【四十九階層】モンスター肉(特上)
お待たせしました。
モンスター肉(特上)を持ち帰った翌日、
今日は、丸1日休みにして肉の日にしよう。
1体あたり、2㎏のモンスター肉をドロップした大きなゴブリン。
まだ、10体しか倒していないが、ある程度検証できた。
火魔法だけで戦った時、LV2とLV1の2発で消滅した。
ただ、火球LV1については腕を使って防御姿勢を取った。
防御姿勢をとっても消滅したことには変わらないが、攻撃魔法に反応できる反応速度があるってことだ。
火球LV3も使ってみた。
直径1メートルを超える火の玉は、物凄い速度でゴブリンに命中して一撃で消滅した。
ゴブリンが声を発する度に戦い方を大きく変えることは、二段階変化までしか確認できなかった。
減ったHPで変わるのかもしれないが、違和感が残る。
他に何かしらの条件がありそうだ。
などと考えていたら、フローとフェイが、『なぁなぁ』『ニャァニャァ』鳴きながら、体を擦り付けてきた。
はっ、そうだった。
今は肉を食べるんだった。
「よし! 特上肉を食べるぞ!」
「にゃあっ!」
「ンニャッ!」
モンスター肉を、軽く炙るように焼く。
ジュウジュウと心躍る音と共に、肉の焼ける香りが漂い始めた。
あっ、これだけで解る。
これ、絶対に美味しいやつだ!
フライパンを2つ同時に使っているけど、もっと効率のいい方法はないものか。
食べ終わったら、外出して探してみよう。
「いただきます」
「んにゃあ」
「ニニャア」
う、美味い!? 美味すぎる!!
気をつけないと噛んだ瞬間に呑み込んでしまいそうだ。
これは小さく切り分けで食べるんじゃなくで、大きくガブリと一気に口に運んだ方がいい。
口いっぱい頬張って食べる。
柔らかい肉に噛みごたえが追加される。
焼き加減はスーパーレア(存在する?)なのに、生臭さの欠片もない香りと味。
フローとフェイは『にゃんにゃん』言いながら食べてる始末。
俺だって叫びたい。
よし、叫ぼう。
「うんめぇぇぇぇぇ!!」
気づいたら、焼いた分は食べ終わってしまった。
あれだけ食べたのに、まだまだ食べられる余力がある。
「フロー、フェイ、もう一回焼くか?」
「んにゃっ!」
「ンニャン!」
よおし、任せとけ。
3人(匹)で2㎏の肉を食べきってしまった。
食べきったと同時に理解した。
他の食材ならともかく、同じ肉ではこの肉以外食べたくない。
もう、安価な肉は食べられないかも。
モンスター肉に片寄りすぎると、健康面が心配になるが、今まで毎日たべていたのに、むしろ身体の調子は良くなっている。
毎日も絶好調だ。
夜にもこの特上肉を食べたい。
だけど、食べたらなくなってしまうな。
ダンジョン探索はちょっとお休みにして、暫くは特上肉狩りをするか。
「フロー、フェイ明日から暫くは、ゴブリンを狩りまくって、特上肉のストックを作ろう」
「にゃっ」
「ニャッ」
フローとフェイも賛成みたいだ。
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魔石やドロップアイテムを売りまくっているから、たくさんの肉が焼ける大きなバーベキューコンロを探そう。
色々見て回った結果、ものすごく気に入った逸品を見つけた。
超大型バーベキュー用ガスコンロ『剛力火山4』
背の高いステンレス製のコンロに、4つの火力調節つまみが付いていて、火加減は自由自在。
サイドテーブルは、作業台として使えて非常に使い勝手が良さそうだ。
LPガスを使っているから火起こしの手間もかからない。
蓋も付いていて、グリルでの調理も可能で、
モンスター肉の料理のはばも広がりそうだ。
だけど、その日に手に入らないし、ガス会社にも連絡をしなきゃならないから、
超大型無煙ロースターを2台買って満足することにした。
家に戻ると、フローとフェイがいない。
もしかしたらと思い脱衣場までいくと、扉が開きっぱなしになっていた。
フローとフェイも狩り好き過ぎるだろ。
先日フローとフェイに、狩り行くときは、魔石の回収は気にしないで、好きに遊んでこいと伝えた。
もったいないと思うだろうが、猫に魔石やアイテムの回収なんて大変過ぎるだろう。
念のため、地下2階までと伝えたけど理解できたかな?
俺はドロップアイテムが貯まってきたから、役所にあるアイテムショップに出かけて、余ったアイテムを売りにいった。
それから暫くは、あのモンスターを狩りまくった。
アイテムショップの武藤さんに聞いたら、大きなゴブリンは『ホブゴブリン』という名前で、かなり強いモンスターらしい。
俺の知ってる知識だと、ホブゴブリンは良い妖精だった気がしたんだけどなぁ。
ホブゴブリンのドロップするモンスター肉は探索者以外にも流通可能な肉で、一部の金持ち軍団が買い漁っているらしく、なかなか市場に出てこないらしい。
そういえば、ここでもモンスター肉(特上)は、見たことがないな。
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下層に行くのを保留にして、モンスター肉(特上)を売れるほど集めた頃、家に懐かしい来客があった。
「弥さん、お久し振りね。元気にしてましたか? お土産を持ってきたの」
来客者は四谷さんだった。
四谷さんを家に招き入れ、世間話をたくさんした。
四谷さんは短期契約で家政婦の仕事をしている。
どうやら仕事が一区切りついて、次の仕事先まで10日ほど時間に余裕が出たらしい。
四谷さんの勤めている企業で、ある催しがあって、南の島の旅行が当たったと聞いた。
「それで、私か息子で行こうかと思ったんだけど、これを見て考えを変えたの。弥さん、南の島に行ってみない?」
四谷さんに渡された物は、旅行チケットと1枚のチラシ。
チラシの見出しにはこう書かれていた。
『ペットと過ごす癒しのひととき』
『自然の力を肌で感じてください』
そこは『八丈島から行く秘境の島』と記載された旅のチラシだった。
ステータス
ネーム……六角橋 弥
レベル……24
ジョブ……軽戦士
ヒットポイント……754
ストレングス……137
デクスタリティ……161
マジックポイント……178
スキル……回復魔法3、火魔法3、速度上昇3、索敵2
パッシブスキル……早熟、アイテム鑑定、消費MP半減、転職
コレクション……孤児補正、双子補正、四兄弟補正
A「一関君、うちのパーティに入らないか?」
光「俺ですか? 力だけなら七瀬さんの方がありますよ」
B「彼女も将来的には使えそうだけど、欠員が出た時と、階層を更新するときしか有用じゃないんだよな。君にはわるいけど」
光「なるほど、俺は強さよりスキル構成に有用さを見いだしたんですね」
A「うん、実力はまだまだだけど、セカンドパーティで頑張っていれば、直ぐにレベルは近づく」
B「不思議な仕組みだけど、それだけに後からうちのパーティに入るには貴重なスキルを条件にしてるんだ」
光「話は分かりました、でも加入の件辞退させてもらいます。実は俺たちは3人パーティなんです」
A「もう一人いたのか」
B「もう一人は見たことがないよな、うちのメンバー見たいに、用事で幾日かいないってことか」
光「たぶん……武者修行してるんじゃないかな(翠ちゃんには悪いけど、あいつはそういう奴なんだよな)……と言うわけで、今回みたいに短期の仕事があったら、ご一緒させてください」
A「ああ、そのときはよろしく」
B「まあ、回復と魔法の2刀持ちが、フリーなわけないか」