【十二階層】 所員とダンジョン探索
誤字報告ありがとうございます。
家の前で、少し話し込んでいたので、近所の人たちにも見られ始めた。
もう、噂になるのは確定だな、と思いつつ所員の人たちを家の中へ案内する。
不思議とフローとフェイはやってこない。
昨日話した『明日は一緒に行けないから』を理解してくれたのだろうか。
所員たちが持ってきた荷物を開けて、ダンジョン用の装備をしている。
見ると、頑丈そうな革製のプロテクターみたいな作りで、部分部分をガードするような感じで動きやすそうな装備だ。
武器は反りのない片刃の剣を手に持ち、予備の武器は大型のナイフで腰に差していた。
俺はスコップで造った防具を持ってくるのは恥ずかしいから、スコップと大ハサミだけを持ってきたが、所員の装備を見て、それすら恥ずかしくなってきた。
自衛官の高円寺さんは、ダガーと呼ばれる超大型のナイフ2本のみだ。
「えっと、六角橋さん。 まさかこの装備でダンジョンに入ってるんですか?」
やっぱり聞かれたか。
でも、昨日から答えは用意していた。
「始めにここを見つけた時は、よく分からないでダンジョンに入ったんで、スコップとハサミを持っていったんです。 まあ、最初は死ぬかと思いましたが、今は何故かこの装備がしっくり来るんですよ。不思議ですよね」
すると、高円寺さんが武器について話してくれた。
「ダンジョンのモンスターに止めを刺した武器は、壊れ難くなり、少しだが攻撃力アップ等の不思議な力を得るんだ。 弥君、君はこれでどのくらいモンスターを倒してるんだ?」
なるほど、スコップとハサミが全く壊れないのは、そういうことだったか。
「ざっくりでいいなら、ひとつの武器あたり、30体くらい倒してます」
「ほう、それなら納得だ。それくらい倒せば僅かに攻撃力も上がってるな」
(しかし初心者って情報だったが、調査ミスか。1人で60体ならパーティで、200から300は倒してる計算になるぞ)
ダンジョンに潜るための装備も終わり、元脱衣場に案内する。
高円寺さんは、何故か楽しそうにしている。
「今まで、何百ものダンジョンを潜ったけど、こんな入り口は初めてだな」
やっぱり、相当数のダンジョンが出現してるんだな。
何百とか、意味がわからん。
◇
◇
◇
既に、大モグラと3回目の遭遇戦になったが、いつもと出会う頻度が少ない気がする。
運が良いのだろうか。
高円寺さんは飽きたのか、何となくつまらなそうだ。
俺も自分の出番がなくて、つまらない。
だけど魔石の3分の1は、俺が貰っていいって聞いたし、5人までのチームなら、戦っていないメンバーも経験値は取得できるって話だ。
これが出来るなら、どこかのオンラインゲームみたいに、強者が弱者のレベルの引き上げとか出来るんじゃないかと思った。
「君、今考えてることは、未経験者の底上げかい?」
高円寺さんは超能力者か?
「えっと、はい! そうです」
高円寺さんは、ニコニコしながら答えてくれた。
「君とその仲間は、色々知らないようだから、2、3基礎知識を教えようか。パーティを組んで探索する場合は5人以内が推奨だ。理由はパーティ全員に経験値が入らない現象が起きるからだ。詳しい原因は未だ研究中だ。面白いことに5人パーティでも2人のパーティでも個人に入る経験値は変わらないって研究結果が出ている。もうひとつは探索者にならないとパーティ内の経験値の共有は出来ないって事かな。要は最低でも1回は、命をかけて自分の力でモンスターと戦わないとならないって事だな。解ったか?」
「……ええ、まあ、何となく」
ならば、なぜ1体のモンスターを倒したあの時、俺だけじゃなく、フェイとフローが劇的に強くなったんだろう。
しばらく歩いてると、5体のモンスターと遭遇した。
今まで、大モグラと呼んでいたが『ジャイアントモール』って名前らしい。
でも大モグラでいいよな。
「君、一匹戦ってみるかい? もう倒せるんだよね?」
「はいっ、お願いします」
「青山君、白山君、1匹こっちに誘導して」
青山さんと白山さんは、チラッとこっちを見て『はい!』と答えた。
青山さんと白山さんの動きは凄い。
じゃれてくるペットに指示を出しているかのように、1体だけこっちに来るように誘導した。
大モグラはいつも通り、攻撃の種類は突進だった。
俺はスコップを斜めに構えて進路変更に使った。
突進を逸らされた大モグラは、向きを変えるためにブレーキをかける。
よし! スピードが落ちた。
この瞬間に、大モグラの柔らかい部位をめがけて、スコップで突く。
念のため、周囲を見て安全確認をしてから、連打で畳み掛ける。
連打をまともに受けた大モグラは、間もなく魔石へと変化していった。
不思議な事に、魔石に変化すると返り血すら消えてしまうんだよな。
まるで身体を動かすゲームのような感覚だ。
「ほう、なかなか慣れてますね」
(しかも、攻撃に集中する前に他の戦いを確認した。慎重な性格で、Gモールは余裕で倒せる……か)
「ふう、終わりました」
青山さん達も既に倒し終わって、こちらを見ている。
「上出来じゃないか。なら、もう少し試させてもらっても良いかな?」
高円寺さんの笑顔が、なんか恐い。
案の定、3体の大モグラと戦わされるはめになった。
でもこの程度なら、普段から想定して戦っている。
フローとフェイが強すぎて、そんな機会が巡ってこないだけだ。
まとめて襲ってくる大モグラの内、2体スコップで逸らして、最後の1体に叩きつける。
それを暫く繰り返す。
1体を倒したところで、もう1体をスコップで逸らすのを失敗して、後方で見守っていた高円寺さんたちに向かって突進していった。
結果、俺が倒したモグラは2体だけとなった。
「ご苦労様、3対1ならなんとか倒せるようだけど、まだやめた方がいいな」
(ふむ、実力は解った。おそらく何らかの補正が付いていて、初心者にしてはそこそこ強いんだろうな。まあスカウトするほどの逸材じゃなさそうだし、出来るだけ早めに切り上げて帰るか)
なんか、高円寺さんに値踏みをされた気がしたけど、気のせいだよな。
そして、地下2階手前の部屋までたどり着いた。
「ここです、この先に地下2階に降りる部屋があります」
「うん、じゃ行こうか」
高円寺さんが淡々と促す。
少し多くモンスターが出るんだけど、関屋さんを除いたみんなは、俺より強いから問題ないか。
今回は10匹の大モグラが出現したけど、あっさりと倒してしまった。
そして地下2階に到達したら、直ぐに魔法陣の場所に近づき、ダンジョンの出入口に戻ってきた。
その後は、事務的に物事が進んで、所員と自衛隊の人は帰っていった。
あの人、不思議だったなぁ。
ここの階段を登り降りする以外は、つまらなさそうにしてたもんな。
見た感じ、もっと強いモンスターと戦ってる姿が似合ってそうだしな。
こうして正式に、ここのダンジョンが国の管理下に置かれ、僕が代理で管理することになった。
ステータス
ネーム……青山
レベル……15
ジョブ……一般人
ヒットポイント……308
ストレングス……34
デクスタリティ……49
マジックポイント……68
スキル……魔法防御2
パッシブスキル……モンスター鑑定
コレクション……四兄弟補正
ネーム……白山
レベル……20
ジョブ……一般人
ヒットポイント……406
ストレングス……43
デクスタリティ……63
マジックポイント……86
スキル……物理防御3、回復2
パッシブスキル……なし
コレクション……片親補正
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