【四十四階層】地下6階のモンスター
すいません、感想に対する返信が不定期になります。
質問や応援には、できるだけ答えていきたいです。
地下6階は、大きな洞窟となっていた。
これだけの階段は絶対に下っていない。
感覚的には6メートル前後のはずだ。
なのに、天井は10メートル以上はある。
「いや、ダンジョンがあるだけで不思議なんだ、考えるのはやめよう」
初見のモンスターでは、総じて手痛い思いをしている。
ここは、普段使わないスキルを使ってでも有利に進めたい。
「索敵Ⅱ」
このスキルはモンスターのいる場所が分かるスキルだ。
『索敵Ⅰ』の効果時間は約20分。
『索敵Ⅱ』の効果時間は約40分。
一定の距離にモンスターがいると、数字の付いた点が浮かび上がる。
初めてモンスターの反応を見たとき、数字は『40』と表示されていて、近づくにつれて数字が減っていった。
感覚的に、単位は『メートル』か『ヤード』に近いものだと思う。
そして、今使ったスキルは『60』から表示が始まった。
いた! 洞窟の壁でモンスターの姿は見えないが、右に約30度、2体の反応がある。
慎重に近づいてみる。
反応は真っ直ぐ30の距離にいるはずなのに、モンスターが見当たらない。
そこにあるのは、二本の若木だけだ。
若木と言っても、葉っぱ少ししかついてなく、小型のモンスターコボルトですら隠れるのに難しい大きさの木だ。
だけど二本の木以外に、なにもない洞窟。
もしかしたら、ここの階層のモンスターは木に隠れることができるくらい、超小型のモンスターなのかもしれない。
さらに近づくが、なんの反応もない。
待ち伏せか、それともまだ俺たちに気づいてないのか?
ジリジリと近寄るが反応がない。
この距離になると若木の大きさも分かってきて、2メートル半から3メートルくらいで、木にしては大きくない。
だけど、木の高さに比べて、幹や枝が少し太く見えるのは気のせいだろうか。
それに、葉の付き方に違和感を覚える。
ん? 葉っぱが少し動いた?
やっぱり、超小型モンスターが葉っぱの陰に隠れていたか。
俺は葉っぱ周辺に神経を張り巡らした。
「にゃっ!!」
「ニャッ!!」
「なっ!?」
フローとフェイの声と同時に、武器を持った右腕に衝撃が走った。
俺の右腕を攻撃して、武器を落とさせたのは、木の枝だった。
しまったぁ! 敵は『木の化物』か!
これで、6回連続で痛い目にあってるぞ、こんちくしょう!
「火球LV2」
俺の魔法攻撃は、木の化物に命中して、葉っぱだけが燃え上がる。
幹に命中したのに、何故葉っぱが燃える?
葉っぱが燃え尽きると同時に、モンスターは消滅して魔石となった。
だけど、魔石を拾ってる暇はない。
もう1体のモンスターを見る。
フローとフェイは木の化物と戦っている。
この流れは、俺が加勢しちゃダメなパターンだ。
いつも通り、フローとフェイのスピードを信じて、見ることに徹しよう。
その前に回りを見て、策敵に反応がないか調べた。
木の化物は、3本の大きい枝を動かして戦っている。
残りの小さい枝は動かない。
遅い……
枝が地面に叩きつけている音を聞く限り、威力はありそうだけど、脅威にならない攻撃速度だ。
動く枝にも特徴がある。
3本の枝のうち、2本は葉が生い茂っていて、残りの1本に葉っぱが1枚もない。
そのままじっくりと観察を続ける。
葉の生い茂っている方は防御、葉のない枝は攻撃を担当しているのも判った。
フローとフェイが枝の攻撃避けながら、3倍にして返す。
その度に葉っぱが消えていく。
そう、葉が落ちるんじゃなくて、消えていくんだ。
しかも、片側だけ……
防御のせいではないのは、見て分かる。
フローとフェイは防御の枝をかい潜って、幹本体に攻撃を当てているからだ。
あの葉っぱが消えることには、理由があるはすだ。
そのまま見学していると、1本の枝の葉が完全になくなった。
その時、防御行動をしていた枝が動きを変えて、攻撃に転じた。
危な……いわけないか。
攻撃手段が倍になったところで、フローとフェイにあの枝が当たるとは考えられない。
モンスターの攻撃は単調で、逆にフローとフェイが油断しちゃうんじゃないかと心配してしまうほとだ。
残り枝の葉も、フローとフェイが攻撃する度に減っていく。
葉っぱなくなったら、枝3本の攻撃が始まるのかな?
