【六十七階層】政府の方針転換
光太郎、翠ちゃんとパーティを再結成したのはいいが、分け前について揉めに揉めた。
初めは5人(匹)いるから、五等分にしようか? と提案したのだが、不公平で翠ちゃんが貰いすぎだと言ってきた。
光太郎も同意だったようで、あっさり却下になった。
だってそうしないと、フローもフェイもお金を使わないので俺が貰いすぎる感覚に陥ってしまうんだ。
話し合いの結果、家が完成するまで約1ヶ月間、光太郎と翠ちゃんは収入の一割、残り八割を俺、フロー、フェイが貰う事で仮合意した。
俺はこの1ヶ月の期間で2人を鍛え上げて、均等割にするつもりでいる。
前半の2週間は地下五階層のトレント相手に乱獲し、後半は六階層のホブゴブリンを狩りまくった。
結果握力計判断だけど、翠ちゃんはレベルが5つ上がって、光太郎は6つもレベルが上がっていた。
おかげでスキルなしでもトレントと立ち回れるようになった。
ただ、ホブゴブリン相手だとスキルを使ってなお2人がかりでないと負けてしまう。
レベルはちょくちょく上がるのに、成長度は低い気がする。
今日は泊まりでこれからの打ち合わせをする。
「よし、今日も恒例のレベルチェックだ!」
「光太郎さんは3日前に上がったばかりですよ」
聞いているのか聞いていないのか光太郎は翠ちゃんの言葉に反応しないで、握力を測っている。
「……くっそぉ! 250キロ変わらずだ一ヶ月前の翠ちゃんにも勝てない」
「次は私です……んっ…………310kgです。ぶい」
光太郎を挑発する翠ちゃん。
この一ヶ月で3人の仲は、かなりうちとけてる。
悪友方面にだけど。
「ふっふっふっ、今日は弥と交渉して特別にMPを温存しているのだよ。さぁ逆転の時間だ! 限界突破II」
ちなみに『限界突破III』を使えるMPはなかったりする。
「380キロだぁ! 『III』が使えれば楽勝なんだが、ギリギリで俺の勝ちだ」
そー言えば、このスキルLvで測るのはオレが見てる中では初めてだな。
「剛腕! 測ります……」
『強腕』『剛腕』『怪力』と攻撃力が上がっていく翠ちゃんのスキルに対して、光太郎の限界突破は『I』『II』『III』とか安直すぎだよな。
「……395kgです。ふふ上がってます」
「うがぁ!なんでだぁ!? 昔は(二ヶ月前)はこれで勝っていたのにぃ」
まぁ、2人とも楽しそうで何より。
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夕飯のためにモンスター肉を焼いていたら、リビングから光太郎の叫ぶ声が聞こえた。
「オ────イ!! ダンジョンで緊急発表があるらしいぞ、10分後に始まるって!」
10分もあれば、肉を焼いからでも間に合うな。
「わかった、それまでにはそっちに行く!」
ただ5分もしないうちに、光太郎が再び騒ぎ出す。
「国営放送だけじゃなく、民放も全チャンネルダンジョン探索庁の発表特番みたいだ」
「光太郎さん、〇チャンネルだけは平常運転です」
「ホントだ。逆に視聴率上がるな……」
何やらよほどの事を発表するみたいだな。
モンスター肉パーティの準備が出来た時には、放送開始1分前だった。
「遅いぞ弥、探索者としての自覚が足りん」
「はいはい……」
テレビを見ていると、すでに見た事のある人物が映っていた。
確か防衛省の大臣と探索庁のトップだったよな。
他の人は知らないな、おっ会見が始まるな。
大人しく聞いてよう。
『急ではありますが、ダンジョン関連で様々変更があることを、この場で報告いたします』
フラッシュが焚かれるが、数は多くない気がする。
『我々はダンジョンのモンスターから入手できる魔石のエネルギーをさらに効率良く運用出来る設備の開発に成功しました。このことから、探索者の収集に対する税の見直しを致します』
何故その程度の事で、ほとんどのテレビ局から放映するのだろうか。
普通に告知するだけで、いいと思うのだけど。
『まずは大きな変更点から説明いたします。ご質問はその後でお願いします』
『1、探索者の所得税完全撤廃』
『2、税収は魔石からのみとし、魔石の買取価格の改定』
『3、探索者資格条件の緩和』
『4、探索者の優遇措置。特に新探索者は高優遇』
『5、魔石の違法売買の罰則が重くなる』
『この五項目になります。これが明日から変更される項目になります。質問等の回答は質問内容に合わせて、私百済か満座、奥村が答えます。どうぞ』
フラッシュと共に記者の腕だけが映った。
カメラは固定なのか、記者は今まで見えなかった。
