【三十五階層】駅近ダンジョン3階
1話前の、翠と光太郎のステータスを変更しました。
今回のぶんと間違えて書いてしまいましたので。
駅近くにあるファミレスで、恒例の食事会をしている。
毎回思うんだけど、こいつら暇だよな。
「弥さん、私は暇なんかではなく、ダンジョン探索を優先して予定を決めています」
「えっ? 翠ちゃん、弥のやつそんなこと考えていたのかよ。失礼だな、俺はたまたま暇だっただけだ。それにもう少し強くなるまで恋愛禁止にしてるしな」
翠ちゃんの、読心術がおっかない件。
「えっと、俺はともかく、みんな毎週予定がないのかとちょっと思っただけなんだ」
それから、地下2階のモンスターが問題にならないと解ったから、地下3階に行くかどうかで、相談しあった。
「地下3階のモンスターって、どんなのが出るの?」
すると、翠ちゃんは知っているらしく、答えてくれた。
「地下3階のモンスターはスライムです」
スライムか、今の俺なら脅威にはならないが、翠ちゃんと光太郎には危険すぎる。
俺はそのことを説明して、地下3階に行くのを止めようとしたけど、結局最後に地下3階を覗いて、魔法陣で帰る流れになった。
もちろん条件を1つ付けた。
◆
◆
◆
……翌日……
「じゃあ、お題通りにやってくれ」
「まじでやるのか……でもスキルは使っていいんだよな?」
「ああ、翠ちゃんやめるなら今だぞ」
「いえ、そろそろこれくらいはやっておかないと感じていたので」
「よし、まずGモールを探すか」
光太郎と翠ちゃんに出したお題は『5匹のGモールを見かけたら1体だけ、俺にふって4体のGモールを2人で倒す』だ。
見たかぎり、5体のGモールを倒すだけならできそうだったから、難易度をちょっとだけ上げてみた。
4体のGモールを相手に余裕が出なければ、今言ったことを実行するのは難しい。
運良く2回目の遭遇で、5体のGモールを見つけた。
「いくぜ! 限界突破Ⅰ」
結果、5体とも光太郎たちがGモールを倒してしまう。
「しまったぁ!」
アホだ……アホがここにいる。
これが学生時代、俺より全てを上回っていた男の、本当の姿だ。
なお、俺が出したお題は、2回目のチャレンジで達成された。
翠ちゃんが2体減らして、3体になってから、俺にGモールを突進させたんだ。
そんな方法があったのか。
俺と光太郎が唖然とする。
光太郎よ、俺もそちら側の人間だったぞ。
地下2階に降りて、Gバットをたっぷり狩った後、見学のために地下3階に降りた。
出口に帰る魔法陣を確認したら、奥まで行かないように近場をうろうろして、スライムの登場を待つ。
なかなかスライムが出てこなく、だいぶ焦れたりしたけど、やっと2体のスライムを見つけた。
先ずは、スライムの触手攻撃を見てもらうため、ゆっくりと戦うことにした。
フローとフェイのサポートなしだと、安全に戦えるのは2体までだ。
MPが満タンなら、5体や6体まとめて来ても問題ないが。
少し近づくとスライムに、奇妙な違和感を覚えた。
おや、少し小さい?
いつもと違うダンジョンなので、遠近感が狂ったかな?
スライムの射程まで近づくと、お約束の触手攻撃が飛んできた。
遅い……触手攻撃の遅さに、一瞬戸惑ったけど、気持ちを立て直す時間の余裕すらあった。
2本の触手を払うように切りつけ、突進する。
そして2撃目の射程に入った瞬間、盾を腹部に構える。
だけど2撃目の攻撃は来なかった。
そして、次に来た攻撃は頭部を狙っていた。
攻撃パターンが違う?
触手攻撃が遅いのは、フェイントか何かか?
