ってすいません。そちらの方は口紅などは付けてますか?」


 翠ちゃんを見ながら申し訳なさそうに聞いてくる。


「はい、私は付けてません」



 その後、千歳さんはサングラスを外した。


 サングラスを外した千歳さんの左目は大きく抉れていて眼球すらなかった。


「あっ、ごめん。サングラスをしてもらっも構わないです」

「大丈夫です。左目が無いことに問題ありません。ただ心の問題だと思うのですが、赤色が特別に苦手なものでして」


 俺はついつい左目の傷と心的外傷を結びつけてしまう。


 気まずい空気になりかけていたら、光太郎の俺を探す声がした。


「弥ぅ、翠ちゃん! どこだぁ? ってなんでこんなと、こ、ろ……に…………?」


 光太郎は千歳さんを見て固まっている。


「?」


「理想だ……」


「えっ……」「えっ?」「えっ!?」


 光太郎の言葉に3人でハモる。



「理想の女性が何故ここに? そうか探索者の面接なんだな? 弥、採用だ。コホン、僕は一関光太郎といいます。これからよろしく! 失礼ですがお近付きの印に、軽くハグをしてもいいかな?」


「失礼すぎるわっ!!」

「失礼過ぎますっっ!」


 翠ちゃんとのダブルアタックで、光太郎がふき飛ぶ。


 生き物相手の攻撃行動は制限されるはずなのに、かなりすっ飛んだな。


「あいたたた……ダメージはないけど、めちゃくちゃ痛いんだが」


 光太郎は自分で唇を噛んだのだろうか、一部分に赤みがさしている……ん、赤?


「う、か、かひゅ……」


 そのまま千歳さんは倒れて気を失ってしまった。





 ■□■□■□■□




「ほんと申し訳ない」


 目を覚ました千歳さんに土下座をする光太郎。

 光太郎だけが悪いわけでもないが、責任を感じてるようだ。


 しかし、血が滲んでる程度で気を失うとなると、かなり不便な生活をしていると思えてしまう。


「お詫びにデートでも何でもさせてくれ」


「お詫びになってません!」


 ポカ!


 軽く拳骨する翠ちゃん。



 このまま、千歳さんとうちに来た経緯を話してもらった。



「なるほど、トラウマ克服のため探索者になろうと考えていたタイミングで、謎の手紙が届いたと。知り合いの可能性もあると考えて、好奇心で弥んちを探していたら、翠ちゃんと出会った訳だな」


「はい、その通りです。この手紙の差出人に心当たりがないどころか……」



「俺も謎の手紙を持っている」


 テーブルの上には二通の手紙が置いてあり、腕を組んでみんなで考え込む。


「現状、手紙の送り主は、弥と千歳さんの住所を把握していること、弥が探索者だと知っていることか?」


「これだけだと、弥さんが探索者だって知ってる証拠にはならないかもしれません。『UNO』を攻略しろとしか書かれていないので」


「あのぅ」


 千歳さんが何かを話したそうにしているので聞いてみる。



「この手紙の差出人はダンジョンについて、ある程度詳しい人だと思います。日本では内々でしか知らされていない『ダンジョン6人パーティ制』を知っているようです」


「6人パーティ制?」



「はい、ダンジョンで経験値取得するのに最も効率がいいのは『5人』とされていましたが実は『6人』なんです」


「なんで千歳さんはそれを知っているの?」



「はい、私はある程度情報が手に入れられる立場の人間なんです。探索者として独り立ちする可能性もあるので機密情報はワザと見れないように頼んでいました。なので私の知識は世間以上、機密未満って感じなんです」



 千歳さんって、とても興味深い人だ。


「まあ、手紙の事はこれ以上解らないから、一緒に探索しようぜ」


 乗り乗りの光太郎だけど、俺の考えはちょっと違う。


 確かに千歳さんは不思議と信頼していい人物だと思うけど、それだけで同じパーティを組むことは出来ない。



「千歳さんの事情は理解したし、謎の手紙も、気になるけど、足手まといになる可能性がある人とパーティを組みづらいな」


「弥!!」


 光太郎が珍しく強い口調で俺の名前を叫ぶ。


「それに、千歳さんだって選ぶ権利はあるだろ? 本格的にダンジョンに潜るのは来週水曜日の予定だったから、それまでは手伝ってもいいと思う」


「来週には家が完成するんですね、確か手続きで明後日から3日間探索は休みでしたよね」


「うん、手紙の事もあって手伝いたい気持ちもあるし、本気で駅前ダンジョンを攻略するなら、俺たち5人(匹)の方が早いと思うんだ」



 光太郎は何か考え込んでいるのか腕を組みながら難しい顔をしている。


「私はその日だけで充分です。六角橋さんも七瀬さんも信用出来そうな人なので」



「お、俺は!?」



 光太郎の件は置いといて、探索者としての準備をしているか聞いてみた。



「はい、準備は済んでいます」



「なら、駅前ダンジョンにみんなで行くか」



 そこで、今まで姿を見せなかったフローとフェイがやってきた。


「にゃあにゃあ~」

「ニャニャニャッ」


 何を言ってるか分からないが、何かをうったえるような気がした。



 すると、フローが千歳さんを引っ張り、フェイ

 が俺を押すように動く。



「あっ!」


 突然翠ちゃんが声を上げる。

 表情から何かに気づいたようだ。



「翠ちゃん何か気づいた?」


「弥さん、これ私の時と状況がにてません?」


「状況?」


「ほら、あの時の……ほら」


 珍しく翠ちゃんがはっきりしない。



「この猫さんは……私と六角橋さんをどこかに連れて行きたいようです」



 思い出した! フロー、フェイはうちのダンジョンに千歳さんを連れて行きたいのだと。



 それなら翠ちゃんが言いあぐねているのも解る。

 役所関係なら誰でも調べられるけど、家のダンジョンは公にはしていないダンジョンだからな。


「フロー、フェイ。お前らは千歳さんを仲間と認めているのか?」


「にゃん!」

「ニャン!」


 2人(匹)の元気いい返事が聞こえた。
















ステータス


 ネーム……フロー

 レベル……32

 ジョブ……ネコ

 ヒットポイント……676

 ストレングス……85

 デクスタリティ……274

 マジックポイント……170

 スキル……魔法防御3

 パッシブスキル……悪食、成長補正2倍、ドロップ確率2倍

 コレクション……孤児補正、五つ子補正、五兄弟補正、ネコ補正



 ネーム……フェイ

 レベル……32

 ジョブ……ネコ

 ヒットポイント……676

 ストレングス……85

 デクスタリティ……274

 マジックポイント……170

 スキル……物理防御3

 パッシブスキル……悪食、成長補正2倍、モンスター遭遇率2倍


 コレクション……孤児補正、五つ子補正、五兄弟補正、ネコ補正




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 僕と俺の一人称が混在しているところがあるが、伏線的な意味でわざとなのか、ただのミスなのかが気になる
[良い点] ここまでは、楽しく読めていた。 [気になる点] なぜ初対面の人とチームを組もうと思えるのか? 赤いものを見るだけで倒れるくらいの人が居ると、足手まといになるリスクが高いはず、それを上回るほ…
[気になる点] 千歳さんはチトセさんなのかセンザイさんなのか… とても気になります。後者なら血縁の可能性が? …と。
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