【四十六階層】自分の失態を思い知る
再開します。
現在【51階層】を下書き中
今までモンスター狩りに集中していたから、ドロップアイテムは売らずに溜め込んでいたら、凄いことになってしまった。
空き部屋に、モンスター肉などが詰まってしまった。
売ろうと思った時には、持ち運べる量を遥かに超えているのに気づいてしまった。
こうなったら、電話で相談だ。
引き取ってくれる業者を見つけて、相談する。
『探索者専用ドロップアイテム買い取り係担当の和梨です』
「すいません、六角橋といいますが、ドロップアイテムを、まとめて買い取ってほしいのですが」
『はい、かしこまりました。買い取りには探索者カードの用意と、役所の探索店の相場から1%プラス3万円の手数料がかかることの同意お願いします』
もう、多少の値段を気にしてる場合じゃない。
次回からは、ちゃんと定期的に売りに行こう。
「はい、それで構いません」
『ありがとうございます。では、おおよそのドロップアイテムの量をお伺いしたいのですが』
「えっと、スライムゼリーが200個以上で」
『はい』
「コボルトスパイスが500個を超えてたかな」
『……はい?』
「モンスター肉が、並、上合わせて1500個くらいですが」
『は、はぁ!? …………し、少々お待ちください、保留いたします。ピー、ガチャッ! せ、せんぱぁい! お、大口です! 超大口の買い取りが来ましたぁ!!スキル持ちを大至急呼んできてぇ!』
……保留ボタン押し間違えてない? 丸聞こえだよ?
◆
◆
◆
俺んちの前に中型トラックと、軽自動車がやってきた。
そんなに大事だったのか?
まさか、鑑定持ち2人とごっつい機械がやってくるとは……
2人がかりで鑑定をして、残りの2人がトラックに運び込んでいく。
ごっつい機械はアイテムを鑑定をする機械じゃなくて、探索者カードを認識してさらに探索者カードに入金機能がついた装置だった。
全ての査定と運び込みが終わり、最後に入金手続きをする。
「モンスター肉(並)が230個、モンスター肉(上)が1300個、コボルトスパイスが550本、スライムゼリーが270個、手数料、出張料を差し引きまして、1638万円になります。端数はこちらで切り上げさせていただきました」
その後、名刺は渡されるわ、店のチラシも渡されるわ『今後も当店をよろしく』と繰返し言われるし、俺としては目立ち過ぎるから、もう頼むことはないだろう。
今後のことを考えて、少し上位のマジックバッグも買っておこう。
しかし、一時期Gラビットを乱獲してたとはいえ、2ヶ月半くらいでこんなにモンスター肉が貯まるとは。
ご近所様に引っ越しと、間違えられたイベントも終了して、
ウェポンケースを持って、武藤さんの店に行く。
「いらっしゃい。おお、弥くんかい、今回は買い物かな?」
武藤さんがそう言うのも、根拠はある。
実は、地下6階に行く前日に魔石を大量に買い取りしてもらったからだ。
ここでも、恐ろしい金額の取引が発生してしまった。
「はい、新しい防具を買いにきました」
武藤さんの目が、キラリと光る。
実際には光ってないけど、そう感じたんだ。
「弥くんも前に買った防具が駄目になるほど頑張ってるのか、予算は?」
なんで、防具が駄目になったって判るんだ?
「予算は200万円くらいまでで、盾を何種類か見たいです。金額はもっと融通が利きますけど」
武藤さんは奥に引っ込んで、5分くらいしたら、女の人を連れてきた。
ちょっとぽっちゃりな体型で、美人とは言えないが、魅力と威厳を感じる空気を纏っている。
大きな荷台を押しながら、俺と目を合わせると、にっこりと挨拶してくれた。
「いらっしゃいませ、いつも主人がお世話になってます。ホラあんた、店頭はバイトに任せて奥に行くよっ」
台詞の前半と後半のギャップがすげぇ。
僕は店の奥に連れ去られた。
年季の入った頑丈そうな巨大テーブル。理由は解らないけど、照明はLEDと蛍光灯を併用している。
壁は至ってシンプルだ。
「改めていらっしゃいませ。話は主人から聞いています。飛びっきりの盾を買いにきたとか」
営業スマイルでにっこりと微笑む。
おれ、予算が200万円だって、ちゃんと言ったよな?
「とりあえず、10枚ほど用意しましたので、気になった物があったら声をかけてくださいね」
色々な盾がテーブルの上にゴトゴトと置かれたけど、持ち手側を金属、外側を木製で造られた盾が気になったので持ってみる。
おっ!? 軽い。
「あっ」
「あらっ」
なんだ、武藤さんたちの反応は。
「弥くん、それは一番ガフッ」
「あら、あんたどうしたの?」
いま、物凄い速度で手刀が武藤さんの腹に突っ込まれた。
まさか、武藤さんの嫁さんも探索者なのか?