攻撃が3本になったところで、俺でも対処できそうたが。
全ての葉が落ちた。
「フロー、フェイ、油断す、る……なっ?」
木の化物はそのまま消滅してしまった。
倒した……んだよな。
新鮮な戦いだったけど、魔法を使うコボルトより、楽に感じた。
確かに枝の2本連続攻撃は、あのコボルトの攻撃より、ずっと避けづらいと思うが、本当にこれだけの攻撃方法しかないのか?
周囲をもう一度警戒してから、魔石を拾う。
魔石はGラビットが落とすのと同じ大きさの『E級魔石』だ。
1体あたり、2個の魔石を落とした。
これが1個5000円か……
安いのか高いのか判断がつきにくい。
「フロー、フェイもう少し進んでみよう」
「にゃ」
「ニャ」
足早に進むと、先の方に3本の木が見えてきた。
そのまま近づくと、策敵カウンターが『60』の表示を3つ灯した。
間違いなく、モンスターだ。
3体のモンスターか……
遠距離攻撃を仕掛けたら、どう反応するんだろう?
「フロー、フェイ。様子を見る」
約20メートルの距離から、魔法を撃ってみる。
「火球LV1」
俺の魔法攻撃は命中して、葉っぱが燃え出す。
そして葉っぱが燃えきり、本体まで消滅した。
「えっ?」
一撃だと!? 弱すぎないか?
「もう一回試してみようかな」
「なぁぁ」
「ニナァ」
2人(匹)から、クレームの鳴き声がきた。
ダメらしい。
「じゃ近づいてやっつけるか」
「ニャッ」
「にゃっ」
今回も、フローとフェイで1体のモンスターと戦ってもらう。
俺も武器を構えて、木の化物と対峙する。
このモンスターは殆ど移動しない。
正確には動けるんだが、とにかく遅い。
こいつの移動速度は人がゆっくり歩くよりも遅く感じる。
枝の射程内に入ると、振り下ろし攻撃が来る。
近くでみると、思ったより早く枝が振りおろされていた。
だけど、じっくり見てから避けることが可能だ。
無造作に剣で攻撃する。
防御はなかなか反応が速く、枝に遮られる。
その時葉っぱが、いくらか消えていく。
防御反応が速くても、フットワークを織り交ぜ攻撃すると、幹に命中する。
命中すると枝にある葉っぱがごっそり消える。
これを繰り返すと、葉のある枝が1本消えて、攻撃する枝に変わった。
2本まとめて避けると、攻撃が疎かになるな……
戦いながら、モンスターの動きと自分の動きを考える。
盾で攻撃を受けてみる。
ミシィ……
斜め受けしたのに、盾が軋んでいる。
俺の力より、盾が持たない。
力はなかなかあるな。
遅い攻撃で助かった。
もう少しだけ防具に気を使って戦った。
お陰でちょこっと手こずったけど、2人(匹)で戦っているフローとフェイより早く倒せた。
この後も何体かのモンスターを倒して、モンスターの特徴を掴んだ。
このモンスターは、火魔法または、魔法に弱い。
モンスターの枝に付いている葉っぱが、HPを示している。
葉っぱの落ちる量を見るに、幹に直接攻撃を当てるとダメージが大きい。
そして、ドロップアイテムは『木材』だった。
6体目のトレントを倒した時に、2本のアイテムをドロップした。
目を凝らすと『トレントの木材、加工して使う』となっていた。
このモンスターの名前はトレントなのだろう。
加工の仕方は分からないから、売るしか使い道はないだろう。
結局、地下6階のモンスター『トレント』は最初の一撃貰った以外は、ダメージを受ける相手じゃなかった。
この日、12体のトレントを倒して、木材を4本持ち帰った。
ステータス
ネーム……六角橋 弥
レベル……21
ジョブ……軽戦士
ヒットポイント……634
ストレングス……122
デクスタリティ……143
マジックポイント……160
スキル……回復魔法3、火魔法3、速度上昇2、索敵2
パッシブスキル……早熟、アイテム鑑定、消費MP半減、転職
コレクション……孤児補正、双子補正、四兄弟補正
光「あれ? 森林コンビは?」
烈「お前たち2人の力を見て、一緒には行かねえっててさ。特に一関は探索者になったばかりじゃねぇか。いったい何をした?」
光「んっとぉ、最初は熟練者の世話になった」
烈「熟練者? アイツか……」
光「あとは、毎日仕事帰りにフィットネス感覚で、Gモールと運動」
烈「アホか?」
翠「私は、今の会社を辞める予定です。引き継ぎに半月、有給消化を半月です」
烈「……馬鹿か?」
翠「失礼ですね、探索者になる見込みはありますし、コネで再就職できる職場も二つ用意してあります」
烈「ゆとり世代がっ」
光「俺たち、同い年だろ」