【十五階層】地下3階のモンスター
投稿時間の秘密。
深夜……夜更かし成功
朝……寝落ち確定
探索者となって、生計を立てると決めた翌朝。
地下3階に、足を踏み入れる決意をした。
最短距離で1階層を駆け抜け、2階層は少々警戒しながら早歩きをした。
今の説明で解ると思うが、Gモールは既に敵ではない。
コボルトも楽勝なのだが、油断していい相手ではないから、通路を走る事はしない。
3階層に降りる手前の部屋は、コボルトが6体もいたが、攻略法が分かっていたため、そんなに苦労はしなかった。
フローが多数のコボルトを引き付けて、1か2体のコボルトを引き寄せつつ、フェイと俺で始末する。
たったこれだけで、コボルト攻略の難易度が下がった。
コボルトを全滅させると、下階に降りる階段が出現する。
俺とフロー、フェイは3階層に到達した。
3階層は1階層や2階層と違い、綺麗な廊下のような作りだった。
床を確認すると、うっすらと反射するくらい艶があるのに、摩擦があり、ツルツルと滑ったりはしなさそうだ。
変わらない事は、ここにも1階層の出入口に行けるであろう魔法陣があるって事だ。
天井や壁自体が光源なのか、眩しくないのに明るいし、見通しもいい。
そのまま慎重に進んでみる。
最初の小部屋にたどり着くと、3体のブヨブヨとした軟体モンスターを見つけた。
スライムだ。
大きさは、相撲を取る軽量力士の胴体くらいで、容量で例えると100リットル程度だろうか。
どことなく鈍そうなモンスターだが、先ずは接近しないで攻撃しよう。
「火球LV1」
勢い良く飛んだ火の玉は、スライムに命中して、あっさりと消滅してしまった。
そして、極少サイズの魔石を6つドロップした。
「フロー、フェイ。慎重にやるぞ」
だが一撃でスライムを倒した事で『慎重』という言葉は、上辺の物になっていた。
ゆっくりと進むスライムに、攻撃姿勢を保ったまま、慎重に近づく。
スライムとの距離が三メートルくらいになった辺りで、顔面目掛けて何かが飛んできた。
「うわっ!?」
なんとか避けたと思ったら、頬が熱い。
3歩下がって、頬に手を当てる。
皮膚がただれている……酸、なのか?
フローとフェイも戦っているが、やりにくそうにしている。
しかし2人(匹)を見て、スライムの攻撃方法が分かった。
スライムは触手を高速で伸ばして攻撃していたんだ。
スライムは俺に近づくと、触手を伸ばす。
今度は逆の頬が酸で焼かれる。
だめだ、集中しないと殺られる。
もう一度、スライムに近づく。
やはり一定以上近づくと触手の攻撃が来る。
タイミングを掴めば、避けるのは難しくない。
触手が伸びた瞬間に、踏み込んでスコップで突き刺す。
「うぐっ……」
腹に衝撃が走る。
迂闊だった、何て勘違いをしたんだ俺は。
悔しいが、逃げの手を使った。
「火球LV1」
スライムは一撃で消滅する。
「フロー、フェイ。大丈夫か?」
フローとフェイには、ピンク色の防御膜が展開されている。
フローとフェイもスライムをかなり警戒しているな。
俺には回復スキルと魔法攻撃スキルがあるから、今は2匹とスライムの戦いを見よう。
戦いを見ていると、スライムの触手攻撃は2本までが限界と見た。
1本目は、ある程度(約3m)近づくと攻撃して。
2本目は、至近距離でフローとフェイの攻撃と同時に合わせている。
カウンター又は、相打ち狙いの攻撃だ。
1本目の触手はフローとフェイには、全く問題のない攻撃だったみたいで、危なげなく避けている。
2本目の触手攻撃はギリギリで避けたり、かすったりしている。
愛猫のスピードに対応するとか、とんでもないな。
防御スキルを使うのも解る。
そして問題は、フローとフェイの攻撃が何回も当たっているのに、スライムは消滅しない。
HPが異常に高いか、考えたくないが物理攻撃が通用しないのかもしれない。
戦いは、しばらく続いている。
どうやら、スライムの触手は役割が決められていてると見て、間違いない。
そう思うと、スライムも単調な攻撃ばかりしてると解る。
フローとフェイも対応しだして、2本目の触手ですら、うまく避けるようになっていた。
