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【五十二階層】スタンピード『ウノ』

誤字報告ありがとうございます。

感想返信できなくて、すみません。


前回のマジックバッグ所持について若干改稿しましたか、ストーリーに変化はないです。


武器を持たない理由については、活動報告にて…………

 PM3:00


 地上に溢れ出たモンスターと自衛隊が衝突した。


 溢れ出たモンスターは、地下1階層から5階層までのモンスターで構成されていた。


 (ジャイアント)スネーク、Gモール、スライム、コボルト、大化物キノコの五種類だ。


「氷礫LV4!!」


 小さな氷の礫が無数に集まって大きな塊になり、モンスターに向かって超高速で弾け飛んでいく。


 まだ散開していないモンスターたちは、攻撃魔法に呑み込まれた。


「あぁ……完全にオーバーキルですよ班長……他に6人もいるんですから……」


「いやぁ、スッキリした。『ウノ』なら俺単独でも殺れるんだけど、上が許可しないからストレスがたまってるのさ。あとは『ボス』が出てくるまで待機してる、雑魚は任せた」


「班長だったら、ネームドモンスターでも雑魚ですよね。全部譲ってください」



 戦い始めた自衛隊はモンスターを圧倒していた。


 大半のモンスターは出現しては一撃で消え去り、物理攻撃に強いスライムや、モンスターランク3の大化物キノコですら、2回の攻撃で消滅していく。


 それを少数の自衛隊が、簡単な作業みたいにモンスターを狩る。

 そんな単純作業を15分程度繰り返したところで、モンスターが出てこなくなる。



「モンスターの出現が止まった。そろそろですかね?」


「ああ、たぶんな。ん、こないな?」



「もう少し待て……ほら来た。ネームドモンスター『サリナ』……しかしふざけた名前だ。ダンジョンってどんな仕組みしてんだよ」


「これじゃゴブリンより、弱いっすよね」


「隊長の出番なし」


 出現したネームドモンスターと呼ばれていたコボルトの『サリナ』は、数人の自衛官に囲まれ、瞬く間にやられて消滅してしまった。







「おい! これ以上出てこないじゃんか! まさか残りの4体は向こうに出現したのか? なんてこった」


 隊長と呼ばれた探索者は、運の悪さを嘆いた。



 そして、ほぼ同時刻。


 八丈島にもう1つあるダンジョンの入口では。


 入口のサイズが小さいせいか、自衛隊の探索者も3人と少なく、スタンピードとして出現したモンスターの数も少なかった。


 3人の自衛隊探索者で、地上に出現したモンスターをあっさりと倒しきっていた。



「来たな……」


「ネームドモンスター『タイパーン』か」


「ちゃっちゃと倒して、次のネームドモンスターを待とう」



 タイパーンと名のついたGスネークは、3人の自衛隊探索者に袋叩きにされて消滅した。




「…………来ない」


「まさか、残りはみんなあっちに?」


「チッ………隊長の喜ぶ顔が目に浮かぶ。あの人、強さだけはまぁまぁだからな。通信網は……まだ回復してないか……まだモンスターが出る可能性が残ってる。油断するな」


「はい!」

「はい!」






 1つの地区で5体出現するとされる『ネームドモンスター』


 しかし、自衛隊の包囲内に出現したネームドモンスターはたった2体だった。


 これは、何を意味するのだろうか。







 ◆

 ◆

 ◆



 八丈島から南に位置するこの島で、使われていない古井戸があった。



 その井戸を覗き込むと、その深さは数メートルで底となる。


 上からライトを当てれば、きれいな床が見えるだろう。



 だが、よく考えてほしい。



 秘境と言っても過言ではない小さな島の古井戸の底床がきれいな物なのか……


 誰かが手入れをしているのか……


 否、それならば井戸の周囲も掃除がされているだろう。


 この古井戸は清掃された形跡はないし、下に降りられる梯子もなければロープもない。



 この不思議な古井戸の正体は、数分後に判明することになった。



 PM3:00


 古井戸から、何かが涌いて出てきた。


 大きなモグラ、ヘビ、小さい人型の生物、青いゲル状の生き物、手足のついた巨大なキノコ。



 そう、ダンジョンのモンスターが古井戸から出現し始めた。



 この古井戸は、ダンジョンの入口で八丈島のダンジョンとリンクしていたのだ。



 涌き出たモンスターは、何かの命令に従うように、周囲に散開していった。


