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【隠し階層4】探索者の日常①

10話1度の閑話です。


今回は他の探索者の話です。

 これは、様々な探索者たちの話。



 この5人組はSNSで連絡を取り合い、集まった仲間だった。


 この5人組が集まってからもう2年になる。


 最初は探索者で食べていこうと考えていたが、すでに諦めていて、小遣い稼ぎと健康のために探索者をしていた。


「くっ、やっぱり地下3階はキツいな」

「ああ、だけどここ最近は地下2階にいる探索者が多すぎて、がっつり狩りができない」


 彼らは地下2階のGモールを、週2回のペースで狩りに来ていた。


 彼らの平均パーティ収穫は、1日にF級魔石が100個、モンスター肉を10個を持ち帰る。


 一週間あたりの平均個人収穫は、魔石が40個とモンスター肉が4個となる。


 モンスター肉は、売らずに個人で食べてしまうので、換金額はたった2万円だった。


 Gモールが楽勝で狩れることと、狩りが競合して討伐数が稼げないことから、地下3階のコボルトに手を出してしまった。


 もちろん1体や2体のコボルトなら問題なかったのだが、4体のコボルトが1度に来てしまったため、スキルの全てを使ってピンチを脱出した。


 彼らは。戦闘補助スキルを1日に2回しか使えない。


 それでも、この内2名は怪我を負い、回復の早い探索者の彼らでも、怪我をした者の内1人は全治5日もかかる大怪我だった。


 その男は、普段は営業職のサラリーマンだったので、急に休むわけにはいかなかった。

もちろん、急病を伝えれば休むことはできるが、彼はそれをよしとしなかった。


 仲間意識の強い彼らは、12万円もする回復ポーションをコボルト狩りで稼いだ金額全てで怪我した人に渡した。


 倒したコボルトは10体、魔石30個で1万5000円分にしかならなかった。



 その怪我した探索者は、8万5000円の赤字となった。


「やっぱり、地道にもぐら狩りをしなきゃだめなんだなぁ」

「ああ、俺にもっといいスキルが発現してれば、今頃は……」

「悪かったな、僕のために……」

「気にするな、渡したのは地下3階で戦った分だけだ」

「そうそう、今度の集まりのために、俺は余計に3日の有給をとったんだ。俺の怪我は大したことないから、2日も寝れてば治るだろ。回復薬はお前だけ使え」


 探索者の自己回復力は、常人の数倍だった。

 それでも骨が折れれば、何日も安静にしていなければならない。


 彼らは、翌週もこの場所で会うのだろうか。



 ◇◇◇



 今日このダンジョンに潜る男は、一流の探索者になることを、あきらめた男だ。


 彼はスキルを発現できなかった探索者だ。


 彼のスキルはただ1つ『Gキラー』という『G』の名の付くモンスターに対して有利になるだけのパッシブスキルだ。


 第一のダンジョンの地下1階と2階まで順調に進んでいた彼は、地下3階でつまずき、探索者としての成長限界を早々に感じて、命をかけて戦うのをあきらめた。


 だが、彼はダンジョンで食べていける技術を習得した。


 それは、武器の下取りと初心者のガイドだった。


 アイテムショップで売っている、ただの武器を『ランク3』の武器にして売ると、そこそこの利益が出るのだった。


 彼は週に4回のダンジョン探索で10万円近い収入を得る。


 彼は『ウノ』のダンジョン地下2階までなら、1人でも探索できる。


 物価が上昇した今の日本でも、贅沢さえしなければ、妻と小さな子供と暮らしていける収入を得た。


 なんの取り柄もなかった彼だったが、ストレスもなく働ける今の状況に、不謹慎ながらも感謝していた。


「今日はモンスター肉が多く手に入った。義父さんと義母さんにも、分けてあげよう」


 探索者として、一流になることを諦めた過去を持つ彼は、幸せそうに街中に消えていった。



 ◇

 ◇

 ◇


 ある探索者パーティでの、出来事。


 ちょっとしたアクシデントで仲間が引退し、4人パーティになってしまった。


「なあ、5人目の募集はどうなった?」

「駄目だ、回復スキル持ち限定で探したけど全く反応がなかった」

「ああ、回復スキル持ちは引っ張りだこだ。1回の探索に10万円以上出さないと臨時でも見つからない」