「す、すげぇ」
声に出して応援したいが、2人の集中を切らしてしまうかも知れないから、止めておこう。
俺が見てから、少なくても40回近く攻撃を当てているのに、スライムはまだ消滅しない。
どこかコアとか弱点があって、そこを攻撃しないとダメなのかも知れない。
「フロー、フェイ。俺も参加する」
「にぎゃゃゃゃゃ!」
「ウニャャャャャ!」
なんか怒られた気がする。
どうやらここでの参戦はダメみたいだ。
だが、それからまもなくスライムは消滅した。
よかった、物理攻撃無効とかじゃない。
モンスターの消えた床から、魔石を拾い集める。
スライム3体で魔石18個……売れば9千円。
本来なら3で割るから、1人あたり3千円。
時間にすれば大したことないが、命の危険を伴うことを考えると、なんか割りに合わねえな。
愚痴をこんなダンジョンで言っても、仕方ないから、通路を進む。
最初の小部屋から、他に通路は2本しかなく、左を選んだ。
そして歩くこと数分、1体のスライムを発見した。
モンスターが1体なら、俺は試したい事があった。
「フェイ、防御スキルはまだ使えるな?」
「ニャッ」
「頼む」
「ニャニャッ(壁)」
俺を被うように、ピンク色の膜が出現した。
スライムはこっちを見つけたのか、俺たちの方にブヨンブヨンとゆっくり進んでくる。
慎重に距離を測りながら、近づいていく。
だいたい予想通りのタイミングで、触手が伸びてきた。
スコップの手甲で触手を逸らした。
やっぱりタイミングが分かれば、避けたり防いだりする事は難しくない。
しかも1本目の触手はまたも、顔面を狙ってきた。
そのままスライムを射程圏内にとらえ、渾身の一撃を与える。
同時に、スライムの2本目の触手がカウンター気味に襲ってきたが、フェイの防御スキルのおかげでダメージはない。
これと同じ事をもう一度繰り返した時、触手の戻りが思った以上に遅い事が判った。
実戦でやっと気づいた。
フローとフェイの戦いを見てるだけじゃ気づかない事もあるんだな。
3回目の接触は、スライムに2回攻撃を与えたところで、いったん離れて攻撃。
この戦法だと、一本目の触手が簡単に対処出来る。
何度か繰り返しても、一向にスライムは消滅しない。
パリーン……
防御スキルの効果が切れた。
「しゃーっ!!」
「フゥーッ!!」
フローとフェイが加勢に来た。
俺の加勢は断っておいて、俺のピンチに直ぐに動くとは。
1本目の触手を避けると、フローが攻撃をモーションをとった瞬間に身を翻す。
2本目の触手は、フローのフェイントに引っ掛かる。
そしてスライムが次の攻撃に移る前に叩きまくる。
攻撃に集中しすぎて、一本目の触手が頭を掠めた。
「くっ、このぉぉぉ!」
怒りの混じった攻撃は、最後の一撃になった。
スライムは塵となって魔石を落とした。
ス、スライム……かなりの強敵だった。
おや、スライムがアイテムをドロップしたぞ?
瞳に力を入れると、文字が出てくる。
『スライムゼリー』
『肥料になる』
『水で100倍に薄めて使用する』
なんだって!? 早速うちの庭で試してみよう。
「フェイ。あの防御スキルはまだ使えるか?」
「ンニャ、ニャニャッ(壁)……ナァ~~」
何の変化もない。
どうやら、3回が限度みたいだ。
よし、今日は帰ろう。
戻るさいに、何体かのスライムと遭遇したけど、火球のスキルを連発して始末した。
どんな肥料になるかは、後日確かめることにして、もっと強くなるまで、3階層は深追いしないようにしよう。
ステータス
ネーム……六角橋 弥
レベル……10
ジョブ……一般人
ヒットポイント……234
ストレングス……37
デクスタリティ……47
マジックポイント……74
スキル……回復魔法2、火魔法1
パッシブスキル……早熟、アイテム鑑定、消費MP半減、転職
コレクション……孤児補正、双子補正、四兄弟補正
スライムは強敵でした。
下層に行く度に、想定外となるバカな主人公ですが、一応考えています。
これからも、そんな主人公と猫ちゃんズをよろしくお願いします。