【二十三階層】駅近ダンジョンに入る
あとのことは考えず、30日間連続投稿します。
光太郎との待ち合わせ場所には、何故か七瀬さんもいた。
こっちは、フローとフェイがいないから気合いを入れてやってきてるのに、イチャイチャデートでしたか、俺が探索者じゃなかったら殴ってるぞ?
「弥、こっちこっち」
手招きする光太郎の足元には、探索者が武器をしまっておくウェポンケースが2つもある。
なにっ、2つだと?
「おはようございます、六角橋さん」
七瀬さんがにこやかに挨拶をしてくる。
七瀬さんが美人なだけに、よけい頭に来るな。
「光太、彼女同伴で来るとはダンジョンを舐めてるのか?」
嫌みの一言をぶちまけてやった。
「六角橋さん、残念ですが一関君の彼女じゃありません。残念ですが」
光太郎の代わりに答えた七瀬さん、なんか急に彼女の機嫌が悪くなった。
なんでだ?
まだ、付き合っていないにしても、機嫌が悪くなる理由ってなんだ?
「弥、翠ちゃんには、ダンジョン探索の手伝いで来てもらったんだ」
「は? なんでだ?」
なんか今日の俺、疑問ばっかりだな。
「弥、ここのダンジョンは2人じゃはいれないだろ? なんで知らないんだ?」
初耳だよ、人数制限があったのか。
「おかしいです、六角橋さんは探索者で、スキルも使える腕前なのに、ダンジョンの入り方を知らないなんておかしいです」
七瀬さんが俺を睨んでる。
怖い、なんか怖い。
モンスターと戦ってから、怖いって感情は、感じにくくなっていたのに。
「うっ……こ、ここのダンジョンは初めてで、他のところに行ってたからだよ」
七瀬さんがジッと俺を見る。
嘘は言ってないぞ。
「そうですか、ここのダンジョンは人数制限が、3人からとなっていますが、推奨は4人又は5人です。理由は解りますね?」
ああ、大人数でパーティーを組むと、経験を得にくくなるって噂だったな。
細かい理由は解らないけど、探索者なら常識的な話だ。
「さすがにそれは知ってるよ」
「解りました、では行きましょう」
何故か七瀬さんが仕切って、光太郎の手を掴んで大きな建物の中に入っていく。
建物中は、天井の高い空洞みたいな感じで、遊園地みたいなゲートが設置してある。
受付と思われる年輩の人に、七瀬さんが『3人です』と言って、探索者カードを提示する。
俺と光太郎も、続いて探索者カードを提示すると、何かを操作した後『四番のゲートね』と言って次の探索者の対応をする。
『四』と書かれたゲートの横にはベルトコンベアーがあって、慣れた動きで七瀬さんは武器ケースをベルトコンベアの上に置いて、ゲートを進む。
俺と光太郎も、真似をしてゲートを通り抜けた。
まるで、俺と光太郎がダンジョン初心者で、七瀬さんが熟練者みたいになっている。
「ここが、ロッカールームです。使い方は見れば分かると思いますので、着替えてきてください」
言われるがまま、ロッカールームに行くと、数人の探索者が黙々と着替えている。
既に着替え終わって武器チェックをしていたり、雑談しているグループもいた。
「弥、なんだかお前よりも、翠ちゃんの方が頼りになるんだが」
「うるさい」
そんなことくらい、分かってるわ。
実は七瀬さんは熟練の探索者で、同窓会の日、転びそうになった七瀬さんを助けたのは、余計な事だったりしたのか?
着替えた光太郎の姿は、ファンタジー系のマンガに出てくる初心者装備を思わせる姿だった。
革の鎧に木製の盾、短い西洋剣に、安物を思わせる帽子。
光太郎に失礼だが、指を差して笑ってやった。
「フッ、バカにしてるけど、驚くなよ。この革の鎧に見える鎧は、表面は革に似た衝撃吸収素材で出来ていて、内側には高硬度カーボンが編み込まれていて、通気性を良くするインナー付きなんだぞ! 木の盾に見えるこのシールドは、表面はまんま木の盾だけど内側は高硬度カーボンを贅沢に使用した逸品なんだ! クドクドクドクド…………」
すごい説明をされた。
恐ろしいことに、防具に関しては俺より高価だった。
武器もスーパーストーンとか、切れ味抜群とか自慢してたし、いくら使ったのか怖くて逆に聞けなかった。
着替えが終わって、七瀬さんを待っていると、直ぐに七瀬さんがやってきた。
七瀬さんはレオタードみたいなインナーにライダースーツを強靭にしたような装備だった。
頭は、自転車用のヘルメットと見た目は変わらず、ピンク色で可愛くなってる。
俺の視線にいち早く気づいた七瀬さんは、
「へ、ヘルメットまで予算がまわらなかったの!」
と、可愛く言い訳をしていた。
ヘルメットは大事だと思うのは俺だけだろうか?
