【十八階層】同窓会の知らせ
あらすじにタグ見たいなのを追加します。
タイトルの(仮)は、作者がタイトルの名前に満足していないからです。
地下3階を狩り場にしてから幾日か経ち、2体のスライムを1人で処理できるまで、多くのモンスターを倒した。
スライムだけで、おそらく200体は倒しているだろうか。
集めた魔石で計算しようと考えてみたけど、地下3階に行く途中で、Gモールやコボルトも倒しているから、スライムの数を逆算出来ない。
以前植えた、二十日大根について解ったことがある。
スライムゼリーを肥料にして育てると、概ね2倍の速度で成長する。
大きさは、通常の肥料で育てた物よりは、若干大きい程度で、味も普通に美味しいくらいだった。
言い換えると、2倍の速度で上手に育てられると思っていい。
今は、別のプランターでも他の野菜を育てている。
一汗かいて、ゆっくり落ち着いていると、来客を告げるチャイムが鳴る。
珍しいなこんな昼前に。
玄関の扉を開けると、懐かしい顔がそこにあった。
「よっ、久しぶりだな、弥」
「ああ光太か、どうしたんだ突然?」
突然やってきたこいつの名前は『一関 光太郎』。高校時代の同級生だ。
こいつは、たまに飲みに行ったり適当に遊んだりする、悪友に近い存在だ。
この光太郎は、顔もいいし頭もいい、スポーツも万能なのに、どこか残念なやつなんだ。
初めは、普通に友達してたんだが、打ち解けてから俺にたいする態度が雑になった。
完璧超人の光太郎を残念なやつだと思ってるのは、俺と他数名くらいだ。
まったく、俺と悪友でいるんだか。
「ああ、先週彼女と別れたから、遊びに来た。半年で親が2人も亡くなるなんて、大変だったな。これ、お土産」
残念な光太郎だが、おれが大事なことではふざけない。
まあ、こんな奴だから、俺でも友達なんだろうな。
少し世間話をした後、唐突にある話を切り出された。
「なぁ弥、仕事が忙しいのは解るんだけど、来週の金曜日にさ、同窓会に行かないか?」
同窓会か……そういえば、そんな往復ハガキが来ていたな。
たしか、金曜日の19時集合なんて、話にならないから、欠席で返信したんだよな。
「ああ、あれなら欠席のハガキを出したぞ」
「知ってる。184人の卒業生にハガキを送って、出席の返事が来たのは、88人。だけど出席予定の内、10人くらいが突然不参加になったんだ。先生の人数も含めて、既に100名で○○ホテルを予約したんだけど、先生方も何人かダメみたいなんだってさ。と言うわけで、幹事に頼まれてさ、弥が来てくれれば出席者3人追加って訳だ」
「で、光太のメリットは?」
「いやぁ、同窓会の幹事の1人がさぁ、凄く可愛くなっててさ。それが、彼女と別れた日の翌日でな、俺は運命を感じたぜ」
俺は、こいつの野望に巻き込まれたのか。
「まったく、こいつは……いいよ。来週の金曜だな? ハガキの内容はもう忘れたから、詳しい場所だけ教えてくれ」
「なっ!? いいのか? ダメもとで言ったんだが……おっと気が変わらないうちに一筆書いてもらおう。 ところで即断なんかして会社はいいのか?」
自分で誘っておいて、今さら気にするか。
「ああ、あのグレーゾーンの会社は辞めてきた」
「なにっ! 辞めただって!? いや突っ込む所はそこじゃねぇ。年間休日65日の会社はグレーじゃなくて、ブラックだろブラック!」
「そうかぁ? 労働時間も1日12時間くらいだし、残業代も40時間以降の分は、特別手当てって名目で三割増しの手当てが貰える。社長の人格さえまともだったら、もっと働いてたぞ?」
「いや、その雇用形態を実行している時点で、まともじゃないからな。いや、そんな話題じゃなくて、今働いてる所は大丈夫なんだよな?」
「ああ、自由気ままに働いてるさ」
この家の下にあるダンジョンでな。
今日は日曜日だから、明日からじっくりダンジョンに潜って、同窓会当日にまとめて換金してから行こう。
