【九十二階層】実家ダンジョンで肩慣らし
風邪を引いているのに雨の中、外仕事すると倒れます。
まじで。
翠ちゃんの実家ダンジョンまで到着した。
予定の20分前に着いたので、コンビニに立ち寄ろうとしたら、光太郎、ひかるのキラキラコンビを見つけた。
おいおい、見せつけてくれるじゃねぇか!
ここのコンビニは探索者向けの店であって、カップル向けじゃねぇ!
「兄さん!」
俺を見ると、光太郎から離れて駆け寄るひかる。
なんか、勝った気がするのは俺の心が狭いせいなのか。
「弥を見かけて、俺から離れるひかるちゃんを見ると、すげー嫉妬するんだが。新たな属性に目覚めそう」
「光太さん、兄妹の絆には勝てませんよ」
ひかるは、チロッと舌を出して光太郎をからかう。
まだ清い交際のようだ。
光太郎もやって来て、俺達に追加で愚痴る。
「それより、早く翠ちゃんと合流してダンジョンに行こうぜ光太、フローフェイを何時までもケージに入れておくのは不憫だ」
「オッケー弥、早く武器の元を取らないとな」
そうだな。
俺はE級魔石が1個3000円で、みんなは4000円だ。
ガンガン稼ぐぞって、ひかるは5000円だったな。
■□■□■□■
ゲートをくぐり抜け、着替えて武器を装備する。
フロー、フェイもケージから出て伸びをしている。
ダンジョン装備に着替え終わった翠ちゃんは、メイスを手に持ち、薙刀をマジックバックに収納する。
「弥さん、一階層はスケルトンです。先ずは打撃武器で試してみましょう」
俺は翠ちゃんの美しい佇まいに見惚れていたが、何故か周りの人々は、俺達全員に視線を注いでいた。
〜なあ、あれって、駅前ダンジョンのあいつ等じゃないのか?〜
〜間違いない。4人組と2匹の猫だ、F級魔石はおろかドロップアイテムまでガン無視のパーティーだぜ〜
〜やっぱり本命はここのダンジョンか、あまり見かけないけど、深夜勢なのかな?〜
〜念の為、あいつ等とは反対方向に行こうぜ、多分僕たちより強い。モンスターは余らないと思う〜
あ、なんか恥ずかしい……
「よし、先ずはスケルトンだ。今回、低階層及び少数のモンスターは俺達の武器を慣らすために使う。フローフェイ、暫く我慢な」
「なぁ〜」
「ニャァ」
よし、怒ってない。
道中、何組かの探索者と出合うが、軽く挨拶して、行動が被らないように気を使い合う。
ここの探索者って、いい人が多いな。
「父の話ですと、最近探索者が増えてきて、前からいる探索者が、道を譲り始めたらしいです」
そうか……なら……
「みんな、この階層は俺達の方が圧倒的に強い。スケルトンが1体または3体ならスルーしよう」
俺の提案に光太郎が応える。
「いい考えだ。俺達4人は、均等に武器を慣らした方がいい。偶数は計算しやすいからな」
「なら、5体出たときは猫ちゃんずにお裾分けしますね」
「にゃ」
「ニャ」
お前達『お裾分け』の意味が解るのか……
少し進むと、2体のスケルトンと遭遇した。
ここのスケルトンは、棍棒持ちのスキルのないタイプで、今となっては雑魚モンスターに成り下がっている。
初回はひかる、光太郎のキラキラコンビが対応した。
結果は圧勝で、骨を破壊する作業のように感じた。
「ひかる、光太、感想をどうぞ」
「駅前ダンジョンの十二階層と同じモンスターだったのに、楽に倒せました。これが新装備の結果なのでしょうか?」
「ひかるちゃんは斬撃武器だっからじゃないかな? 俺の体感だと今まで使っていたハンマーと大差なかったぜ」
そう、スケルトンは斬撃、特に刺突に耐性があるんだ。
それから暫くスケルトンが出てこない時間が続いた。
「人が増えただけありますね。なかなか出てきま……あ……」
まるで翠ちゃんをあざ笑うかのように、4体のスケルトンが出てくる。
俺もスコップ以外の打撃武器は初めてだ、武器も俺も慣らしをしないとな。
俺は力いっぱいに殴る攻撃をせず、軽く当てることを意識して、正確にたくさん叩くような戦いを試みた。
楽勝だったんだが、スコップで戦った時と差が感じられない。
これ、900万円近くしてるのに、俺が買ったスコップってホームセンターで1800円だったよな?
