【四十三階層】更なるステージへ
なんか、感想欄では低評価ですが、ブックマークは増えていので、約束通り前倒し投稿します。
今回から少しの間、あとがきに小話を差し入れます。
あれから1ヶ月、鍛えに鍛えた。
鍛えたと言っても筋トレじゃない。
そう、地下6階を目指す区切りとして、1ヶ月間、魔法を使うコボルトと戦いまくった。
翠ちゃん光太郎と別れてから、2日目のダンジョン探索で、第4のスキルを覚えた。
スキルの名前は『索敵』だ。
このスキルを使えば、一定の範囲内にいるモンスターの位置が分かってしまう便利なスキルだが、今のところほぼ使ってない。
『索敵』にMPを使うくらいなら、治癒や火魔法に使った方が良いに決まってる。
もちろん、地下5階までの話で、俺個人の感想だけどな。
今使えるスキルはこれだけある。
『治癒(微)』『治癒(小)』『治癒(中)』
『火球LV1』『火球LV2』『火球LV3』
『高速』『加速』『索敵Ⅰ』『索敵Ⅱ』
と、使える幅が広がった。
ただでさえオーバーキルの『火球LV2』の上位『火球LV3』を覚えた時は驚いた。
試しに使ってみたけど、魔法を使うコボルト2体を直線上で使うと、2体まとめて処理してしまえる威力があった。
ただ、今の俺をもってしても4回しか使えない『MP』をめっちゃ消費するスキルだった。
今朝は、値段が安くなり始めた魚の缶詰を食べて、モンスター肉はお弁当として用意した。
今日も気合い充分だ。
「フロー、フェイ行くぞ、今日は地下6階を目指す!」
「にゃ!」
「ニャ!」
地下2階までの道のりは長い。
途中で、少なくない数のGモールと遭遇する。
先ずは3体のGモールが相手だ。
フローとフェイはGモールを壁際に寄せて、肉球乱舞。
俺はゆっくりと襲ってくるGモールに合わせて、剣で突き刺す。
3体倒すのに5秒もあれば充分だ。
地下2階は弱いタイプのコボルト。
連携攻撃に弱いモンスターだけど、弱点を突くまでもない。
コボルトを圧倒して10秒コースで消滅させて魔石にする。
むしろ、3個の魔石を拾う手間と、同等に感じる。
だって、F級魔石の大きさはパチンコ玉と変わらないのだから。
地下3階は、物理攻撃に強いラージスライム。
扉のある大部屋では、6体のラージスライムと戦うことになったが、俺に魔法を使わせるほどの脅威はもうない。
俺の受け持ちは2体、飛んでくる2本の触手に剣を当て、同時に接近する。
至近距離の触手攻撃も盾は使わず、しっかり避けてから、力いっぱい剣を突き刺す。
2体同時だと、盾を使わされる場面もあるが、フローとフェイがラージスライムを1体倒すまでには、2体を消滅させた。
フローとフェイの反応速度は凄まじいが、一撃の攻撃力は弱く、ラージスライムは苦手なモンスターになる。
地下4階がGラビット、攻撃を避ければ避けるだけパンチが鋭くなるが、1体相手ならば、避けられなくなるほどの攻撃を繰り出す前に倒せてしまう。
それは、フローとフェイも一緒だ。
上を目指すのでなければ、ここで狩りをしていれば余裕で暮らせるだろう。
だが、俺はそれをしない。
魔法を使うコボルトのいる、地下5階に到達した。
こいつの攻撃魔法は厄介だ。
フローとフェイはその魔法すら全て避けてしまう。
今までの攻略法は『闇撃』を『回復(微)』で帳消しにするか、攻撃魔法のタイミングでフローとフェイが惹き付け、そのまま避けるの2択だった。
だけど、今の俺はもうひとつの対処法がある。
扉のある大部屋で、5体のコボルトと向き合う。
さあ、戦闘開始だ!
