【九十一階層】武器改更
ゆるゆるのペースですが、再開します。
俺、光太郎、ひかる、翠ちゃんで反省会を開いている。
そう、十一階層に出現したモンスター、メタルアントに広い意味で大敗を喫したのだ。
メンバー全員、武器にダメージを負い、魔法攻撃でゴリ押しして逃げ帰ったのだ。
「やはり、武器は打撃系と斬撃系の2種類あった方がいいですね」
「特に斬撃系の武器は、今買える武器で最高品質にするか頑丈さが特化した物にしないと」
翠ちゃんに続いたひかるが、チラッと俺を見る。
そう、サブウェポンとして愛用していた、スコップが完全に壊れてしまったのだ。
「弥、落ち込んでるけど、スコップでここまでやってきたのが異常なんだからな?」
そう、スコップは初代を除いて、駆け出しの頃から使っていた武器だった。
最近は使ってなかったけど、メタルアント戦でメインウェポンが破損し、サブウェポンのスコップまで完全に壊れてしまった。
「でも、モンスターランク以上の防御力ってのも頷けるな。これは作戦を練り直さないとだな」
光太郎の言うことはもっともだ。
打ち合わせて、武器を新調することになった。
予算は8000万円、購入予定武器は8個で、余ったお金は防具の預金に回すことになった。
「武器1つあたり、1000万円か……なんか理解が追いつかない」
パーティー資産だけじゃく、俺の個人資産を注ぎ込んだからな。
我ながら思い切ったぜ。
「兄さんさん、元を取るには時間がかかりますが、金欠の解消は数日あれば問題ないです」
「イヤイヤ、元を取るのも弥とフロー、フェイがいれば早いんじゃないのか?」
「幸い、実家のダンジョンもメタルアントが出現します。下調べも兼ねて一度実家に帰りますね」
翠ちゃんの実家ダンジョンもメタルアントが出るのか。
なんか、ダンジョンにしか出現しない幻想金属が出るんだったよな?
確か……何だっけか?
「弥さんメタルアントは、ウルバイト鉱石をドロップアイテムとして出ます」
翠ちゃん、心読みすぎぃ!
■□■□■□■
今、俺達は武藤探索店にお邪魔している。
電話で連絡をしたら、貸し切って武器を見せてくれることになったんだ。
「いらっしゃい。メタルアントに対抗出来る武器を集めてみたよ。いやぁ本気で苦労したんだから……運ぶのが……」
大きなテーブルに置かれた20の入れ物、その中には様々な武器が、それぞれに収められていた。
「最近ウルバイト鉱石の需要と供給が共に倍増してね。足りないのは荷運び人くらいだ」
その運び屋不足の理由が分からない件。
「ダンジョン産の金属から作られた武具は持ち主を選ぶと聞きました。それが原因なのでは?」
翠ちゃん解説ありがとう。
「実は、ダンジョン産鉱石のひとつ、ウルバイト鉱石を使った武具の量産化が可能になってね。メタル系モンスターのいる階層に到達してくる探索者も増えたことから、納品が楽になったんだ。運ぶのは楽じゃないけど……」
武藤さん、そこを強調するな。
「みなさん、この武器を買うにあたり、テストがあります。このショートソード、約3kgの重量なんだけど、見た目以上の重さを感じたら、売ってあげられないんだ。ちなみに僕は持ち上げた時、30kg並の感覚だった。まあレベル制限武器だと思ってくれ。」
少し緊張して、一番軽そうなナイフを手にする。
重い……レベルが足りないのか?
まてまて、武藤さんが30kg並って言ってたじゃんか。
「うおっ!? 重たいけど、金ほどじゃないよな?」
「そうですね。これだけの金を持ったことはないですが……」
俺には重い以外の感想は出てこないぞ。
「家にある日本刀の2倍くらいの重さでしょうか?」
ひかるは自分の親の武器と比べてる。
「ここに用意した武器は、全てダンジョン産のウルバイト鉱石から造られたウルバイト鋼と言われる材質だ。実は素の性能は地球産の武器と比べてもそんなに変わらないんだ」
それでも、武藤さんがこの武器を進めるのには理由があるのだろう。
「このウルバイト鋼の比重は『16』で鋼や一般的に武器として使われる金属の約2倍と、かなり重たい」
ああ、なら金より軽いって言った光太郎の感覚は正しいのか。
えっとぉ金の比重は20くらいだっけ?
「金の比重は19.3です弥さん」
怖いよ翠ちゃん!?
