【五十四階層】違和感
遅れて申し訳ないです。
あれから、予想どおりというか、スタンピードの影響で島中大騒ぎになってしまった。
通信が復旧して、モンスターの報告を一斉にしたのだろう。
夕方には自衛隊がヘリコプターでやってきて、事情聴取のため役場の一室に連行された。
質問攻めの後は、感謝の言葉と明日の俺についての打ち合わせだ。
翌日には簡略だけど、島のみんなを集めて式典をやった後に、本土で正式に感謝状の授与式したいと言ってきた。
目立ちたくないから、ダメもとでハッキリ断ってみたら、授与式の方はあっさりと了承してくれた。
因みに北斗と南は、俺の後ろに陣取り、ほとんど喋っていない。
自衛隊との話で意外だったのは、フローとフェイのことだ。
フローとフェイが探索者だったのは驚かれたが、前例があるらしく『へぇ、珍しいね』程度で済んでしまった。
動物と共にダンジョンに潜れる探索者を『テイマー』と呼んでいて、事実確認は取れていないけど、パッシブスキルが影響してるだろうとの話だった。
噂の『パッシブスキル』が、実際にあるのが判明した。
何故パッシブスキルだったかと言うと、動物が探索者になった例の大半は、人間と不仲になる結果から、動物とうまく探索できる探索者を、スキルの影響と想定してるようだ。
だからか『人間になつく動物の探索者』の飼い主は『テイマーのパッシブスキル持ち』と位置付けているそうだ。
ただ、自衛隊が把握している現時点だと、テイマーは10例もないそうだ。
指定の役所で探索者カードの更新手続きをできるようにしてくれるから、そこでフローとフェイと一緒に探索できるダンジョンを教えてくれるそうだ。
やっぱり『テイマー』は、一般的に浸透していないようだ。
報告の流れで俺の身元も話し、途中で北斗と南の話も聞いてしまった。
2人の親は最近結婚したらしく、北斗と南に血の繋がりがないそうだ。
それにしては兄妹のように仲が良かった気がするんだが。
翌日、自衛隊に協力している民間人という体で、ちょっとした表彰をされた。
俺の後ろに例の兄妹がいたけど、ただ立っていただけだった。
表彰が終わって独りになったとき、強烈な違和感を覚えた。
なんだろう、この違和感は…………
しかし、考えても違和感の正体が思い付かない。
思い付かないってことは大したことじゃないと思いつつも、辺りを探索する。
しばらく歩いてると、初めて地上でモンスターと戦った場所に着いた。
そう言えば、ここでモンスターと戦ったんだよな。
人が死んだのを初めて見たんだよな。
……ズキン……
えっ、初めて?
……ズキンッ……
頭が痛い……おかしい……人か死んだのは初めて見るはずなのに、俺はもっと悲惨な光景を知ってる気がする。
メディアでダンジョンでの戦闘やスタンピードの映像でも見た?
いや、ダンジョンでは通信機器や記録媒体は使えない。
スタンピードも携帯電話が使えなくなったことから考えると、記録もできないだろうし、そんな映像も見たことがない。
そうだ、もっと昔にこれより酷い光景を見たことがある気がする。
……ズキン……ズキン……
しかし、思い出そうとしても頭痛がするばかりだった。
しばらく頭痛に悩まされた。
頭痛が収まったとき、1つの疑問が浮かび上がった。
おかしい……
このスタンピードで少なくとも、3人以上の死者が出ている。
出ているはずなのに、だれもその死者に大きく触れていない。
それより、スタンピードを収めたことに注目がいっている。
死んだ人の家族まで覚えてないが、人が死んだことによる悲壮感が少ない気がした。
ゾクリ……
これってかなり危険なことじゃないのか?
人の死より、ダンジョンに注目が集まっている気がする。
ダンジョンは、人間に恩恵を与えるために出現したと思ったんだけど、本当にそうなのだろうか。
ダンジョンで壊滅した国々は『対処が間違ったから仕方ない』で済ませていいのだろうか?