「加速!」
速度上昇スキルのニ段階目を使う。
これにより、俺の反射速度はフロー、フェイと近いものになる。
「ギギ闇撃LV1」
「ギギ闇撃LV1」
「ギギ闇撃LV1」
「ギギ闇撃LV1」
「ギギ闇撃LV1」
飛び交う、魔法攻撃を避けてコボルトに反撃する。
実は一段階目のスキル『高速』でもギリギリ避けられるのだが、反撃がおろそかになったり、混戦状態になると避けきれなくなってしまう。
MPは消費するが、この魔法コボルトを5体相手に、危なげなく戦える。
これが『軽戦士』の力なのか。
自衛官が強いと言われるのも理解できる。
3対5の戦いは決して楽ではなかったけど、かすり傷1つで魔法コボルトを殲滅させた。
ただ、極小の魔石を集めるのに苦労した。
だって80個もあったからな。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
他の階層と同じパターンで、階段が出現する。
階段をゆっくりと下り、地下6階に降りた。
地下6階最初の部屋は、今までと造りが変わっていた。
「これは……」
地上直前に転移するであろう魔法陣は、いつもと変わらずにあるのだが、左右に2つずつ扉が並んでいた。
正面には奥へと続く通路が見える。
慎重に、扉を開けて中を確認する。
中は何もないただの空間だった。
その部屋に入ると、気温が若干上昇した。
気温が上がったと言っても、快適な温度の範囲内で、今までの場所と違って薄暗い。
足場も、不自然に柔らかく戦うのに不便な作りになっていた。
「どんな目的で作られたんだ?」
「なぁ」
「ニィ」
フローとフェイは部屋の出口に頭を向けて横になった。
この娘たちが警戒を解いた!?
扉を見ているから、完全に警戒を解いたわけじゃないのは理解できるが、ダンジョン内で横になったのは初めてだ。
「あっ」
たった今気づいたんだが、この扉閉めると内側から、閂で扉が開かないようにできる構造になっている。
試してみよう。
ガチリ
おおっ、閂をかけると、扉がしっかりと固定されて完全に塞がっている。
閂は簡単に取り外せて、扉の開け閉めは容易にできる。
「もしかしたら」
俺は4つの扉を開けて、全ての部屋を確認した。
いずれも同じ構造の部屋だった。
まるでリラックスできる、空間を提供しているみたいに。
まさか……
休憩スペースとかじゃないよな?
そんな親切設計があるわけないと思いたいが、仮眠を取るとすると好環境なのは間違いない。
柔らかい床、適度な気温に明るさ、しかも鍵つきの扉。
ダンジョンの存在に何かの意志が働いてるように思えて仕方ない。
まあ、俺ごときがそれ以上考えても、なにも浮かぶ筈もないから、食事休憩にした。
フロー、フェイと3人(匹)でモンスター肉にコボルトスパイスを振りかけて食べる。
こうして食べると冷めても美味しい。
せっかくだから、ここでじっくり休んでから地下6階の探索をするか。
……
…………
………………
しまった、ダンジョン内なのに寝てしまった。
あわてて時計を確認すると、一時間近く寝ていたと分かった。
フローとフェイも眠っていたようで、俺の前で伸びをしている。
意識も覚醒し、体調も問題ないので、閂を外して魔法陣の部屋に戻ってから、唯一扉のない通路へと向かう。
通路の先は、天井が10メートル以上もある、巨大洞窟だった。
ステータス
ネーム……六角橋 弥
レベル……21
ジョブ……軽戦士
ヒットポイント……634
ストレングス……122
デクスタリティ……143
マジックポイント……160
スキル……回復魔法3、火魔法3、速度上昇2、索敵2
パッシブスキル……早熟、アイテム鑑定、消費MP半減、転職
コレクション……孤児補正、双子補正、四兄弟補正
とある駅近ダンジョンで、
「ふう、こっちは倒した」
「なに!?」
「なに!?」
「一関、おまえついこの前探索者になったんだよな?」
「ああ、俺ってスポーツも勉強もちょっとやれば大体理解できるんだよ」
「……で、彼女連れて、天才自慢か?」
「翠ちゃん? ん~~友達かな。女性として考えるとどうも好みじゃないんだよ」
「あぁ、わかる。顔がなぁ……」
「このブス専どもがぁ!!」
注意、この後書きは本編と、時系列が合いませんのであしからず。