俺は警戒しながらスライムと戦い続けた。
ほどなくして、スライムを消滅させたけど、手こずってしまった。
ここのスライムが今の戦い方で固定ならば、次回はもっと楽に倒せる。
「少し時間をかけたけど、どうだったか? 因みにスライムは速度より、パワーとタフネスが脅威だぞ」
俺の戦いに、光太郎が感想を言ってくる。
「初撃はなんとか避けられそうだな」
「私は盾で防ぐのが精一杯かと。あとモンスターの名前がスライムでモンスターランクは2『物理攻撃に強く魔法攻撃に弱い。触手で攻撃してくる』でした。」
「あの弥がGモールの5倍も時間がかかってんだ。俺には地下3階はまだ早えな」
「はい、弥さんが戦い難そうにしていました。そんな姿を見るのは初めてです。私たちが地下3階で戦うには、もう少し鍛えてからの方が良いかも知れません」
光太郎、翠ちゃん、解ってくれたか。
3階の魔法陣から、地上に戻ってきた。
「さあ、恒例のレベル測定だぁ」
「光太、恥ずかしいから声を小さく。後、誰もいない所でな」
「私も同じ意見です」
恥ずかしい奴め。
「だあっ!! 戦闘力114だ。やった、もうあの森林コンビを抜いたぜ! やったぁ」
光太郎の歓びようは凄かった。
よっぽど悔しい思いをしたのだろう。
「光太郎さんの成長速度は異常です……あっ」
翠ちゃんは、そんなことを言った矢先に握力で『122.5㎏』の数値を出していた。
光太郎は、速さが翠ちゃんよりもかなり上だ。
そして握力計で計ると、力は翠ちゃんの方があると証明された。
こんなにも成長にばらつきがあるのだろうか。
「弥さん、光太郎さん今夜は個室のある場所で食べませんか? 弥さんの疑問が少し分かります」
俺一番の疑問は、その読心術をどこで習得したのか、なんだけどな。
因みに、光太郎はまたしても翠ちゃんに負けて、膝をついて落ち込んでいた。
個室の居酒屋っぽい所で、御飯を軽く食べて落ち着いたら翠ちゃんが、ダンジョンで感じた疑問に答えてくれた。
「弥さんが、私と光太郎さんの成長の違いに疑問に思ってる件ですが」
「えっ? 弥、そんなこと言ってたのか?」
言ってません。
ちょっと思っただけです。
「その理由の半分は解りました。私の職業はおそらく『農耕士』です」
「農耕士?」
「農耕士?」
「はい。ある日、モンスターでない物が鑑定できてしまいました」
あの日のスライムゼリーのことか。
「しかし、ほかのアイテムは鑑定できませんでした。探索者用の店で確認したので間違いないです。そしてスライムゼリーを肥料として育てた作物は、収穫時期が判るようになりました。そのことから今まで判明している職業と照らし合わせると、私の職業が『農耕士』だと判断したのです」
なるほど、そういうことか。
「ですが、光太郎さんの職業は不明ですね。知人に聞いたところ『軽戦士』だと最初に覚えるスキルは固定らしいのです」
そう、光太郎が使えるスキルは『限界突破』。ものすごい能力値の上昇と引き換えに、使ったあとは、少しの時間弱体化する。
今までの経験だと、下階に行く階段手前の部屋では、モンスターが多くいるから、そんな時に使うスキルだと思う。
不思議なことにスキルの燃費は悪すぎる。
光太郎や翠ちゃんは一日一回までしか使えないからな。
結局、光太郎の職業は不明のままだった。
「あっ、そうだ! 今度の土曜日用事があるんだわ。悪いけど次回は日曜日だけってのはどうかな?」
申し訳なさそうにしてるが、逆に安心した。
「分かりました」
「ああ、分かった」
解散して家に着く直前、スマホからメールを知らせる振動がした。
発信者は翠ちゃんで、メールを開くと『次の土曜日に、モンスター肉の新メニューの試食をしてもらえませんか?』との文面だった。
俺は『期待してます』と返信して、軽い足取りで家に着いた。
フローとフェイが集めた魔石とモンスター肉【並】をしまい、日課になってるモンスター肉【上】を食べて、1日が終わった。
ステータス
ネーム……一関 光太郎
レベル……9
ジョブ……一般人
ヒットポイント……180
ストレングス……18
デクスタリティ……27
マジックポイント……36
スキル……限界突破1、光魔法0、再生0
パッシブスキル……EXP補正2倍
コレクション……なし
ステータス
ネーム……七瀬 翠
レベル……7
ジョブ……農耕士
ヒットポイント……175
ストレングス……21
デクスタリティ……21
マジックポイント……35
スキル……攻撃力上昇1
パッシブスキル……農業、モンスター鑑定、EXP補正1.2倍
コレクション……なし




