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【二十八階層】駅近ダンジョン3回目

30話連投ミッション、完了です。


 駅近ダンジョンに出かけるまえに、フローとフェイが『にゃーにゃー』『ニャーニャー』うるさかったので、どうしたのか聞いてみると、元風呂場であるダンジョンの入口に連れていかれた。


 今日は行けないと伝えても、納得してない雰囲気だ。


 時間をかけて、コミュニケーションをとっていたら、なんとなくフローとフェイの言いたいことが解ってきた。


「もしかして、俺がいない間は暇だから、ダンジョンに潜りたいってことか?」


「にゃっ」

「ニャッ」


 どうやらそのようだ。


 俺より強い娘たちだから、大丈夫だとは思うけど、狩りに行くのは地下1階だけにしてもらった。




 ◆

 ◆

 ◆



 フローとフェイに家ダンジョンをまかせて、駅近ダンジョン前の広場で、翠ちゃん、光太郎と待ち合わせをしていた。


 早く来たから俺が一番乗り……じゃなかった、翠ちゃんがすでに待っていた。


「翠ちゃん早いね、待ったかな」


「いえ、今来たところです」


 なんかデートの待ち合わせみたいだな。


 しかし、気を引き締め直して、教官モードにならなければ。


「待たせたな。さあ、狩りまくるぞ」


 光太郎がやってきた。




 ロッカーで着替えていると光太郎が、どや顔で話しかけてきた。


「弥、今日は良いものを持ってきたんだ」


 と俺に見せたのは握力計。

 なるほど、握力の数値でレベルアップを確認しようというのか。


 なんで今まで思い付かなかった?