光太郎は、両親の仏壇に挨拶して帰っていった。
そして、4日間じっくりスライムと戦い続けた。
結果、俺は寝坊してしまった。
さすがにダンジョンに潜りすぎて、疲労が溜まっていたようだ。
やっぱり、サラリーマン時代の12時間とは、疲れ方が違う。
余裕が出来たとは言え、一応命を失う危険が伴うからな。
正確に数えてないけど、集めた魔石は、この4日間で130万円は超える予想だ。
早速今から出かけて、前から貯めてある魔石と一緒に換金しよう。
◇
◇
◇
いやぁ、ビックリした。
武藤さんのところで、魔石の換金を4000個依頼したら、驚かれた驚かれた。
確かに、前回換金してから、約10日くらいしか経ってないからな。
まあ、こんなに稼げるのも、フローとフェイが居るからなんだけどな。
もっと下の階層に降りるようになったら、換金場所をもう1つ用意してもいいのかな。
最寄りの駅から、電車に乗ること30分、目的の駅に到着した。
ここから、同窓会会場のある○○ホテルまで徒歩6分だ。
だが、俺は光太郎と待ち合わせしている。
待ち合わせ場所に向かって長い階段を上る。
ふと、1人の女性が目に入った。
ピシッとしたスーツを上品に着こなし、綺麗な姿勢で階段を降りてくる。
容姿は、スーツや姿勢よりも美しく見える。
いや、俺好みって訳じゃなく、誰がみても綺麗だと思うぞ。
その美しい女性の動きが、あまりにも綺麗だったので、その先の動きまで予想出来てしまいそうだった。
予想したその先に、ころがっているガラス玉を発見した。
見た感じ、ラムネに入っていたガラス玉だと思う。
このまま歩けば、女性の右足がガラス玉を踏むなんてことはないよな。
女性は、ヒールの靴を履いている。
もしガラス玉を踏んで、下手に転ぶと階段から転げ落ちてしまうだろう。
俺の位置からなら、落ちたところを抱き止める事は出来そうだけど、何故か抵抗があるな。
それなら……
女性の動きに注目すると、女性のヒール部分が吸い込まれるようにガラス玉と接触した。
「あっ!」
奇跡とも言える偶然を目の当たりにした。
見事に女性は前方に躓いた。
俺と女性まで10段以上ある階段を、2歩でたどり着き、バタバタとしていた手を、優しく掴み、支えてあげる。
「えっ? ええっ!?」
「危なかったですね。大丈夫?」
「えっ? はい、大丈夫です。でも、だって……」
女性はどうしてか、かなり動揺している。
待ち合わせはもう少し先だから、時間に余裕があるけど、面倒事は避けたい。
もう少し要領のいい奴なら、うまく会話を繋げて、連絡先でも聞くんだろうけど。
俺には無理だ。
「大丈夫なら、良かった。それじゃ」
「あっ、ありがとうございます。あっそうじゃなくて、あの……」
女性は、階段の下と自分の位置をキョロキョロしながら、狼狽えてる。
俺はそのまま、待ち合わせ場所に向かった。
◇
◇
◇
何故か、時間より早く着いたはずなのに、遅刻している件。
「いやぁ、ごめんごめん。電車を乗り間違えちまった」
謝っているのは、光太郎が連れてきた同級生のうちの1人。
もう1人と光太郎合わせて、3人でこの間抜け野郎を待っていた。
よりによって、道が解らないから待ってくれと言われて、待つはめになった。
「まあまあ、源太のドジは昔っからだし、会場入りは5分遅れだから良いじゃないか」
そうだな、まあ大した問題じゃないか……
現地に着くと、そこは高級ホテルその物だった。
この時、ふと思った。
同窓会の幹事は、金持ちか見栄っ張りのどちらかだろうと。
ステータス
ネーム……六角橋 弥
レベル……15
ジョブ……一般人
ヒットポイント……334
ストレングス……47
デクスタリティ……62
マジックポイント……94
スキル……回復魔法2、火魔法2
パッシブスキル……早熟、アイテム鑑定、消費MP半減、転職
コレクション……孤児補正、双子補正、四兄弟補正