【四階層】モンスター肉
誤字報告、本当にありがとうございます。
自分の部屋に戻って、するべきことを、メモ用紙に書き出す。
『ダンジョンが出現したことを、役所に届ける』『ダンジョンの事を、もう少し調べる』『怪我の確認をする』『噂のモンスター肉を食べる』
そして、順番を付けた。
①フローとフェイ、ついでに俺も含めた怪我の確認をする。
②ダンジョンの事を、もう少し調べる。
③調べてから、モンスター肉を食べるか決める。
④落ち着いてから、役所に届け出をする。
この順番で動く事にした。
フローとフェイを呼んで、怪我の確認をしたが、咬み跡がくっきりとある程度で、動きに異変はない。
俺の方も、強くさわると痛い程度で、自転車で転倒した時と、同程度のダメージだと思う。
2日ほど様子を見れば、病院に行った方がいいかどうかは、判別出来るだろう。
実のところ、説明が面倒だから病院にはなるべく行きたくない。
ダンジョンの事を、もう少し検索する。
色々な事が書かれていて、信憑性のないことも多く書かれているらしく、全ての情報を鵜呑みにすると、不都合があるかもしれない。
日本にダンジョンが発生した当初、ダンジョンに潜る人々を『冒険者』または『探索者』と言ったが、今は『探索者』が主流らしい。
理由は、ほとんどの人が『探索者』の方がしっくりくるって言っていたからだ。
そう言えば、俺もそうかもしれない。
モンスター肉を調べると、売っているには売っているが、単価が高く、安全性も保証外なため、取り扱っている店は少ない。
分かったことは、通販では販売していなく、特定の店でしか売っていないようだ。
なんと、俺が見つけたであろうモンスター肉の店頭価格は、1㎏あたり時価1万2千円~2万円もするらしい。
しかも、さらに上等なモンスター肉も売っている。
下取りに出しても、たいした事はないだろうが、俄然モンスター肉に対する興味がわいてきた。
あと、ダンジョンでモンスターを倒すとパワーアップするのは間違いないらしいが、説が色々ありすぎて、判断できなかった。
今は、この辺でいいだろう。
台所に行き、昔は高性能だったフライパンに少々油を垂らして、ラップに包まれていた肉の塊を出す。
肉の塊は、概ね直方体で、ラップの結び目が手で持ちやすく工夫されている。
「ダンジョンやモンスターより、この親切設計がファンタジーだよな?」
独り言を言いながら重さを計ると、ほぼ1㎏で、ラップをはずすと何故かラップは消滅してしまった。
さらにモンスター肉は5つにスライスされていて、何の手間もなしに、調理が出来た。
肉を焼いていると、食欲をそそる香りが充満していった。
ゴクリ……
まだ片面焼きなのに、もう食べたくなってきた。
早くひっくり返そう。
「にぃ~」
「ニィ~」
焼いた肉の匂いを嗅ぎ付けたのか、フローとフェイが、猛スピードでやって来て、俺の足に体を擦り付けてくる。
くぅ、カワイイ!!
この時、普通の飼い主ならどうするか分からんが、俺はモンスター肉を分け与える決心をした。
だって、可愛いすぎるんだよな。
名前にしたって、女神の『フローラ』と『フェイト』から頂いたくらい愛してる。
流石に恥ずかしいから、そのまま使うことは出来なかったが、猫の名前の由来は、死んだ両親しか知らない。
「フロー、フェイ、肉が欲しいのか? ちゃんとあげるから待てるな?」
「にゃっ」
「ニャッ」
ようし、とびっきり美味く焼いてやるからな!
フライパンを2つ同時に使って肉を焼く。
焼き終えた肉を切って皿に移す。
フローとフェイには、多目だけど半分の肉 (100g)を取り分けた。
しかし、フローは自分の皿をフェイの前に押して、俺に向かって『にゃあにゃあ』鳴いている。
フェイも『ニャアァァ~~』と鳴いていた。
抗議にも似た鳴き声に、ふと気づく。
まさか、肉をもっとくれといっているのか?
普通なら食べ終わってからだろ?
俺には、フローとフェイの鳴き声がこう聞こえてしまった。
『これは、ふぇいのぶん。 ふろーのにくをちょうだい』
『ソウヨ、フローニモ、コノリョウノニクヲ、ワタシテアゲテ』
そう感じたのだった。
「フロー、フェイ。 まさか1枚丸ごと欲しいのか?」
「にゃ!」
「ニャッ」
明らかに以前より、賢くなってないか?
でも、可愛いからいいか。
改めて、モンスター肉を追加で焼いて、食べる事にした。
「頂きます」
フローとフェイは肉から鼻先1㎝の距離で動かない。
言ってもいないのに待っている。
本当にネコなのかと疑いたくなった。
「フロー、フェイ、食べていいぞ」
俺の合図で肉にかぶりつく。
がっついて食べる2匹を前に、俺も食べる。
「美味い!?」
なんて美味しさだ。
昔にスーパーマーケットで買った、特売高級ステーキとは格が違う!
噛みごたえがあるのに、少し力を入れて噛むとサクッと、噛みきれる。
ゆっくり味わいたいのに、次々と口に肉を運んで飲み込んでしまう。
……
…………
気づいたら、モンスター肉は1枚しか残っていなかった。
「ふう、食べた食べた……しかし、俺はともかく、フロー? フェイ? その体の何処に肉を1枚丸ごとたいらげる胃袋があるんだ?」
「にゃぁ、ぁぁ、ぁぁ」
「フニャァ~~~~」
身体を伸ばしてグッタリしている。
食べ過ぎだろ。
しかし、役所に行く前にもう少し、モンスター肉について調べたくなったな。
いや、嘘でした。
明日は金曜日だから、役所に行くのは来週にしようと思う。
それまでに、巨大モグラがモンスター肉をドロップする確率を調べようかと思う。
モンスター肉の美味しさに負けて、明日もダンジョン探索をする事にした。
ステータス
ネーム……六角橋 弥
レベル……1
ジョブ……一般人
ヒットポイント……60
ストレングス……21
デクスタリティ……20
マジックポイント……45
スキル……回復魔法0、火魔法0
パッシヴスキル……早熟、アイテム鑑定、消費MP半減、転職
コレクション……孤児補正、双子補正、四兄弟補正