【六十三階層】救援来たる
生存報告です。
厳しい戦いの予感は、悪い意味で的中する。
ネームドモンスターのスケルトン『ケイト』が素早い動きで回り込んできた。
フローとフェイがそれを阻止するように動き、2体のスケルトンと2体のトレントがケイトを援護するように位置を変える。
結果的に俺は、ネームドモンスターのトレント『カエデ』含むトレント3体と戦う感じになった。
俺の家にあるダンジョンで出てくるトレントは、3本の枝で攻撃と防御をおこなっていた。
そして、ここのトレントは一回り大きく4本の枝がある。
そのうち防御用の枝が3本と、攻撃用の枝が1本。
トレントはダメージを受ける度に防御用の枝が攻撃用の枝に変わっていくスタイルだ。
なら早めに一体を倒して数を減らすのが良策なはず。
フェイの防御スキルがあるうちに、全力で攻撃する。
狙いは名前のないトレント!
俺の防御無視の一撃がトレントに炸裂する。
枝をすり抜け、直接木の幹に攻撃が当たり、枝にある葉が大量に抜け落ちていく。
この調子なら3回程で、ひとつ枯れ枝にすることができる。
ガキンッ!! ガキン!
トレント攻撃が来たけど、壁はまだ持ちこたえてる。
再度トレントに攻撃をしたら、カエデの枝に遮られた。
このタイミングで防げるのか?
しかも、モンスターを守った!?
次のトレントの一撃で、防御壁が壊れた。
これから戦いがかなり長引いた、トレントを倒したい俺とトレント守るように闘うカエデ。
均等にダメージを与えると、攻撃用の枝が増えすぎて、防ぎようがなくなる。
時間をかけて戦い、トレントの枝の一本から葉が全て抜け落ちた。
「今だ! 火球Lv2!!」
ある程度トレントのHPを奪ったので、とどめの魔法を使う。
これでトレントは消滅して、1対2の戦いに持ち込める。
しかし攻撃魔法は発動しなかった。
まさかここでMPの枯渇?
バシンッ!!
カエデの一撃が俺を吹き飛ばす。
このタイミングで速度上昇スキルも切れたか。
ますます倒しきるのが、厳しくなってきた。
フローとフェイも苦戦してるのか、まだ一体も倒してない。
ザシュ
俺の不用意な一撃で、カエデの攻撃用枝が増えた。
とてもじゃないが、回復ポーションを飲んでる余裕がない。
トレントとカエデ攻撃を避けるので手一杯で攻撃すら出来ない。
フローとフェイが倒しきるのを待つしかないのか……
トレントからの防御が雑になったせいか、攻撃力に耐えきれずシールドが砕け散った。
くっ俺より弱いのに3体相手だと、分が悪すぎだ。
この手数を捌ききれない。
しかも今回は逃げたりしたら・・・・・・
防御に専念しても少しずつダメージを受ける。
被弾覚悟で攻撃したら3倍になって返ってきた
。
フローとフェイを待つしかないと思ったその時・・・・・・
「光破Lv1!!」
光魔法と思われる攻撃がスケルトンに炸裂した。
俺を援護して欲しいところだが、光魔法ならスケルトンなのは仕方ない。
後ろ見て礼をしたいところだけど、今は一瞬のよそ見すらできない。
「フロー、フェイ、大丈夫かっ?」
後方から聞こえる声はうちの娘を知る人物、間違ない光太郎だ。
「光太、俺よりも娘かよ!!」
「弥うっさい、今から行く!」
だが、光太郎がどれだけ成長したとしても、このトレント相手は不味い。
「光太無理する」「限界突破III!!」
俺が遮るよりも早く光太郎が隣にやってきた。
「MPは空っぽ、あと10分すれば俺は役に立たない。その間に決めちまえ弥! うぉぉぉ!!」
なんと光太郎は、トレントの攻撃を受け止め反撃までしている。
見てる場合じゃない。
反撃のチャンスは今しかない!
見た感じだと、光太郎の反則スキルを使っても、トレントより少しだけ強い程度。
俺がここで倒しきらないと共倒れになる。
まずは名前のないトレントを最速で倒す!
だけどカエデが絶妙なタイミングで邪魔をしてくるのでなかなか倒せない。
時間ばかり過ぎていく・・・・・・
光太郎も頑張ってはいるけど、葉の量を見ても倒すにはもう少しかかりそうだ。
バシン!!
「ぐっ」
焦りがでるとトレントの攻撃をもらっちまう。
「にゃにゃぁ!」
フローが援護にやってきた。
あっちもモンスターは残っているけど、ネームドモンスターの『ケイト』はもう消えていた。
光太郎の光魔法で、スケルトンを倒す時間が短縮されたのか。
トレント三体にこちらはフロー、俺、光太郎。
ネームドモンスターが混じっていても、同じ人数で負けるわけがない。
光太郎にしても戦いづらそうにしているが、心配する程じゃない・・・・・・いやむしろ押してるみたいだ、限定スキルとはいえ、もうここまで戦えるようになったのか。
フローもフェイもモンスターを倒し終えて、光太郎もトレントを消滅させた。
あとは俺がカエデにとどめを刺すだけ。
三本枝の攻撃をかいくぐり、スキルじゃない二連攻撃を与える。
やっと見える範囲全てのモンスターを消滅させた。
「やったな弥」
「光太、マジで助かった。だが油断するなよ?」
「俺これ以上はもうキツい、出るなら今すぐきてくれよな。あと4、5分で使い物にならなくなるから」
そうか、光太郎が来てから一気に形勢が変わったもんな。
改めてパーティの心強さを感じた。
こいつとなら自宅のダンジョンでパーティを組めばもっと楽な探索ができるよな。
あれ光太郎1人?
「あれ? 光太1人なのか?」
思ったことを声に出してみる。
「おお、翠ちゃんは外側の出口に行った。俺が当たりだったな。まさか弥がいるなんてびっくりした。あっ弥はさすがに疲れただろ? 俺はあと3分ほど働いてくるぜ」
そう言って奥に進んで行った。
俺は携帯電話を見て呟く。
「元気だな。まあ、空回りなんだけどアイツらしい」
携帯電話の画面には電波が通じている表示がされていた。
そうスタンピードは終わったんだ。
ステータス
ネーム……一関 光太郎
レベル……25
ジョブ……一般人
ヒットポイント……500
ストレングス……50
デクスタリティ……75
マジックポイント……100
スキル……限界突破3、光魔法3、再生2
パッシブスキル……EXP2倍
コレクション……なし
次回分、一割ほど書いてあります。