【二十一階層】地下4階へ
注:同窓会の回での、森林コンビの犯罪を、タチの悪い嫌がらせ程度に改稿しました。
理由は多少の批判と、作品上この二人を抹殺するのをためらったからです。
(補足、抹殺=探索者剥奪)
俺は、光太郎が探索者になるためのサポートをすることにした。
ただ、そのサポーターが弱いんじゃ話にならないから、あの最上烈が潜っていたと言う、地下4階まで普通に戦えるようになってから、光太郎をサポートしたい。
地下1階を駆け足で進み、地下2階3階は、早歩きで進む。
地下4階への階段はスライムと戦っている時に見当を付けていた。
そう、扉を見つけていた。
先日扉を覗いたら、まだ経験したことのないスライムの数、7体のスライムがいた。
その時理解した『扉のある部屋』『モンスターの数』そこが下階に行ける部屋だろうと。
そして、今もあの大部屋には7体のスライムがぶよぶよしていた。
少し考えたあと、フローとフェイに作戦を伝えた。
「俺が1体、魔法で始末する。そのあと2体ずつ引き付けられるか?」
「にゃ」
「ニャ」
さあ7体相手にどこまで巧く戦えるかな。
「火球LV1」
俺の攻撃で1体のスライムが消滅した直後、左右に分かれて突入するフローとフェイ。
そして、ピッタリ2体ずつ引き付けて部屋の端へと誘導している。
引き付けられなかった残りの2体はゆっくりと俺の方に向かってきた。
いつもの間合いに入るとそれぞれの触手が顔目掛けて襲ってくる。
いかにスピードのある触手でも、来るタイミングと場所が解っていれば、2本同時に攻撃してきても、簡単に避けられる。
その余裕は、触手に攻撃しつつ、スライムに突っ込む事が可能になった。
スライムのもう1つの間合いに入る。
ここは大きく避けると、後の攻撃が雑になるから、盾を使い2本同時に受け止める。
盾を斜めにして威力を逃がしているので、力負けすることもない。
スライムの耐久力は高いが、こっちの攻撃力も上がっている。
もはやスライム2体では、俺にいい一撃を与えることは出来ない。
たまに掠めるくらいだ。
2体のスライムを倒し終わると同時に、フローとフェイが1体のスライムを倒す。
物凄いスピードで翻弄するけど、スライムとの相性は悪いみたいだ。
ここで加勢すると、怒られるのは解ってるから、武器を構えたまま待つ。
武器の出番はなく、フローとフェイはスライムを倒した。
ゴゴゴゴゴゴ……
想像通り階段が出現したので、地下4階へ進む階段を降りる。
最初の部屋には今まで通り、魔法陣が敷かれていて、自宅に直ぐ帰れるようになっている。
また、いつもの部屋と廊下で構成された迷路が待ち構えてると思うと、少々うんざりしてしまう。
最初の扉を開けると、そこは『大草原』だった。
「……は?」
地下4階のはずなのに、降り立ってみれば『大草原』、しかも明るい。
不思議なことに、太陽もないのに影は真下に出来るし、上空は一面の青空が広がってる。
馬鹿げた景色に圧倒されたが、時が経つにつれ落ち着いていった。
まずは周囲を警戒しながら、歩いて進んでいこう。
少し歩いて分かったが、俺が出てきた場所はかなり目立つので、見える範囲内で戻れば迷子にはならない。
草原と言っても、所々樹木の密集したポイントがいくつものある。
こんな場所なのに、生物の1匹もいないのかな? と疑問に思ったら、遠くで3匹のウサギを見つけた。
ウサギは俺たちに警戒することもなく、近づいても反応しない。
いや、ウサギも俺たちに気づいたようで、逆にこっちに近づいてくる。
あれ? お、おい待てよ……
近づいて判ったんだが、ウサギのサイズがおかしいことに気付いた。
はっきり言って大型犬よりも若干大きい気がする。
大きなウサギと4メートル近くの距離まで接近したら、ウサギは急に立ち上がった。
その姿は、ウサギの形をしたカンガルーと言っていいだろう。
その、アホらしい姿に呆気にとられていたら、急に踏み込んできてパンチを繰り出してきた。
速い! 咄嗟にそのパンチを避けたが、スライムの触手攻撃よりも、速く感じた。
「ぐっ」
大ウサギは1つ目のパンチが避けられても、反対の手で攻撃してきて、顔面に命中する。
手痛いダメージを受けたが、初めて戦ったコボルトほどの衝撃はない。
冷静に対処すれば、なんとかなる。
フローとフェイも大ウサギと戦闘に入ったようだが、見学してる余裕はない。
ただ、視界の端に映った姿は、物凄いスピードで大ウサギと戦っていたことだ。
よし、俺は目の前の獲物に集中しよう。
大ウサギの攻撃は速いが、反応出来ないって事はない。
大ウサギのストレートパンチを辛うじて避け、攻撃をすると、剣で切りつけたと同時に、パンチが飛んでくる。
くぅぅ、いってぇ。
避けることに専念しても、5回目くらいの攻撃で避けられなくて、被弾する。
気のせいかも知れないけど、少しずつパンチが速くなっていた気がした。
まずは、こいつの耐久力を見るために魔法を使うことにした。
「火球LV1」
ウサギは俺の魔法1発で消滅した。
魔法の威力、ハンパねぇ!
