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【三十一階層】翠スキル開眼

 駅の改札口前に翠ちゃんが、立っていた。


 明らかに誰かを待っている様子。


 もしかしたらと思ったけど、自惚れないようにしないと。


 きっと違う用事で待ち合わせしているんだと、俺自身に言い聞かせる。


 改札口で話しかけようと近づくと、話しかける前に気づかれた。


「おはようございます弥さん」


「おはよう、翠ちゃん。こんな場所でどうしたの?」



 翠ちゃんの瞳が一瞬『キッ!』となった気がした。


 いや、普通の顔だった……気のせいみたいだ。


「弥さんを待っていました(やっぱり鈍いんですね)。モンスター肉のお礼と報告がありまして」


 お礼は先週聞いたし、報告にしたってメールでもいいし、今夜も行くであろう探索者レストランで聞くことができるのになんでだろう?


「ふぅ……先週も均等にモンスター肉を分けてもらってありがとうございます。他でパーティを組んでいたら、こんなことはあり得ませんでした。活躍もしていなかったのが原因ですが」



「気にしない、気にしない 」


 俺はもう、モンスター肉(上)しか食べてないから(並)は、売るしか使い道がないしね。


 翠ちゃんと電車に乗り、そこで話の続きをする。


「モンスター肉はびっくりするくらい、美味しいですよね」


「うんうん、調味料が塩だけで充分なのが凄いよね。元の素材を上回る調味料が見つからないんだよ」


 すると、翠ちゃんの瞳孔が開いた気がした。


「弥さん、実は弥さんのお陰で手に入れたモンスター肉を使って、凄く美味しい料理ができたんです。……あの、も、もしよかったら……し、試食してみませんか?」


 ここで、この話をするってことは、今思いついたんじゃない。


 これが『感謝』か『好意』か判らないけど、勇気を出したってことは解る。

 なら、喜んでご馳走になろう。



「えっ、いいの? 塩より美味しいって気になるな。俺は基本的に自由人だから『今から行きます』以外大丈夫だよ。ちなみに光太なんかは予告もなしに来たけどな」


「くすっ、では2日後の月曜日の、お昼前は大丈夫でしょうか?」


「月曜日……そうか世間では三連休か、翠ちゃんは休みなんだ、良い会社に勤めてるなあ」


 ダンジョンが出現してからしばらくして、労働に関する法規制の法令が少し変わったんだ。


 確か、ダンジョン不況を乗り切るために10年間限定で、残業時間の上限が引き上げられたって話だったか。

 だめだ、詳しくおぼえてない。


 俺は普通に働いていたから、関係なかったがな。


「単純なデスクワークなので、暦通りに休めるんです。ですがモンスター肉はもう、た、食べてしまったので、今日もよろしくお願いしますね」


 この笑顔は狡い、たくさんの男共が騙されるほど威力がある。




 光太郎と合流して、ダンジョンに潜る。


 先ずは走って、Gモールを探す。

 見つけたら速攻で始末して、残り1体になったら光太郎、翠ちゃんに戦わせる。


 もう、2人がかりなら楽勝で倒せるけど、1対1だとまだまだ心配な感じがする。




 滅茶苦茶走ったから、この日は60体以上倒して1日が終わった。


 ダンジョンから帰ったあと、光太郎が握力計で力を計っていたけど、変化がないらしく沈んでいた?


「光太郎さん、一般の探索者は半年から1年かけて地下3階に行けるくらいの成長速度なんです。光太郎さんは1ヶ月も経ってません」


「そうか、そうだよな」


 納得したのかしてないのか、微妙な顔をしていたけど、帰りぎわに『明日はレベルが上がってるかな』とか言っていたから、翠ちゃんの慰めは無駄に終わったと感じた。



 日曜日も、翠ちゃんは改札口で俺を待っていた。


 家が近いのだろうか?


 ダンジョンに潜ると、いくつかの探索者パーティと会うが、あの森林コンビのいるパーティとは出会(でくわ)さなかった。



 この日最初に見つけたGモールに、光太郎が止めを刺したとき……


「あっ」


 翠ちゃんの驚いた声がした。


「翠ちゃんどうした?」


「弥さん、光太郎さん、私レベルが上がったみたいです。私もスキルが使えるようになりました」



「翠ちゃん、どんなスキル?」

「翠ちゃん、なんてスキル?」


 光太郎とタイミングが重なってしまった。


「攻撃力上昇のスキルみたいです。次のモンスターが来たら、私も1人で戦ってみたいです」



 そんなわけで、Gモールを単独にしたら翠ちゃん1人に戦ってもらうことになった。



「強腕、行きます」


 光太郎と翠ちゃんの戦いを見守る。


 Gモールの突進に合わせて、武器を振り切りつける。


 威力も充分にあるのか、突進の方向が完全に逸れて、別方向に走り抜ける。


 翠ちゃんはそれを繰り返すだけで、Gモールを倒した。


「弥さん、次もお願いします」


 翠ちゃんの『おかわり』のリクエストで、走りながらGモールを探す。


 今回は中々見つからないけど、やっと5体のGモールと遭遇した。

 

