【六十五階層】Gラビットとコボルトジェネラル
誤字報告、いつもありがとうございます。
軽くジョギングするようにダンジョンを走り抜ける。
最近は三階層までは索敵のスキルは使わない。
MPの節約ではなく、不意に遭遇した時の対応能力を鍛えるためだ。
しかしフローとフェイの察知能力は高く、逆に不意打ち気味にモンスターを始末する。
三階層最後の部屋も俺、フロー、フェイで軽々と殲滅する。
「あー改めて感じてたが、弥はバケモンだわ。これにスキルが加わるとどれだけ強くなるんだ!? こりゃあ駅前ダンジョンだと難易度が低く感じるよな。あははは」
「あの物理攻撃に耐性のあるスライムがあっさりやられてました。しかもラージスライムなのに・・・・・・」
「階段を降りればお待ちかねGラビットだ。3体以上なら減らすってことでいいよな?」
「ああ、ばっちこいだ!」
「はい!」
翠ちゃんはこのダンジョンに潜るのは2回目だから分かるけど、初めてここに来る光太郎に緊張が感じられない。
まあ、馬鹿と天才が同居するような奴だし、仕方ないか。
四階層に降りて数分後に1体のGラビットと遭遇した。
「おお、単独か都合良過ぎ。と言うか、なんかこのダンジョンってガンガンモンスター出てない?」
「私もそう思います。ここは私が戦いますね」
翠ちゃんはシールドと短刀を装備してGラビットの前に立つ。
「Gラビット、ランク4、徐々にパンチが鋭くなる」
シールドを前に出し慎重に距離を詰める翠ちゃんに対し、Gラビットは拳を構えたまま翠ちゃんに合わせるかのように距離を詰める。
Gラビットってこんな動きもするのか、基本パターン化した動きばかりだけど、こんな対応も出来るのか。
お互いの距離が近くなってきた、そろそろパンチがくる。
ドン!
Gラビットのパンチは翠ちゃんの盾を叩く。
まるで磁石で引き合うよう動きで、翠ちゃんがシールドで防御した。
翠ちゃんが少し驚くような表情をしている。
思ったよりパンチ重いのかな?
翠ちゃんは防御を重点にして戦っている。
盾でパンチを受け止めては短刀で切りかかる。
たまに避けたりするけど、基本は盾を使う。
全く力負けしないから安定して反撃が出来ている。
時間がかかりそうだけど、無傷でGラビットを倒せそうだ。
うん、翠ちゃんは完全に左右から繰り出されるパンチを見切っていた。
間もなくGラビットは、魔石とモンスター肉をドロップして消え去った。
「おおっ! モンスター肉が1、2・・・・・・4つもあるぞ!」
光太郎の喜びとは反対に、浮かない表情の翠ちゃん。
「翠ちゃん、何かあった?」
「はい、攻撃に思ったより重さがなくて戦いやすかったのと、同時に鋭さも感じなかったのが不思議で」
ああ、そういうことか。
Gラビットのパンチはどんどん早くなるけど、命中したり盾で防ぐとリセットされるから、翠ちゃんにはパンチの速度が上がるのを実感出来なかったよな。
Gラビットには適切な戦い方だった。
「弥、次は俺な。よぉしモンスター肉を出すぞぉ!」
光太郎の気合いのせいか、Gラビットは10分もしないうちに4体もまとめて出てきた。
「フロー、フェイ一つ残しでな」
「にゃん」
「ニャッ」
すぐに単体となったGラビットに、光太郎が突き進む。
「翠ちゃんの後だから、難易度低いな。はぁっ!!」
Gラビットのワンツーパンチを余裕もって躱し、剣で切りつける。
そのまま畳み掛けるように攻撃をくりかえすが、どんどんGラビットの攻撃速度が上がっていく。
「あっ」
見学している翠ちゃんも、なにか気がついのだろう。
光太郎も避ける事に集中するようになり、攻撃できていない。
光太郎、お前の盾は飾りか?