あっ、俺って頭の防具は持ってないや。
七瀬さんの武器は、名称はしらないが『短い薙刀』と言えばイメージしやすいだろう。
ダンジョンの入り口は、門が開いたままの状態であり、その大きさは縦横5メートルくらいありそうだった。
「で、でけぇ」
つい漏らした俺の言葉に、ため息をつく感じで七瀬さんが、ダンジョンでの行動を説明する。
「ふぅ……どうやら知識だけなら私が一番詳しそうなので、説明しますね。ここのダンジョンの地下1階は『Gモール』が出現します。出現する数は1匹から5匹。一関君はダンジョンが初めてで、私も弱いです。なのでGモールが1匹のところを狙って倒していきましょう」
えっ、七瀬さんそんなに弱いの? しかも、モグラの数を選べたりするのか?
「翠ちゃん、うまく1匹のところって狙えるものなの?」
「はい、Gモールは目が悪いので、相手の数に都合が悪ければ回避して別の道を進みます」
目が悪いだと、知らなかった……
「六角橋さん、頼りにしていいんですよね?」
俺の考えが筒抜けしてるようで、ジットリとした瞳で、こっちを見る七瀬さん。
なんか、俺の扱いがどんどん悪くなっているような。
光太郎がゴクリと息を飲む中、ダンジョンの入口に入り階段を下る。
階段を下ると、大きな広間が見えてきた。
広間に入るとそこから、4つの通路が分かれている。
七瀬さんは地図を見て、一番左に行きましょうと言って案内している。
だけど七瀬さんは、かなり緊張している様子だ。
先ほど七瀬さんが言ったとおり、知識はあるけどレベルはかなり低いと、思われる。
でも、いくらレベルが低くても、大モグラ……Gモールって名前だったか、そのGモール相手にそんなに緊張するかな。
「七瀬さん、俺が先頭を歩くよ。見つけたら止まればいいんだね?」
「は、はい。お願いします」
前を見ていたから七瀬さんの表情は見れなかった。
俺も気を引き締めてすすんだからだ。
……
…………
「いた、大モグ、Gモールが2体、こっちを向いてゆっくり進んでる」
「2匹ですか、最初から2匹は少し厳しいですね。仕方ありません、引き返しましょう」
「七瀬さん待って、俺が1体始末して、もう1体も少しダメージを与えて戦いやすいようにするよ」
「えっ、あっ、六角橋さん、まっ……」
光太郎は七瀬さんより緊張しているのか、一言も発していない。
Gモールくらい、俺にとってただの障害物だと思ってもらう方が、いいと判断した。
ある程度近づくと、Gモールも俺に気づいて突進してきた。
2体同時に向かってくるGモールに、片方は剣で刺し、もう片方は盾で弾く。
盾で弾かれ転がった隙を利用して、残った相手を深々と刺しこんだ。
転がったGモールがこっちに向かってくる。
既に1体は光の粒子になって消えている。
Gモールを素早く切りつけ、光太郎がいる方向に
思いきり蹴って合図する。
「光太!」
そこで、思いもしない事が起きた。
思いきり蹴ったGモールは吹き飛んで壁にぶつかった瞬間、光の粒子になって消えてしまい、小さな魔石がコロコロ転がって、光太郎と七瀬さんの前で止まる。
「えっ!?」
「えっ!?」
「えっ?」
俺たち3人は少しの間、立ち尽くしてしまった。
ステータス
ネーム……一関 光太郎
レベル……ーー
ジョブ……ーー
ヒットポイント……30
ストレングス……6
デクスタリティ……5
マジックポイント……14
スキル……ーー
パッシブスキル……ーー
コレクション……ーー
ステータス
ネーム……七瀬 翠
レベル……ーー
ジョブ……ーー
ヒットポイント……19
ストレングス……2
デクスタリティ……4
マジックポイント……13
スキル……ーー
パッシブスキル……ーー
コレクション……ーー