「はぁ、今回も4人で潜るか」


 このパーティは地下10階を狩り場にしていた。

探索者一本で生計を立てられるほどの熟練者パーティだったが、1人抜けたことによりメインの狩り場を地下8階に変更することになった。


 このパーティにとってボーナスモンスターである『巨大化物キノコ』のいる地下10階まで行くには、大型のスライム『ヒュージスライム』が地下9階で待ち構えている。


 この階層を安定して抜けるには、回復スキル持ちまたは、攻撃魔法を惜しみ無く使ってくれる探索者が必須だった。


「Gラビット相手だと、新型のマジックバッグが、なかなか買えないのよねぇ」

「俺は家を買いたいんだ。『探索者』は住宅ローンが下りないからな」

「僕は『スターライト鉱石』が原料の『英雄の剣』が欲しい」

「げっ、剣一本で2000万を超えるアレか? 夢見てんなぁ、おれはウサギちゃんがドロップする肉で充分だ……さてそろそろ行こうぜ」



 ダンジョンの中に、また探索者たちが夢を求めて入っていった。



 ◇

 ◇

 ◇



 この5人組は国が着目するほど稼ぎのあるパーティ。


 彼らは職業もしくはスキルに恵まれた者たちだ。

 彼らはかなり有名なパーティで、内外でも通用する固有の呼び名まで持っていた。

『斥候』『盾』『剣』『魔法』『運び屋』

 の5人組だった。


『斥候』の職業は軽戦士で、移動中は常に先頭を歩いている。


『盾』の職業は重戦士で、防御系の能力に長けていた。

 戦闘では、真っ先に前に出て壁となり、モンスターの隙を作り出す。


『剣』の職業は一般人だが、信じられない成長速度を有し、攻撃系のスキルを得意とすることから、今の地位を獲得した。


『魔法』の職業も一般人だが、二種類の攻撃魔法を扱ううえに、魔法スキルを人一倍使用できるを能力を持っていた。


『運び屋』も職業は一般人だが、資産が一般とはかけ離れていた。

 彼のスキルはたった1つ『治癒』のスキルだけだった。

 だが、彼はダンジョンに潜るのに恐ろしいまでの投資をした。

 超高級とされる大きなマジックバッグを背負い、ヒールポーションとMPを回復させるマジックポーションを大量に買い込み、唯一戦わない後衛として存在した。

 戦わない彼も経験値は貰える。

 いつしか、買い込んだヒールポーションは、滅多に使わないくらいに治癒の使用回数も増えていった。


 


 彼らは二泊三日のダンジョン探索を終えて、地上に戻ったところだ。


「お疲れさん、今日もそこそこ稼げたな」

「ああ、やっぱり第二のダンジョン中層は、ライバルが少ないから、狩り放題だな」

「今回はどのぐらい稼いだかな?」

「んっと……この3日間で、だいたい2000万くらいかな」

「だいぶ稼いだな。5人で割っても400万くらいか。来年の税金が怖い怖い」



 彼らは、激しい戦闘のため定期的に防具の補修や買い換えをして代金を払っているが、実利は1日1人あたり100万円を下回ることはないだろう。


「さすがに、最近はいくら狩りをしても強さが実感できないな」

 探索者用の握力計を握ってぼやく『斥候』。


「俺もだ、あともう少しだけ強くなれば、緊張感なく、この収入が得られるんだがな」

 握力計を握った『盾』が愚痴る。

 どうやら、握力計を1人1つずつ持っているようだ。


「あっ、俺、レベルが上がったわ! ホラッ3日前より数値が少しあがってる」

 握力計の数値を見せびらかす『剣』。


「またかよ!? なんでお前ばかりレベルが上がるんだ? ぜったい隠れて他のダンジョンに行ってるだろ?」

 通称『魔法』が文句を言う。


「ははっ、こいつは暇な日は、俺と呑み歩いているよ。噂の経験値補正でまちがいないだろ。あっ俺もレベルが上がった」

『運び屋』はこの中では一番レベルが低いが、今回の探索で1つレベルが近づいてしまった。



 一部の探索者仲間で有名な彼らだが、模範とするには他の探索者たちでは無理があり、だれもこのパーティ編成を真似することができなかった。



 このパーティは数日間、様々な場所でお金を使って日本の景気に貢献することだろう。








ストーリーが進んでいないので、火曜までにはもう1話投稿します。

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