「ってわけで、翠ちゃんと合流したら測ってみようぜ。今まで我慢して測らなかったんだからな」



 ◆

 ◆

 ◆



 翠ちゃんと合流した時に、この事を話したら、珍しく恐い微笑み方をしていた。

「面白い考えですね、私も興味あります。ボソッ……特に弥さんの数値が」



 最後の方は聞き取れなかった。


 他の探索者の迷惑にならないように、少しだけ移動してから、光太郎が握力計を握りしめる。


「どうだった? 光太」


「……たったの65だ……」


 握力の平均値って、男性でも50弱だったよな。


「いや、強い方じゃないのか?」


「だって、昔、大学のサークルで測ったときは、62だったぜ? まるで成長してないじゃん俺……」


 たしかに。

 でも、光太郎は元から力が強かったのか。


「私もやってみます。……んっ………………わっ、うそ」


 翠ちゃんが驚いているので、光太郎とデジタルメーターを覗き込む。


 握力計は『80』と表示していた。


「なぜだぁ! 翠ちゃんにメッチャ負けてんじゃん。超ショック!!」


「翠ちゃん、あれからダンジョンに出掛けた?」


「いえ、先週末以来です。でも私、強くなってました」


 嬉しそうな翠ちゃんと反対に沈んでる光太郎。


 なぜこうなったのだろう、2人の違いが解らない。


「次は弥さんですね。」

「そうだ、弥もやれ。っていうかスゴく見たいぞ」


「わかった」


 光太郎から受け取ったのは、ホームセンターで見かけたことがあるような握力計だ。


 思いきり握りしめると、数値は『180㎏』を表示していた。


「180㎏か……すげぇな」

「もう少しで、人類の最高記録に到達しますね。探索者以外ですが……」

「おまわりさぁん、ここに危険人物がいまぁす!」




 誰も聞いてないからいいものを……


 気を取り直してダンジョンに潜ることにした。




 Gモールと2人を戦わせていると、動きが先週よりいい気がする。


 力負けはするものの、動きにしっかり対処できているから、怪我をすることがない。


 時間はかかるけど、2対1なら安心できる戦いぶりになってきた。



 Gモールを狩り続けていたら、光太郎に変化が出てきた。


「あれ? なんかGモールの動きが悪くなってないか?」



 いや、動きに変化が出たのは光太郎の方だ。


 Gモールの突進攻撃に、対応出来きてなお余裕を感じる。


「ぐわぁっ!!」


 調子に乗った光太郎は、Gモールの突進を正面から受け止めて吹き飛ぶ。

 ……バカだ。


 たが、耐久力も上がったせいか、深刻なダメージにはならない。


 この後も、モンスターと遭遇する度に1体残して始末する。


 これを繰り返していたら、翠ちゃんに疲れが見てきた。


「よし、終わりにしよう」


「えっ? まだ出来るぜ」

「はい、まだやれます」


 やる気はあるようだけど、明日もあるからここは止める。


「いや、動きが少しだけ悪くなった。明日もあるし今日は終わりにしよう。」







 ロッカーに戻って着替えていると、別の探索者グループを見かけた。


 しかし、そのうち3人が知った顔だった。


 あいつらは、光太郎が探索者になりたいと決意させた原因の、森林コンビとホニャララ烈だ。


 あいつらも、この駅近ダンジョンを狩り場にしているのか。


 睨む光太郎に対して、ばつが悪そうにしている森林コンビ、見ているとリーダーと思われる人物を気にしているみたいだ。


「うん? 君たち知り合いなのかい? それにしても、様子がおかしいね。探索者同士揉め事はご法度だよ?」


 リーダー格の人がいち早く様子を察して、

 光太郎と森林コンビの間に立つ。



「でも、こいつのせいで光太が、う○ち漏らしたんだけど」


 俺は森林コンビに指を差す。



「漏らしてねぇよ!」


「マジか……」

「だから漏らしてねぇって!!」


 俺の言葉に『アチャァ』って顔になる、森林コンビの片割れ。


 ホテルのトイレは平気で塞ぐのに、なんで『漏らした』でそんな顔になる?

 自分に置き換えたかな?



『まずいな』と言わんばかりの森林コンビを見て、リーダーっぽい人が俺に話しかける。


「君たち、何かあったみたいだけど、同じ探索者同士、問題は起こさないでくれないか? 僕に出来る範囲でなにか手伝うことはないか?」



 光太郎は数秒沈黙したあと、リーダーをみて話し出した。


「今の森の力を知りたい。俺も探索者になったんだ。森! 俺はお前を抜いて希美ちゃんにデートを申し込む」


 お前、しばらく探索者に専念するんじゃ……

 まあ、パーティを組む区切りとしてはちょうど良いか。



「ボソボソ……希美ってあの……」

「そうっす、あの希美っす」

「まじか、光太郎もそっち側だったのか」

「……みたいっすね」



 烈と林が、ヒソヒソ話をしている最中、リーダーは光太郎に向かっていた。



「お安いご用、と言いたいところだが、ステータス看破のない場合、探索者の強さの目安は2つしかない。1つはスキルレベル、もう1つは握力計だ。森くん」



 ふてくされてる様子の森が、渡された握力計を受けとる。


「僕らのグループでは、この探索者用の握力測定器を使うんだ」


「探索者用?」


 初めて聞く単語だぞ。


「なんだ初心者かよ。探索者用の握力計も知らないのか?」


 握力計は武藤さんの店にもあったけど『探索者用』だとは知らなかった。


 森に指摘されて、ムカっとしたけど事実だから仕方ない。


「はぁぁ!!」


 森が握力計を握りしめ、気合いを入れている。


「おっ……やったぁ、強くなった……見たか、これが今のオレの力だ」


 見せてくれた握力計の数値は『105』と表示されてあった。


 たしか、同窓会でのバカ騒ぎじゃ『100』とか言ってたよな。

 強くなってやがる。



「……ま、まあ、オレが大先輩ってことは判っただろう? これからよろしくな()()()