「そしてモース硬度は約7.5と、タングステンとほぼ同等の硬度を持つ。なので性能としては、タングステン以上、炭化タングステン以下だと思っていい。それより全員軽々とウルバイト鋼の武器が持てるのに改めて驚いたよ」
俺は安心したよ。
俺が転職したばっかりだから、低レベルで武器が持てないとか、脳裏によぎっていたからな。
「ダンジョンでは何故か、武器は劣化しにくくてね。だから自分が『これだっ』って思った武器を選ぶといいと思うよ」
親切な武藤さんだったが、話を聞いているのは俺と翠ちゃんだけで、光太郎とひかるのキラキラコンビは日本刀を眺めている。
「これ、いい感じです。最近力が上がったせいで今までの武器が軽すぎて、困っていたんです」
武器が軽くて困るってあるのか?
「ただ、少し長いので居合い切りは難しそうです」
「ひかるちゃん、モンスター相手に居合い切りはいらないだろ? 次は打撃系を探そう」
徐々にカップル化してる2人を無視して、俺も武器を探す。
武器で一番多かったのは西洋剣で、大きさも4種あって豊富だ。
次に多いのはハンマーで、柄の長さは2種類しかなく、鎚の部分は同じに見える。
翠ちゃんは、一本しかない薙刀を手にしている。
「薙刀としては短めですが、私はこれにします」
俺が手に取っているロングソードより、ちょいと長い程度の薙刀だ。
俺が手にしたロングソードは、片手でも両手でも扱える仕様になっていて、気に入った。
■□■□■□■
決まりました。
驚いたことに、俺達の手にした斬撃武器は被ることがなかった。
一番本数のあったミドルソードが手付かずだったので、このパーティーは個性的なのかなって感じた。
そのミドルソードは90cm程度で一番使いやすいはずなのに。
光太郎はそのミドルソードを少し細長くした、派生型のミドルソード。
俺は120cmのロングソードを選んだ。
ひかるの日本刀は光太郎と同じ長さの100cm程度で、翠ちゃんは薙刀で確定した。
打撃系武器は翠ちゃん以外はミドルハンマーと呼ばれる、90cmほどのハンマーを選んだ。
翠ちゃんだけ、鉄球の付いたフレイルを選んだ。
ミドルハンマーは3つしかなかったけど、そのせいかな?
「はい、1つ5万円割引するって言ったけど、端数も引いておいたから」
7552万円もの買物だったが、7500万円にしてもらった。
まぁ武藤さんの表情を見る限り、損はしていないようなので有り難くオマケしてもらおう。
「あっ、そうそう。ある程度は分かってると思うけど、この武器は新品だから、じっくり慣らしてから本番で戦ってくれ」
俺達は大きな買い物をして、帰路に着いた。
で、帰路に着いたはずなんだが、何故かみんな俺の家にいる。
そう、武藤さんの言葉を聞いて、光太郎が『大雄山』の動画を見ていたのだ。
その検証動画をから判断すると、1つの武器で100から200体ほどモンスターを倒せば、完全に馴染むって話だった。
「弥さん、私たちもローカルサイトでは有名になりつつあります。一度、実家のダンジョンで慣らしてみてはどうでしょうか?」
有名になった原因は、駅前ダンジョンで二度も低階層て魔石&ドロップアイテム無視してダンジョンを駆け回ったからだ。
だって急いでたんだもん。
そうか、翠ちゃんの実家ダンジョンでもメタルアントが出現するんだったな。
一度くらい、目撃情報があった方がいいよな。
「よし、みんなお泊りセットを用意してくれ。決行は何時がいい?」
「何時でも!」
「今日からでも」
「実家に連絡をいれたいので、1日待っていただければ」
「なら、3日後の朝10時に、実家ダンジョンに集合しよう」
「はい」
「おー!」
「火曜日の10時ですね。分りました」
今度は、翠ちゃんの実家ダンジョン、通称『ドス』と言われる、第2ダンジョンを深くまで探索することに決まった。
ステータス
ネーム……六角橋 弥
レベル……20
ジョブ……上級戦士
ヒットポイント……1264
ストレングス……232
デクスタリティ……272
マジックポイント……304
スキル……回復魔法4、火魔法4、速度上昇4、索敵3、剣技0、攻撃力上昇0
パッシブスキル……早熟、アイテム鑑定、消費MP半減、転職
コレクション……孤児補正、双子補正、四兄弟補正、第一迷宮制覇補正