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【二階層】案内人と探索者

2話目です。


 気がつくと、綺麗な水色の殺風景な部屋の真ん中で立っていた。


「ここは、どこだ?」


『ようこそ、始まりと終わりの場所へ』


 声の方を振り向くと、正体不明の人と思われる者がいた。


 顔や姿を見ているのに、その瞬間に記憶から消えていくので、表現できない。


「あなたは、誰だ?」


『ボクのことかな? ボクはただの案内人だよ、気にすることはない。 この部屋は【悠久の迷宮】初めてモンスターを倒した者に開かれる【覚醒の間】だよ』


「えっ? ということは、あの巨大モグラを倒せていたのか」


『そういうことだね。 でも倒したのは(ジャイアント)モールって名称だけどね。 君は迷宮の探索者資格を得たんだ』


「探索者?」


『そう! 探索者は、モンスターを倒す度にレベルが上がり、強くなっていくんだ。 先ずは君のジョブを見よう……面倒くさいから、一緒に見ようか。 はい!』


 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 ネーム……六角橋 弥

 ジョブ……一般人

 レベル……1

 HP…………26+34

 STR……4+17

 DEX……3+17

 INT……5+17

 MID……6+17

 MP…………11+34

 補正…………孤児(みなしご)補正、双子補正、四兄弟補正

 スキル……なし

 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


『ボクは何十億と探索者を見てるけど、この地球って世界じゃ、ほとんどの人間が《一般人》って職業なんだよね。 不思議な世界だなぁ。でも、補正項目が孤児、双子、四兄弟って、1つ1つは微々たる物だけど、集まると凄いよ、能力値だけで見ると、5倍から6倍くらい強くなったね』


 俺と死んだ両親は、血が繋がってないのは知ってたけど、双子で四兄弟って初めて聞いたな。


『なんのスキルも得られない【一般人】じゃ、迷宮を攻略するなんて難しいよね。 でも安心してっ、ここはスキルを与える部屋なんだから』


 すると、たぶん男だと思うけど、その者の隣に回転してるルーレットが突然現れた。


『君はこれから、その手に持っているダーツを投げて得られるスキルの回数を選ぶんだ』


 いつの間にか、手にはダーツが握られている。


『さぁ、投げて』


 言われるままに、ダーツを投げる。

 ダーツはうまく的に刺さり、ルーレットは減速していく。


『そろそろ判るけど、スキルの取得数は1つから4つだよ。 4つのスキルがあれば迷宮探索も楽になるね。 まあ、確率は1割だけど。 あっ止まった……おお、君のスキル取得数は【3】だ。おめでとう!』


 的の面積配分をみてると、4割、3割、2割、1割ってところかな。

 俺は2割の面積の場所にあたったから、まぁラッキーな方だな。

 するとルーレットが回り始めた。


『さあ、今度はスキルの種類を選んでもらうよ、さあダーツを投げて。1投目、開始!』



 ダーツをルーレットに向かって投げた。

 刺さったのは、スキルとスキルを分けているラインだった。


『はぁ? そんなのありぃ? ぴったりラインのド真ん中だよ。 だけど判定はどうかな? えっ!? いいの? ……』


 なんだ? どうなった?


『んっと、1回目は【回復魔法】と【早熟】のスキルを手にしました、こんなこともあるんだね。君は1回目のスキル取得で、偶然にも2つのスキルを手にしたんだよ』


「回復魔法と早熟か便利そうだな……使い方は?」


『【回復魔法】はスキルが使用できるレベルに達したら自然と覚えられるよ。【早熟】はMPを使用しないパッシブスキルだよ。 スキルをレベル10で覚えられるなら、レベル8で覚えることができるんだ。 つまり君は、レベルが8になったら【回復魔法LV2】が使えるようになるんだ。ただし、1回目の習得するスキルは同じ5レベルで覚えることができる』


 ふうん、あんまり便利じゃないんだな。


『じゃ、2投目をよろしく』


 言われた通り、2回目のダーツを投げた。

 ……あれっ? なんかまたライン上に刺さったような……


『ええ~!? 今回はギリギリでずれているよね……えっ、ライン上ぴったり……はぁ、2回目は【火魔法】と【アイテム鑑定】を手にしました』


 回復魔法に攻撃魔法なんて、バランスが良いな。


『火魔法も、使い方は自然と覚えられるね。 ただし、セカンドスキルは、もっとレベルを上げないと取得できないから。 それよりアイテム鑑定もパッシブスキルだからね。 次もライン上なんてことはないだろうけど、頑張って』


 俺は最後のダーツを投げた。


 トンッ。

 放ったダーツは、またもライン上に刺さった。


『ちょっと、なにこれ? ……3回目はね【消費MP半減】【転職】が手に入ったよ……なにこれ』


「説明してくれるかな?」


『【消費MP半減】はスキルを使う時に消費されるMPが半分になるんだ。これもパッシブスキルでね。 【転職】はえっと……たしか一定のレベルに達すると転職できるんだ。 レベルは1からやり直しだけど能力値は変わらないはずだよ?』


「『たしか』とか『はず』とか自信ないの?」


『だって【転職】なんてスキルは、ボクの担当の探索者たちで、3人くらいしかいなかった超レアスキルだよ。 ……まあ、1回で2つもスキルを手にするなんてのは初めてだけど。 とりあえずおめでとう、最後に大事なことを言うけど、迷宮に戻ると、ここの部屋での記憶はなくなってしまうからね。それじゃ頑張って』


「えっ? なくなるって……待って、俺、兄弟のことが知りたいのに」


 しかし部屋の視界は、ボヤけていき、見えなくなってしまった。


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

『珍しい探索者だった。でもこのルーレットどうなってるんだ?………………あっ! …………そうか、ルーレットに幸運のスキルが掛かっていたのか。 しかしこの部屋に影響を及ぼすことが可能なほどのスキルってなんだろうな。ボクで調べられるかなぁ? あっ、いつものセリフを言い忘れていたよ』


【終わりかけたこの世界に、幸あらんことを】


『幸せになるかどうかは、探索者たちの頑張り次第だけどね』

  △△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△



 あっ、俺は気を失っていたのか。

 ざらついた2枚の舌が、痛気持ちいい。

 …………えっ?