俺は愕然とした。
「なんか、威力上がった?」
「わたしも感じましたが、気のせいかも知れません」
光太郎とひかるが、暗闇にいる俺に希望の光を灯す。
よし、検証だ!
しかし、なかなかスケルトンと遭遇しない。
よし、見つけた。
また2体だったので『キラキラコンビ』に任せる。
戦ってる姿を見てると、変わった所は見受けられない。
「間違いないです。武器の威力が上がっています」
おお! 俺も体感したい!!
1体と3体のスケルトンはスルーして、次は5体のスケルトンと出会った。
「にゃぉ♡」
「ニャァ♡」
フロー、フェイが大喜びで駆け出す。
俺も喜んで倒したが、ハッキリと判るくらいの感覚は得られなかった。
だけど、スケルトンとの5戦目では、さすがの俺でも実感できた。
これが武藤さんが馴染むって言ってたやつか……これって、馴染むというより武器のレベルアップじゃないか。
俺達は無人のボス部屋から階段を下り、安全地帯で戦利品を確認する。
「倒したスケルトンは26体で、E級魔石が52個、マジックポーションが12個です」
「後半、ポンポン落としていったな。俺と翠ちゃんがここで修行してたときは、4個くらいだよな?。ぜってぇ猫ちゃんずの『招き猫』パワーだ」
「御二人は、アイテムとモンスターを招いてくれるんですね」
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実家ダンジョンの二階層で出てくるモンスターは、ゴブリンだ。
ここのドロップアイテムは『魔皮』だ。
俺の鑑定眼が教えてくれた。
ただ俺が鑑定しても『アイテムの作製素材』としか分からないから、売却アイテム決定だ。
ここでも探索者が多く、倒したゴブリンは少ない。
「ゴブリン24体でE級魔石が48個、魔皮が4枚です」
「ちょうど、100個か。ひかるちゃん枠を使えば1個、5000円だから50万円だな」
この税率が少ない探索者を使って、換金する方法は今の主流になっている。
なぜなら、そうすることで初心者たちが、安全に経験値を得られ、熟練者側は収入が増えるので、WinWinな関係が成立する。
さあ、次は三階層だ!
三階層のモンスターはホブゴブリン。
モンスター肉(上)をドロップする大人気モンスター。
多くの探索者はここを目標の狩り場として、来ていると言っても、過言じゃない。
ただ、身の丈に合わず無理をしてこの階層に潜っている探索者も多いのか、帰りの探索者も見かけることが多い。
「ここってさ、5人パーティの探索者って多くないか?」
「そうですね。今は6人一組が主流になっているのに」
そうなんだよな、結構浸透してるかと思ったんだけど、まだまだ最新情報扱いなのかな?
「ハッハッハッ。弥、翠ちゃん考えが足りないぜ。ここの5人パーティはここのモンスター肉が目当てなんだ」
あっ、そうか。
ホブゴブリンのドロップするモンスター肉は2kg、小分けにすると、200gが10個なんだ。
「まあ、ここで無理なく30体倒せるなら、6人パーティでもいいけどな。見た感じ一回ドロップして満足して帰る探索者もいそうだ」
「兄さん、光太さん。モンスター肉5体です」
「にゃあ♡」
「ニャン!」
「今回は当たりでしたね」
翠ちゃんの言葉通り、大当たりの階層だった。
ボス部屋のホブゴブリンは狩られていたけど、30体のホブゴブリンを倒すことが出来た。
しかも……モンスター肉ドロップが7回も出たのは異常だよな。
「しかし、これだけ美味い肉なのに、中毒性がないのが不思議だ」
「そうですね、光太さん」
「でも、お野菜が欲しくなりませんか?」
「「「それな!」」」「にゃ」「ニャ」
地下四階層からは探索者がぐっと減ってきて、モンスターとの遭遇率があがったけど、2体とか1体とか少数との遭遇が多くて思ったより狩れなかった。
そして、地下五階層に降り立った。
ステータス
ネーム……六角橋 弥
レベル……23
ジョブ……上級戦士
ヒットポイント……1264
ストレングス……232
デクスタリティ……272
マジックポイント……304
スキル……回復魔法4、火魔法4、速度上昇4、索敵3、剣技0、攻撃力上昇0
パッシブスキル……早熟、アイテム鑑定、消費MP半減、転職
コレクション……孤児補正、双子補正、四兄弟補正、第一迷宮制覇補正