俺の心の声が聞こえたのか、盾を使ってパンチを防ぐ。
「ぬおっ!? がっっ」
思ったより威力があったのか、光太郎はバランスを崩しところを狙われてパンチを顔面に貰った。
「こなくそぉ!」
光太郎の叫びとは裏腹に冷静に戦ってる。
ラビットパンチの鋭さはリセットされて、緩い攻撃に戻る。
光太郎は攻撃を避けながら反撃を繰り返すが、だんだんと鋭くなる攻撃に対処出来ず盾で受け止める。
「お、重い・・・・・・ぐっ」
前回と全く同じパターンで攻撃受けたと思ったけど、顔面ではなく肩で攻撃を受け止めていた。
ダメージを受けた事に変わりはないだろうが、光太郎も対処しだしてきた。
「くつ、翠ちゃんの戦い方が正解だってのかよ!!」
悪態をつく光太郎は翠ちゃんの真似をして、緩いラビットパンチを盾で受け止めてから反撃しようとするけど、受け止めた後の反応が悪い。
戦いは五分五分になったけどお互い決定打のない長期戦に突入しそうだった。
動きは翠ちゃんより速いのに、Gラビットに苦戦する光太郎、違いは守備力なんだろうか。
光太郎の戦いを見守っていたら、盾を若干斜めにして受けるようになってきた。
そうか! 光太郎が素早い分、じっくりラビットパンチを見れるから、受け止める衝撃を逃がせるように盾を傾けてるのか。
俺は盾のメンテナンス費を節約するために同じことをしてたよな。
「だんだんコツが分かってきたぁ!」
とやる気を見せたところで、Gラビットは消滅した。
「もう少しでコツを掴みそうだったのに。弥もう一度やらせてくれ!」
そんなことで何回か光太郎と翠ちゃんに、Gラビットと戦って貰った。
「なんか微妙に納得いかない!」
不満な声を出す光太郎。
理由は光太郎が倒したモンスターだけアイテムをドロップしていないからだ。
「連続パンチの2回目を盾で防ぐと、更に戦いが楽になるって気づいたの俺なのに」
その発見とアイテムのドロップ率は関係ないぞ光太郎。
「私も、もう一階層下のモンスターと戦ってみたいです」
翠ちゃんはGラビットを単体で倒しても満足していない。
この下の階で出てくるモンスターは魔法を使うコボルトだ。
魔法や攻撃スキルさえなければ身体能力はGラビットと大差ない。
序盤の魔法攻撃と高速剣が厄介なモンスターだ。
これを捌くことができないと2回目の魔法攻撃で死ぬ可能性だってある。
「いいのか?」
「はい! これを倒してから正式に申し込みます」
「だけど、俺と翠ちゃんのセットで戦うからな」
話は決まって、モンスターが大量に出現する地点では俺ら5人で総当りでGラビットを圧倒した。
地下五階は洞窟タイプの階層になる。
流石の光太郎も緊張してきたのか大人しい。
「・・・・・・なんで洞窟なのに床が綺麗なんだ!?」
「しかも滑りにくくて戦いやすそうです・・・・・・」
2人とも冷静だ。
今回は索敵スキルを使って、単体のモンスターが出現するまで、第二の試練はしないことになってる。
もちろん都合よく単体が出るわけでないが、索敵の範囲内に入った複数のモンスターはフロー、フェイが突撃訪問して瞬殺してくる。
3回目にして、ひとつだけの反応を見つけた。
「光太、翠ちゃん。単体で来る! およそ10秒後だ」
「はい!」
「おう! 俺と翠ちゃんの相性を見せつけてやるぜ、あいたっ」
翠ちゃんの拳が光太郎の腕に当たる。
なんかいいな。
モンスターが見えた!
「コボルトジェネラル、ランク5、4つのスキルを使うジェネラルクラスだが、ランク不足で2つまでしか使えない」
なに、その超大切な情報は!?
このモンスター、コボルトジェネラルだっけか、闇撃Lv1、高速剣の後に不自然な攻撃が2回続いたのはこれのことだったのか!
なんか凄いスッキリした。
さあ、初見のモンスターに光太郎と翠ちゃんはどう戦うのかな。
ステータス
ネーム……一関 光太郎
レベル……25
ジョブ……一般人
ヒットポイント……500
ストレングス……50
デクスタリティ……75
マジックポイント……100
スキル……限界突破3、光魔法3、再生2
パッシブスキル……EXP2倍
コレクション……なし
ネーム……七瀬 翠
レベル……23
ジョブ……農耕士
ヒットポイント……575
ストレングス……69
デクスタリティ……69
マジックポイント……115
スキル……攻撃力上昇3
パッシブスキル……EXP1.2倍、M鑑定
コレクション……なし