落ちた魔石は、一旦放置してフローとフェイとの戦いを見る。
フローとフェイはウサギの攻撃を圧倒的な速度差で避けて翻弄している。
しばらく、様子を見ていると、ウサギの攻撃速度が徐々に上がっている。
間違いない、俺の時も感じた。
ウサギの攻撃は躱されると、次の攻撃速度が増している。
要するに、戦いが長引けばどんどん不利になるのか。
「ニャッ!」
「にゃっ!」
フローとフェイがついに攻撃を受けた。
加勢に行こうとしたが、ウサギの変化に気付いた。
攻撃速度が元に戻ってる。
もしかして、1回攻撃を当てると、攻撃速度がリセットされるのか?
またしても、ウサギの攻撃が徐々に速くなってきた。
だけど、フローとフェイに声をかける前に大ウサギは消滅した。
そうだ魔石を探さないと。
フローとフェイの戦いに集中したから、魔石は見失って見つからないかも知れない。
しかし、魔石は意外に早く見つかった。
何故なら魔石のサイズが大きかったからだ。
直径にすると2㎝を少し超えるくらいだろうか、少し大きめのあめ玉と同じくらいだ。
フローとフェイは『ここに魔石があるよ』と言わんばかりの態度をとっている。
魔石を手に取り、目を凝らすと『E級魔石』と表示されていた。
E級魔石の買い取り価格も気になるが、大ウサギの弱点を暴くのが先だ。
そのまま、上に戻るための建物を目印にしてぐるぐる回るように歩いてみた。
次は2体の大ウサギと遭遇した。
「フローとフェイ、色々ためして大ウサギの弱点を見つけよう」
「ニャ」
「にゃ」
「ニャッ!」
フェイがピンクの壁を自分の周りに展開した。
防御スキルを使って試すようだ。
ならば俺は、ウサギの攻撃を避けずに、出来るだけ盾を使って防ぐようにして戦ってみた。
攻撃する時に、何度か失敗したけど、剣で大ウサギを倒すことが出来た。
フローとフェイもすでに倒し終えて、俺を呼んでいる。
様子がおかしい事に気付いた俺は、急いでそっちに向かった。
「どうした? あっ」
フローとフェイの前には、見慣れた形のモンスター肉が4つもドロップしていた。
1つあたり1㎏だから、4㎏か……
モンスターの強さから考えると、モンスター肉4つじゃ割りに合わないと思うぞ。
そう思ったが考えを改めて、モンスター肉をじっと見つめる。
『モンスター肉【上】美味しい』
『食べると僅かだが、経験値が手に入る』
やっぱりだ!
これはもう1つ上のランクのモンスター肉だ。
たしか今までのモンスター肉を鑑定すると、
『モンスター肉【並】少し美味しい』
『食べるとほんの僅かだが、経験値が手に入る』
だったはずだ。
ここの大ウサギを定期的に狩れば、アイテムショップで買った、あの美味すぎる肉を定期的に食べられる。
俺は、大ウサギをモンスター肉がドロップするまで戦い続け、持ちきれなくなるまで戦った。
直ぐに持ちきれなくなったから、逃げるように自宅に戻った。
ステータス
ネーム……六角橋 弥
レベル……15
ジョブ……一般人
ヒットポイント……334
ストレングス……47
デクスタリティ……62
マジックポイント……94
スキル……回復魔法2、火魔法2
パッシブスキル……早熟、アイテム鑑定、消費MP半減、転職
コレクション……孤児補正、双子補正、四兄弟補正
作者の描写不足が多いので補足。
【21話現在】弥は、光太郎のことを悪友兼親友との認識をしていますが、ダンジョンの探索者仲間だとは思っていません。
この後は、ネタバレになりますので、ご容赦ください。