 森林コンビ片割れの林が、俺に耳打ちする。

「すまん、森のやつ例の希美って女にフラれたから、荒れてんだ。でもまさか女の好みで森と被るやつがいたなんて……」


 林に対して同窓会の時とは違った印象をうけた。

 リーダーがいるせいなのかな。


「なに? どういうことだ?」


「希美ってのは超ポッチャリの汚ギャルみたいなやつ」


 あいつか! まじか……

 いたな、あのばか騒ぎの中に、一人だけ異色のせいぶ……いや女性が。

 なんか、だんだんバカらしくなってきた。




 あいつらのリーダーにおじぎをして『105……105』とぶつぶつ呟く光太郎を引っ張って移動させる。

 そのあと、光太郎に耳打ちしする。


「光太、明日の1日は俺に時間をくれ。作戦がある」


 早いこと光太郎を卒業させよう。

 そして通常運転に戻ろう。





 翠ちゃんと合流して、ざっくりと事情を話した。


「解りました。それで明日はどのような狩りをするんですか弥さん」


「本当はやりたくなかった手段なんだけど、光太がスキルを覚えるまで、俺がデカもぐらを乱獲する」


 フローとフェイが気になるから、ごはんを食べたら、2人を置いて先に帰ることにした。


「家の用事があるから、先に帰るな。また明日」



 ◆

 ◆

 ◆


「ただいま」


 誰もいない玄関で、帰りの合図をすると、フローとフェイがやってきた。


「にゃあ」

「ニャア」


「フロー、フェイ、怪我はないか?」


 言われた通り、地下1階だけ潜っていたら、怪我をする訳がないのだけど、一応心配なんだ。


 フローとフェイは無傷だったんだが、やたらと引っ張られたり押されたりしたから、ダンジョンの入り口まで、行ってみた。


 そこにはかなりの量の魔石とモンスター肉が集められていた。


 この娘ら、マジでネコなのか?

 あんな小さい魔石をどうやって集めたんだ?


「なぁ~~ごろごろごろ」

「ナァ~~ゴロゴロゴロ」


 甘えてきたので、たくさん誉めて誉めて撫でてやった。




 フローとフェイとは寝るときもだいたい一緒で、左右揃って俺に尻を向けて寝る。


 この娘らは、俺に何かを要求する時以外はだいたい俺に尻を向けているんだ。


 たまには可愛い顔を見せておくれ。







 ~~~時間は少しだけ戻り、弥のいない駅近ダンジョン付近のファミリーレストラン~~~



「明日はどのようにして『乱獲』するんでしょうか? 気になります」


「そうなんだよな。いくら強くても、ギリギリ常識の範囲内なんだよ。だから想像もつかない」


 光太郎は、リセットしてない『180㎏』と表示していた握力計をテーブルの真ん中に置く。


「あ、光太郎さん、この握力計の表示、右端に『E』という文字がありますけど……」


 翠の言葉に、光太郎は説明書を取り出して、E表記の意味を探す。



「あったあった。なになに、このデジタル握力計の最大測定値は180㎏までで、それ以上の力がかかると『(エラー)』と表示されます……だって」


「じゃあ、弥さんの力は……」

「ああ、180㎏以上だってことだ。俺の親友はとんでもない奴だったぞ」


 翠と光太郎は、カップに入っているホットコーヒーが冷めるまで、佇んでいた。














 ステータス


 ネーム……一関 光太郎

 レベル……4

 ジョブ……一般人

 ヒットポイント……80

 ストレングス……8

 デクスタリティ……12

 マジックポイント……16

 スキル……限界突破0、光魔法0、再生0

 パッシブスキル……EXP補正2倍

 コレクション……なし




 ステータス


 ネーム……七瀬 翠

 レベル……3

 ジョブ……農耕士

 ヒットポイント……75

 ストレングス……9

 デクスタリティ……9

 マジックポイント……15

 スキル……攻撃力上昇0

 パッシブスキル……農業、モンスター鑑定、EXP補正1.2倍

 コレクション……なし




次回は、火曜日か水曜日の予定です。

ただ今、【41話】の下書きをしています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後の佇んでいた。の所ですが、言いたいことはわかりますが、 1、しばらく立ち止まっている。じっとその場所にいる。「花の下に―・む」 2 そのあたりをうろつく。 っという事で基本的に立っている…
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