「えっと、お客様? 言いたいことは解りますけど、私は探索者じゃないんですのよ。ホホホ」
そう言って、他の盾を片付ける。
「これはトレントシールドのミドルサイズです。これを簡単に持てた理由は力だけじゃないはずよ?」
「?」
言っている意味が解らない。
「ダンジョン産のアイテムで造られた、武器や防具は、その武器に見合った強さがないと、重く感じるの。私や主人が持つと、その盾は30㎏近い体感なのよ」
知らなかった……
「このトレントシールドは、軽いうえに素晴らしい防御力があるのよ。ただし耐久性に難があるのですが、補修が安価で簡単なんです」
「補修は予約を入れてくれれば、30分でできてしまう。ただこれは少し高めで210万円もするんだけど、予算は少し超えてしまグフッ!?」
説明を遮るように、武藤さんの腹に嫁さんの手刀がめり込む。
探索者じゃないって本当なのか?
「あんた、ここは推せ推せだろ? お客様、予算を少し超えてしまうかも知れませんが、値段以上の価値がこの盾にはあります。しかもそれを扱う資格までお持ちで。いまなら、主人を付けますわ」
「えっ!?」
盾のおまけに、武藤さんを付けられても困るだけなんだが……
武藤さんも驚いている。
「ほらあんた、お客様は実力のわりに情報交換をなさらないようなので、お茶でも飲んでいろいろ話してあげたら」
あっ『武藤さんを付ける』ってのは『武藤さんから探索者の有用な話を聞ける』って意味か……もう少し解りやすい言葉で言ってほしかった。
トレントシールドの購入を決めて、今は武藤さんと話をしている。
トレントシールドの扱い方を聞いたあと、最近のダンジョン事情を聞いていた。
いま、日本で大きな動きがあると。
「探索者資格の規制緩和法案が通るかもしれないんだ」
「規制って言うと、過去に犯罪を起こした人は探索者資格を取りにくいってやつですよね?」
「ああ、犯罪歴の有無による規制緩和はほとんど変わらないけど、年齢が18歳までに引き下げられて、審査が通らなかった者も、不服申し立てをして再申請すれば、通る場合がある。そのためには、色々な診断テストをするらしいから時間はかかるけどね」
日本は探索者を増やしたいのだろうか。
それとも政治的な意図でもあるのか。
「弥君には関係ない話になるけど、初心者に基本装備品の無料貸出しができるようになったんだよ。これは同業者たちの間で問題になったけど、なんとか話はまとまったんだ。そして、ランク3までのダンジョンモンスター攻略ガイドブックの発刊だ」
「ランク3までのモンスターって、どれくらいいるんですか?」
「今、判っているモンスターは、ランク1が『Gスネーク』『Gバット』『Gモール』ランク2は『コボルト』『化物キノコ』『スライム』ランク3になると『コボルトソルジャー』『大化物キノコ』『ラージスライム』とランク2のモンスターが強くなったタイプの9種類なんだ」
武藤さんは、そのガイドブックを俺に見せてくれた。
モンスターの特徴、攻撃パターン、弱点や攻略方法が詳しく説明されていた。
これが最初にあったのなら、あんな目に遭わずに済んだだろうに。
なんか、物凄く悔しい気がする。
「いままで、日本は探索者を増やしたいけど、積極的に探索者増やそうとする動きがなかった。しかし最近は、確実に探索者を増やして育てようとする意図が目に見えて解るんだよ。一説によると日本は強すぎる民間探索者を輩出したくないらしい。なら何故今ごろ方針を変えたか? 最近は自衛隊だけでなく、警察、消防、市役所の所員ですら実力のある探索者が出てきた。それが理由だと筋が通らないか?」
たしかに、探索者が犯罪に走ったら面倒なこと、この上ないもんな。
抑止力が充実したから、民間の探索者も強くなっても大丈夫だと、国が考えたのかもしれない。
新しい盾を手に入れただけでなく、為になる話も聞けて、軽い足取りで帰路に着いた。
ステータス
ネーム……フロー
レベル……24
ジョブ……ネコ
ヒットポイント……516
ストレングス……69
デクスタリティ……210
マジックポイント……138
スキル……魔法防御3
パッシブスキル……悪食、成長補正2倍、ドロップ確率2倍
コレクション……孤児補正、五つ子補正、五兄弟補正、ネコ補正
ネーム……フェイ
レベル……24
ジョブ……ネコ
ヒットポイント……516
ストレングス……69
デクスタリティ……210
マジックポイント……138
スキル……物理防御3
パッシブスキル……悪食、成長補正2倍、モンスター遭遇率2倍
コレクション……孤児補正、五つ子補正、五兄弟補正、ネコ補正
翠「だいぶ無理をしたせいで、回復ポーションのストックが二個に減ってしまいました。資金もカツカツです」
光「あっ、おれ新しいスキル覚えた」
翠「えっ? それは?」
光「再生ってすきるだ。自分以外にも使えそうだ。何となく解るんだよなぁ」
翠「……ずるいです」
光「……でも、握力勝負は未だにかてないんだよなぁ、悔しい」