「なぁフロー、フェイ。ダンジョンはいったいなんのために出現したんだろうな?」
「にゃ?」
「ニャ?」
なんか、2人(匹)とも『肉じゃないの?』って言ってるみたいだ。
「そうだな、あれこれ考えても俺にできることはないもんな。いつも通り頑張って、肉を集めよう」
「んにゃ」
「ニャッ」
フローとフェイもそれで良いみたいだ。
翌日、島を出る日が来た。
今は例の兄妹と3人でいる。
他の人がいると、南の方は全く喋らなくなるからな。
「同志弥、連絡先を交換しよう」
「でも、スタンピードのモンスターは魔石もアイテムも放出しないなんてビックリだったな、同志南、同志弥」
北斗と南から、名刺で連絡先を貰った。
『群青の孤高者 スキルマスター 七星北斗』
『瑠璃色の殲滅者 スペルマスター 七星南』
凄い恥ずかしい名刺を貰ってしまった。
うん、今後この2人と連絡を取り合うことはないだろう。
何故こんな奴らに『同志』と呼ばれなきゃならんのだ。
だけど、貰った名刺は丁寧に財布にしまって、帰路についた。
◆
◆
◆
このスタンピード事件から数日後の、ある情報機関での出来事。
「えっと、3人の身元調査報告っと」
1人の中年女性が、乱雑に書かれている紙を見ながら、呟きつつパソコンのキーボードを叩く。
「七星北斗、探索者歴1年と2ヵ月、推定総収入○○○○万円、独身である…………って凄いじゃない。で特記事項は、初回のダンジョン探索で仲間を3人失っている……と。ほかに主だったことはなし……と」
カタカタカタカタ……
「七星南、旧姓十文字南、 探索者歴1年と2ヶ月って、今入力した男とどんな関係!? …………あっ親が結婚したのね。推定収入○○○○万円……うわっ兄妹そろって凄いわね。初回のダンジョン探索で仲間を3人失っている……って結婚が半年前でその前から知り合いだったの!? それから親の結婚で兄妹に……なんか運命を感じるわね。特記事項は『運命の赤い糸』なんて入力したら怒られるわよね」
カタカタカタカタ……
「3人目は六角橋弥。探索者歴5ヶ月で推定収入4000万円!? なにこれ? 異常にも程があるでしょ? ……『2匹の猫を操るテイマー』なるほど、それなら納得……できるわけないじゃない! くう……うちの娘と結婚させたい。特記事項は自宅に『ウノ』のダンジョンを所有する『管理者』でもあると、あとは成長速度が後発の自衛官に近いっと。あれ? 紙がもう一枚…………なになに、旧姓、千歳弥だって。かっこいいじゃないの……まぁ、素敵な苗字だからって、特記事項に入れなくてもいいわよね?」
カタカタカタカタ……
「よし、送信準備完了っと、課長承認お願いします!」
「……わかったが、独り言は控えめにな」
「はぁい!」
「せんざい………………か、(潜在、善在、前財、全才? 珍しい名字ね)」
「千歳君、今日は病院の日だろ? もう帰っていいよ」
「はい、ありがとうございます。では、お先に失礼します」
ステータス
ネーム……七星北斗
レベル……28
ジョブ……???
ヒットポイント……1136
ストレングス……176
デクスタリティ……148
マジックポイント……356
スキル……剣技3、攻撃力上昇3、物理防御3、速力上昇2、索敵2
パッシブスキル……自己鑑定、消費MP半減、早熟、Gキラー
コレクション……片親補正、中二病補正
ネーム……七星南
レベル……28
ジョブ……???
ヒットポイント……856
ストレングス……148
デクスタリティ……148
マジックポイント……408
スキル……土魔法3、魔法防御3、風魔法3、回復2、火魔法2
パッシブスキル……自己鑑定、消費MP半減、早熟、ゴブリンキラー
コレクション……片親補正、中二病補正
最後の北斗と南のジョブで、なかり迷いました。
でも、やっぱり内緒で行こうかとおもいます。
因みに遅れた理由は、テレビに釘付けになっていたからとか、面白い大型小説をよんでいたからとか…………
ほんとすいません。




