【六十階層】第二のダンジョン『ドス』
俺は、役所に記載してあった住所にたどり着いた。
ここには、第二のダンジョン『ドス』がある。
地元とはいい難いが、地元からわりと近い場所にあるダンジョンだ。
ちょっと田舎な雰囲気を醸し出しているが、ダンジョン付近の一画だけはそうでもなかった。
食堂が複数あり、コンビニも2店舗もあり、広大な駐車場を備えた道の駅まである。
車の台数に比べて、道行く人の数が少ない気がするけど、俺が気にすることじゃないか。
ダンジョンの入り口は駅近ダンジョンと比べて規模が小さい。
小さな映画館の入り口を思わせる。
入り口のゲートは二列分あったが、管理する人は若い女性が独りしかいない。
「えっ、お兄さん独り!? 死にに来たの?」
俺をみて、一人しかいないと確認すると、ちょっと綺麗な顔立ちをした女性が呆れたように話す。
さすがに、ここのダンジョンでの単独行動は無茶に感じるか、でもこの女性面影がだれかに似てるんだよな、誰だろ?
「ああ、待ち合わせをしてるんだ。役所からの依頼できた」
俺は誰かに似たような女性を視ながら、探索者カードを見せた。
「はい、確認しました。……………………」
なんだ、この間は。
「…………あのう、ナンパはお断りです」
しまった。
かなり、じっと見てしまったみたいだ。
でも、だれかに似てるんだよなぁ。
「ああ、すまん。無意識だからナンパとかじゃないから」
そう伝えて、ダンジョンの入り口に向かって進んだ。
後ろの方で『私が美人なのは分かるけど、ガン見とかちょっとなぁ……』なんて、独り言が聞こえた。
「フロー、フェイ、行きますか」
「にゃん」
「ニャン」
初見のダンジョンを独りで探索するほど無策じゃないよ。
でも、フローとフェイが居たことに気づかないなんて、鈍い女性だったな。
大きな階段を下り終わると、紫系統の配色をした壁、床、天井が見える。
しかも、温度が低い気がする。
この兆候はまさか……
索敵スキルを使ってから、ダンジョンの中を進む。
しばらく進むとモンスターの反応が出た。
この先の右側に4つの反応、初めてのダンジョンで、4体相手はちょっと緊張する。
自然に警戒心が高まる。
「フロー、フェイ。獲物は4体」
この娘たちは『敵』と言うより『獲物』と伝えた方が喜ぶ。
俺も『獲物』と思うことで、モチベーションが上がる気がする。
視界に捉えた獲物は、予想通りのスケルトン。
さあ、いくぞ!
うまい具合に前列2体、後列2体と密集している。
うまくいけば2体同時に倒せて、フローとフェイに任せるだけでこの戦いは終わる。
「火球LV3!」
1メートルを超す大きさの攻撃魔法が、スケルトンに当たる。
それは、後続のスケルトンを巻き込んで全滅した。
「あれっ?」
「にゃぁぁ」
「ンナァ……」
まるで、私たちの獲物が……
と残念そうな娘たち。
「何かおかしいな」
スケルトンが消滅した場所で魔石を探す。
集めた魔石の数は8個で、ドロップアイテムのマジックポーションも2個しかない。
もしかしたら……
ダンジョンをしばらく歩くと、次の反応を見つけた。
今度は2体だ。
「フロー、フェイ。次のスケルトンは2体だから、ふたりで頼むな」
「にゃ!」
「ンニャ」
2体のスケルトンを観察する。
よく見なくても、自宅ダンジョンのスケルトンと装備が違うのが判る。
持っていた武器はこん棒だ。
それに動きが遅くないか?
そのまま見学していたら、想定外の早さでスケルトンは消滅した。
このスケルトンは『高速剣』と『二連撃』も使わなかった。
ここのスケルトンはもしかしたら雑魚なのか?
このまま、歩く速度を速めにして、ダンジョンを探索した。
何回か戦って確信した。
ここのスケルトンは弱い。
動きが遅いし、力もない。
魔法を使うコボルトより、少し強い程度だろう。
しかも攻撃スキルを一切使わないから、特に警戒しなくていい。
ただし、ここのスケルトンもフローとフェイが戦った方が早く決着がつく。
完全に拍子抜けだ……フローとフェイも俺に向かって『にゃあ、ニャア』抗議してくる。
しょうがない、走るか。
途中で二組の探索者を見つけたけど、軽い挨拶だけして、すれ違う。
しばらく走っていたら、とんでもない事態に気づいた。
「か、帰り道わかんなくなっちゃった」
「にゃっ!?」
「ウニャ!?」
フローとフェイすらビックリさせるドジをやらかしてしまった。
さてどうするか、と悩んでいたら。
「にゃにゃあ にゃにゃん」
とフローが前足をとんとんと叩いていた。
「下に行こうって、ことか?」
「ニャ!」
フェイが肯定をしてる気がする。
きっとそうなのだろう。
そうだな、ダンジョンは広いけど、ここのダンジョンも下り階段は4つもあるって話だからな。
体感的に一時間くらい歩いただろうか、大きな部屋と階段を見つけた。
だが、ここにはモンスターはいなかった。
どこかの探索者が掃除をしたのかもしれないな。
帰るつもりで、地下二階にきたのだけと、なにもしないで帰るのに抵抗がある。
「なぁフロー、フェイ」
「にゃ?」
「ニャ?」
「このまま帰るのは勿体ないよな? ここのモンスターを狩りたくないか?」
「うにゃ!」
「ニャン!」
俺の考えはお気に召したようだ。
こんどは、もと来た道に戻れるように意識しながら歩く。
すると、こん棒を持った見た目の醜悪なモンスターと遭遇した。
これは知ってる。
ホブゴブリンを小さくしたようなモンスター、ゴブリンだ。
数は3体なので、うまく一対一で戦えるように誘導する。
「フロー、フェイいくぞ」
「にゃんっ!」
「ニャッ!!」
ゴブリンの振り回すこん棒を避けながら、攻撃を与える。
今のところ驚異を感じないが、第二のダンジョンの二階層だ。
スキルや魔法を使用してくる可能性は大だ。
ゴブリンの戦い方は、ホブゴブリンと大差ない。
今までのモンスターは、通常攻撃の後にスキル攻撃を出してきた。
だが、このゴブリンはスキル攻撃を使ってこない。
そのまま、戦っていると大振りをやめてコンパクトに殴りかってくる、戦い方をチェンジしてきた。
それでも、うちのダンジョンに出てくるスケルトンより楽な攻撃で、巧さも速さもない。
ゴブリンの大きく振りかぶった隙だらけの攻撃を、避けながら反撃したところで、モンスターが消滅してしまった。
落とした魔石は『E級魔石』が2個だけだった。
うちのダンジョン出現する『ホブゴブリン』の落とす魔石は3個。
木のモンスター『トレント』が2個落とすから、それと同数だ。
今さらだけど、モンスターの強さって、ドロップする魔石の種類と数で把握出来るんじゃないだろうか。
だとすると、ここの一階層と二階層はうちのダンジョンの六階層に相当するってことになる。
便利な判定方法を思い付いたところで、この日の探索は終わりにした。
また明日もここに来よう。
執筆意欲が湧いてきたので、最後の書きためを投稿しました。
はい、背水の陣です(; ・`д・´)