『〇〇局です。記者会見の翌日から施行とはあまりにも急すぎると思いますが、どうしてなんでしょうか?』
『魔石の売買を駆け込みで行う探索者を想定しますと、混乱を招くと判断しました。当然明日から変更しても混乱するでしょうが、役所とアイテムショップとの下準備は万全なので、こちらの方が混乱が少ないと判断しこのようになりました』
光太郎も頷きながら聞いている。
『魔石からの税収のみと言うことは、魔石の買取価格を抑えて、その差分が国の収入となると思いますが買取価格はどのように変更となったのでしょうか?』
そこはかなり気になる。
僕は既にF級魔石の買取価格は400円だからな。
『F級魔石を例にあげて説明しましょう。改定前のF級魔石の買取価格は1個400円となっていて、特例としてダンジョン初心者は1個500円となっていました。改定後から、1個250円となります。これにも特例処置がありまして、探索者登録から1年以内及び、F級魔石の買取数1万個までは500円。3年以内及、魔石の買取数3万個までは400円。5年以内及び魔石の買取数5万個までは300円となります。E級魔石の説明も致しますか?』
テレビから記者の姿はギリギリ見えないのだけど、頷いたのだろう。
説明が再開された。
『E級魔石も買取額は4000円から2500円に変更。ただし3年以内及び買取数1万個までは5000円。5年以内及び買取数3万個までは
4000円。7年以内及び買取数5万個までは3000円と設定しています。他に質問は?』
『E級魔石があると言うことはそれよりも上の、A級からD級の魔石があると思うのですが、それについては?』
満座さんという名の人が、少し残念そうな表情で答える。
『恐らく記者さんではなく、視聴者の皆さんに向けての質問だと認識いたします。現在一般探索者の99,9%以上はD級魔石を手にした事がないのが現状です。なのでD級魔石の個数制限はしばらく意味のない話なのです。ですが、現在D級魔石は1個10万円で買取を行っています』
『……』
『……』
『……』
『……』
『……』
『……では、10分ほど休憩を取りまして、質問の再開をいたしましょう』
「これって俺たちが一息着くための時間だよな?」
「光太郎さん違います」
「魔石の収入が激減するけど、俺って確定申告はまだだったから、これから払う税金は丸々なしになるのか?」
「でも、確実に弥さんは250円ですよね?」
「あー解る。だってなぁこの4週間で、F級魔石がザックリ1万個でE級魔石が6千個だぜ」
そう、今回の狩場はE級魔石が出てくる階層だったから、F級魔石は道中のついでで手に入れた程度だ。
「私と光太郎さんの魔石の収入だけでも、350万円ほどです」
「俺、一気にお金持ち。ダチの年収を追い抜きました。弥が初心者優遇なしの稼ぎでも、恐らく1400万円くらいだから……そりゃ家を建てる訳だ……納得」
確かに最近は金銭感覚が麻痺してきたからな。
「でもマジックバックや装備の買い替えをすると、バカみたいにお金がすっ飛んでいくんだよなぁ。逆に今の階層で満足して、人生守りに入れば毎月1千万円の安定収入になるよな」
「確かにより探索しやすい環境を目指すとなると、この程度のお金じゃ全然たりないんだよな」
「……もしかして日本は、莫大な魔石が必要になって急な法改正をしたのかも……」
えっ、なんでそうなる?
「翠ちゃん、だったら魔石は値上げした方がいいんじゃない? なぁ光太」
「……確かに翠ちゃんの考えに至るには足りない要素が多すぎるよな。俺には政府の考えの深いところまで解らない」
光太郎の言っていた『足りない要素が多すぎ』ってのも俺には理解できない。
俺だったら、適当にダンジョンに潜ってる探索者に1,5倍働いたら? ってあれ?
頭がこんがらがってきた。
これ以上考えるのを止めようと思った辺りで、会見の続きが始まった。
ステータス
ネーム……一関 光太郎
レベル……31
ジョブ……一般人
ヒットポイント……700
ストレングス……62
デクスタリティ……93
マジックポイント……124
スキル……限界突破3、光魔法3、再生3
パッシブスキル……EXP2倍
コレクション……なし
ネーム……七瀬 翠
レベル……28
ジョブ……農耕士
ヒットポイント……700
ストレングス……84
デクスタリティ……84
マジックポイント……140
スキル……攻撃力上昇3
パッシブスキル……EXP1.2倍、M鑑定
コレクション……なし
大変遅れました。
実は下書きに熱がはいり更新できませんでした。
いまは七十話の下書きをしているところです。