「にぃ」

「ニャ」


 目を開けて起き上がると、そこには無事? と思われるフローとフェイの姿があった。

 どうやら、気を失った俺のことを心配していたみたいだ。


 人の心配なんかしてる場合じゃないだろ?


「フロー、お前身体を噛みちぎられてなかったか? 見せてみな」


「にゃ~」

 傷口を、見せるような姿勢をとるフロー。

 本当に頭が良いなって、傷があるにはあるが……この程度?


「フェイは大丈夫なのか? 」


「ニャァァ」

 ひょいと、俺の肩に器用に登るフェイ。


 えっ? 肩に!? 噛みちぎられたはずの、腕と肩は?

 その部分はピンク色の肉が盛り上がっていた。


「痛っ」


 強く触ると痛いが、普通に触れてもなんともない。

 まるで治りかけみたいだ。


 折れたはずの骨も、痛みはあるが、折れている気がしない。

 

 どうなってんだ? 考えられるのは、あの巨大モグラを倒したことしかないが……ん? これは。


 足下に、紫色したパチンコ玉くらいの大きさの、綺麗な石を見つけた。


 もしかしてこれが、魔石ってやつなのか?

 と、目を凝らすと『F級魔石』と表示されている。


 えっ、なにこれ? 魔石って表示がされている物なの?






「にぃ~」

「ニャ~」


 はっ、しばらく考え事をしていた。

 こんな危険なところで、危ないな。


「フロー、フェイ、帰ろう」


 そして役所に報告しなきゃな。


 魔石をズボンのポケットに入れて、来た道を戻る。


「ニャニャッ!」

 フェイ、フローが、急に止まって、俺に警戒を促すって、なんでフェイ、フローの言いたいことが解るんだ?


 とにかく、ゆっくり進むと、家に戻る階段がある手前の部屋に、巨大モグラが3匹もいた。


 今度こそ死ぬ……そう思った。


 巨大モグラは俺たちを見て、猛然と襲いかかってきた。


 あれっ? こいつ遅い? ラッキーだ、早くこいつを倒してフローとフェイを助けなきゃ。


 突進してきた巨大モグラを、スコップで叩きつける。


 以前は大きいタイヤを叩いたような感触だったが、今回はバスケットボールを叩いたくらいの感触しかない。


 巨大モグラは思いの外、吹き飛んだ。

 これなら、勝機がある!


 フローを助けようとしたら、 そのフローは猫パンチ1つで、巨大モグラを張り倒していた。


 なん、だと?

 フェイを見るが、フェイも相手を張り倒した後のようで、第2撃を与えていた。


 強すぎる? それとも巨大モグラが弱すぎなのか。


 俺に向かってきた、巨大モグラを再び叩きつける。


 あっスコップが折れた。

 すかさず、ハサミを取り出して、追い討ちをかける。


 フローとフェイをチラリと見ると、完全に巨大モグラを相手に無双してる。


 どう考えても、巨大モグラが弱いってより、フローとフェイが強くなったと考えた方がしっくり来るけど、そんな劇的に強くなった理由がわからない。


 それは、俺にも言える。

 巨大モグラは、ハサミで10回程度突き刺したあたりで、光の粒子になって消えた。


 代わりに、小さな魔石を落とした。


 魔石を拾っていると、横から別の魔石が転がってきた。


「にゃっ」

 察するに、フェイが猫パンチで、こっちまで投げてくれたみたいだ。

 頭が良すぎないか?


「ン~~」

 フローは、小刻みに魔石を転がしながら、何かを咥えている。


 どう見ても、ラップに包まれた肉にしか見えない。

 これが、高価で有名なモンスター肉なのか?


 じっくり見ると、またしても名前が表示された。


『モンスター肉【並】少し美味しい』

『食べると、ほんの僅かだが経験値が手に入る』


 驚いた、どうやら俺は鑑定のスキルを、身に付けたみたいだ。


 優秀すぎるフローとフェイを労おうとしたら、既にあごを差し出していた。


 前から頭は良かったけど、ここまでできる娘だったか?


 フローを左手で、フェイを右手であごを撫でてやる。


 くぅ、めっちゃ、可愛い。


 しばらくスキンシップを堪能しあってから、階段を登り、ダンジョンを脱出した。


 これが俺の、大金持ちになるきっかけだった。

 そう、周囲に流されるような人生を歩んできた俺に、刺激的な冒険の人生が今から始まる。






ステータス


ネーム……六角橋 弥

レベル……1

ジョブ……一般人

ヒットポイント……60

ストレングス……21

デクスタリティ……20

マジックポイント……45

スキル……回復魔法0、火魔法0

パッシヴスキル……早熟、アイテム鑑定、消費MP半減、転職

コレクション……孤児補正、双子補正、四兄弟補正

七日間連続投稿します。

7分の2

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