 そう、人間を襲うために。




 そして、この島に恐怖が訪れる。



 ◆

 ◆

 ◆




 フローとフェイとの散歩中、妙な感覚がした。



 なんと言えば分かりやすいのだろうか、精神的なコンディションが最適化したような感覚。


 今この状態で試験をすれば、運動、座学に限らず、良い成績を残せると思う。



 様々な事柄に、総じて鈍いと言われた俺だ、フローとフェイも変化に気づいたかもしれない。


 フローとフェイを見るが普段と様子が変わらない。


 あの感覚は、俺の気のせいだったのかな。







「…………?」

「…………!?」

「…………!!」


 ん? 遠くから、声が聞こえてきた。


 よく判らないが、良い感じはしなかった。



「フロー、フェイ、今声のした方に行ってみよう。なんか気になる」




 声のした方に行くと、獣に人が襲われている。


 慌てて、携帯電話を手に取り連絡をしようとするが『圏外』と表示されていた。


 本来なら助けを呼ぶのが普通だろうが、何故かそうしなかった。


 先ずは、襲われている人を助ける!



「フロー、フェイ、行くぞ!」


「にゃん」

「ニャッ」




 途中で俺の脚が止まった。

 襲っていた獣は、自然界の生き物じゃないと判ったからだ。


 人間を襲っていたのは、ダンジョンモンスターのGモールだ。


 Gモール2体に襲われている人が3人。


 そこからのフローとフェイが速かった。


 2体のGモールを猫パンチで引き剥がし、敵討ちとばかりに、なぶり倒す。


 俺は倒れた人の方に向かう。


「大丈夫ですか!」


 大丈夫じゃないのは見て理解できるのに、とっさに出てくる言葉はこんなものしかない。


「うう……助け……て」

「……」

「……」


 返事はひとりしか返ってこない。


 くそっ


「索敵Ⅱ」


 60メートル以内の距離にモンスターはいない。

 助けを呼ぼう、こうなってしまっては、俺には何もできない。


「治癒(微)……やっぱり探索者じゃないと回復スキルは受け付けないか。今助けを呼んできます。少しだけ待っててください」


 分かっていたけど、回復スキルは普通の人には通用しなかった。


 人が多くいそうな場所まで走る。





「キャァァァァァ!!」

「も、モンスターだぁっ!!」

「に、逃げろぉぉぉ!」


 ここにも、ダンジョンのモンスターがいた。


「フロー! フェイ!」


 フローとフェイが俺の声と同時にダッシュする。



 モンスターは6体、島の人を助けるには俺も参加しないと。


「加速!」


 反射速度を上げると、若干移動速度も上がる。


 速度上昇を利用して、Gモールを蹴りあげる。


「えっ? ええっ!?」


「動けますか? さぁ今のうちに逃げて」



 倒れている男性を助けたあと、危なくなった女性を見かけた。



「火球LV1」

「風刃LV1」


 えっ?


 誰かが俺と同時に魔法を使った。


 ほぼ同時に発動した攻撃魔法は、速度の違いがあったのか、俺の魔法は消えたモンスターをすり抜けるように飛んでいった。


 恐らく僅かの差で『風刃』という魔法が先に命中したのだろう。



 声のした方を見ると、相手もこちらを見てビックリしている。



 あっ、昼御飯を一緒に食べた家族の、若い女性の方だ。


 しかも男性の方も、島民を守るように戦っている。


 あの兄妹も探索者だったのか。


 ん? 雑草のせいで見えないが、兄妹の後ろ側にモンスターの反応がある。


「後ろっ、モンスターがいる!」



 僕の声に男の方が、直ぐ反応した。


「索敵Ⅰ そこか!」


 彼らの強さは判らないが、弱くないことは想像できる。


 あっと言うまに、ここのモンスターを全滅させた。


 俺は、モンスターがどの方角から来たのか、襲われた人たちに聞いてみた。



 そして指を差す方に向かって走っていった。









 ◆

 ◆

 ◆




「同志北斗、見た?」


「ああ、いまのを全部見たな? 同志南」


「『加速』に『火魔法』それに『索敵』まで。あの様子だと他にもスキルがあるはずね。やはり」


「同志南、それは早計だ。スキルの3つや4つでは判断できない。追いかけるぞ、人目がなければ同士南も全力を出せよう」


「うん……でも、人見知りは北斗もするでしょ?」


「南、なんで素に戻る?」





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