 俺が4体のGモールを相手にして、1体だけスルーさせる。

 単純なGモールの誘導は楽すぎる。


 翠ちゃんは武器をいつもより短めに持ち替えて、超接近戦をしかけてた。



「やるなぁ、翠ちゃん」


 光太郎の言う通りだ。

 Gモールと相性のいい戦い方をやめ、乱戦に備えた戦いを試している。


 楽勝とまではいかないが、余裕をもってGモールを倒した。




 その後は2体残しで、光太郎と翠ちゃんに戦ってもらったが、2人とも1回軽いダメージを受けただけで倒すことができた。



 この調子で、モンスターを狩り続けた。






 今、ロッカーで着替え終えて、翠ちゃんと合流したところだ。



「それじゃあ、恒例のレベルアップ測定器で、俺の力を計りますか」


 翠ちゃんをチラリと見る光太郎。


 この前負けたことを未だ気にしてるようだ。


 光太郎は、意外にちっちゃい男だった。


「はぁぁぁぁぁ!!」


 どっかのバトルアニメの真似をして、気合いをいれている。


「どうだ! 100だ! やった追い抜いた。見たか弥、これが俺の力だ」


 人が少ないとは言え、恥ずかしいから叫ぶのは止めてほしい。


 光太郎が喜んでるところに悪いけど、レベルアップは翠ちゃんもしているんだ。


 なにせ、スキルを開眼したのだから。


「私もやってみました……」


 翠ちゃんの握力は103,5㎏を表示していた。


「ま、また負けた!? な、なぜぇ?」





 落ち込んだ光太郎を慰めるのに時間が掛かった。


 だけどな光太郎、同窓会のときの森林コンビに追い付いたんだぞ。

 2人の成長速度には驚かされる。



 探索者レストランでは、モンスター肉の美味しさを光太郎が熱く語っていた。



 昨日今日で手に入れたモンスター肉を山分けすると『探索者がこんなにおいしいとは』と語っていたので、翠ちゃんに注意されていた。



「もし、今の光太郎さんが5人いても、手に入れるモンスター肉は、10個前後でしょう。分けると2個になります。それに弥さんが使う回復スキルのお陰で安定した狩りができるんですから」


「翠ちゃん、回復スキルってそれほどチートなのか?」


 真顔になった光太郎が、そんな質問をする。

 俺も気になるな。


「当たり前です。スキルのないパーティは、決して大怪我をしてはならないので、慎重にダンジョンを探索します。それでも怪我しますから、怪我が治るまでダンジョンには潜れません。回復ポーションを使うにしても、一番安い回復ポーションだって、16万円もします。最初はその金額を稼ぐのだって大変なんですよ」


 翠ちゃんに説明されると分かりやすい。


 もしかして、俺は大当りのスキルを手にしたのかもしれない。


 さすがの光太郎も明日は別の用事があるらしく、今度の土日の約束をして解散した。



 翠ちゃんは唇だけを動かして帰っていった。


 俺は唇を読めるような人間じゃないが『またあした』ってことは判別できた。



 明日はダンジョンを休憩して、掃除でもするか。













 ステータス


 ネーム……一関 光太郎

 レベル……7

 ジョブ……一般人

 ヒットポイント……140

 ストレングス……14

 デクスタリティ……21

 マジックポイント……28

 スキル……限界突破1、光魔法0、再生0

 パッシブスキル……EXP補正2倍

 コレクション……なし




 ステータス


 ネーム……七瀬 翠

 レベル……5

 ジョブ……農耕士

 ヒットポイント……125

 ストレングス……15

 デクスタリティ……15

 マジックポイント……25

 スキル……攻撃力上昇1

 パッシブスキル……農業、モンスター鑑定、EXP補正1.2倍

 コレクション……なし


必要ない予備知識コーナー


必要経験値

1→1

2→20

3→70

4→150

5→270

6→430

7→630

8→890

推定獲得経験値

翠、約340×1.2=約408

光太郎、約340×2=約680

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