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【隠し階層1】ダンジョン対策庁①

手探りの施策ですが、10話毎に閑話を1つ差し入れてみます。


思った以上の反応を貰っているので、週3回投稿を一旦中止にしまして、半月間毎日投稿します。


誤字報告、ものすごく感謝しています。




 日本で新たに発足した部署『ダンジョン対策庁』は名義上、防衛省の管轄下に置かれていたが、その権力は『省』に近いものがあった。


 その異様な立ち位置は、2人目の防衛省副大臣が、科学技術庁の長官を兼任していることでも、容易に推測できる。


 ある一室で、ダンジョンについての対策と今後の方針が議論されていた。


「………………という理由で、他の議員から探索者の規制緩和を求められています」


「その意見には反対です」

「そうだ」

「そうだ!」


 現在の日本では『探索者』になるための規制が厳しい。


 過去に罪を犯した者や、未成年者は、特例を除き探索者になれない。


 理由は『探索者』が強大な力を得て、犯罪に走る可能性が高くなること。

 もうひとつは、若年層の初心者の死亡率が高いことだ。


「その話はひとまず保留だな。力の強い犯罪者など、迷惑も甚だしい」


「次の議題は…………という実験結果から、ダンジョンは6人1組まで、経験値が得られるということが、証明されました」


「その話にアメリカは?」


「恐らくですが、知っていて敢えて秘密にしている可能性があります。なにせ世界で一番ダンジョンに詳しい国家ですので」


「何を言う! 魔石を電気に変換出来る装置を発明したのは、日本だぞ!」


「その魔石ですが、国家規模で運用するには全く足りていないとの報告がありまして、一時的に魔石の買い取り単価を上げてはどうかとの話もあります」


「バカを言え! そんな事をしたら『上級探索者』をボロ儲けさせてしまう。それに自衛隊員の不満が爆発してしまうぞ!」


 自衛隊探索者は、徹底したサポートにより、強さが民間の探索者とは桁が違う。


 上位の自衛隊探索者が、民間の流通で稼いだとすると、月収で億超えが続出してしまうのだ。


 上位の自衛隊探索者はそれだけの実力がありながらも、賞与以外の給料は公務員となんら変わらない。


「自衛隊探索者の強い者たちは、数千万の賞与を、年間2回も貰っているそうじゃないか? それでなんの不満が?」


「それでも、その優秀な自衛官が民間人だったと仮定すると、年間十数億の収入が見込まれますよ? まあ、今のところそんな民間人などいませんがね」


「んんっ!」


 この部屋で一番地位が高い者に、咳払いをされて話は戻る。


「で、6人1組を世間に公表するかどうかを、検討したい」




 結局この話は『公開しない』ことに決まった。


 理由は、あまりに強い民間の探索者を多く作りたくないためだけであった。


 魔石は不足しているのに、矛盾した話である。


「次の議題は、探索者の死亡率についてです」


 ダンジョンが出現して『死』というものが、身近になったとは言え、ダンジョン初心者の死亡率が高いのは政治的にも問題があった。


 この話は、初心者に性能の高い防具を、格安でレンタル出来る、という法案を提出することに決定した。


「続いては、イレギュラーダンジョンについてです。昨今、目立たない地点にダンジョンの入り口が出現する事例が相次いでます。これに対する意見や対策がいくつも寄せられているので、検討しましょう」



 この議題には一番の時間を要したが、土地の権利者承諾のもと防犯カメラの設置や、制服警官の巡回強化しか、新たな動きはなかった。



「続いては、民間探索者の納税者ベスト100の監視案について…………」


「小型魔石発電機の製造を民間に委託する案について…………」


 など、様々な案が議論されていた。


「最後に、探索者の職業について、検証結果です」


 この部屋の全ての者が、報告者に耳を傾ける。

 参加者にとって、この話が最重要項目だと思われる。


 報告者は一瞬怯むが、何とか平常時と変わらぬ声で報告する。


「3年以上勤務した自衛官の探索者は必ず職業に『軽戦士』となりますが、警察官でも『軽戦士』になる場合があると、判明しました」


 一呼吸置いて話は続く。


「『軽戦士』となった警察官の経歴は、7年以上の現場経験者でした。デスク担当の者や、キャリアの方々は職業は『一般人』となっていました」


 他の者は、大人しくメモをとっていた。

 この話の資料は、報告者本人しか所持していないようだ。



「続いて、職業『治癒士』についてです。予てより検証が進められていた『治癒士』ですが、医者、看護師を対象に何名かに探索者になってもらいましたが『治癒士』にはなることが出来ませんでした。今のところ、聖職者しか『治癒士』を発現していないのが現状です」


 日本は『一般人』以外の職業の検証に、力を入れているのだった。


 ただ、気性の荒い者を強い探索者にするのは、抵抗があるせいか検証は想像以上に進まなかった。








 暫く、意見交換をしたあと、いくつかの方針が決まった。



「では、初心者の死亡率を軽減するため、1階層から4階層までの『初心者用ガイドライン』を作成し、防具の貸出をする補助機関の設立をします」


 パチパチパチパチ……


 まばらにする拍手の中で、誰かの呟く声がした。


『この程度で、資源と税収の増加が見込まれるのだろうか』と……



 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 防具を貸し出して死者が減って、その人達が稼げるようになれば税収は増えるだろう。
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