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冷たい季節の詩集【冬の詩企画】

作者: 橋本洋一

『君との別れ』


もうそろそろ君は着く頃だろう

故郷を離れて遠い都会へ

僕は見送りに行けなかったよ

悲しくなるだけだから


寒い日はいつも君が居た

凍えそうなときだって

今から思えば愛じゃなくて

同情だったりするんだね


君には大きな夢があり

僕にはちっぽけな現実しかない

だから離れていくのを

止められなかったんだ


窓から眺めると降りてくる

冬の結晶たちがこんこんと

なんでだろう心が冷えていく

君が居なくなったからかな



『雪合戦』


得意なことはボール投げ

だから野球部に入った

だけど途中から勝ちに夢中で

野球自体に価値が無くなった


純粋だったあの頃

プロになってからは金のこと

契約金がどうのこうの

くだらない金儲け


シーズンが終わって故郷に帰る

冬の寒い日だった

子供たちが積もった雪で

雪合戦を楽しそうにしてた


ああ、俺も楽しそうにやってたのに

どうしてこんな風になったんだろ

夢を叶えてしまったら

後は何をすればいい?



『落ち葉と共に恋は儚く散った』


私はあなたが好きでした

クラスの人気者で

誰からも好かれているあなたを

私も好きになっていました


あなたには好いた人が居ると

風の噂で聞きました

信じたくはない噂でした

だから耳を塞ぎました


通学路の並木道で

あなたがあの子と手をつないで

歩いているのを見つけたとき

私の恋は終わりました


目の前にひらひらと落ちていく

落ち葉のように恋は終わりました

あなたのことを忘れるのに

しばらく時間がかかりそうです



『まるで世界が停止したように』


冬の深夜は凍てつくように

僕の身体を苛んだ

だけどこの時間は好きで

親に黙って外に出る


まるで僕一人きりのような

そんな錯覚をする

まるで世界が停止したように

自由に動けるよ


コンビニ寄って肉まんを買って

歩きながら食べてると

なんとも言えない幸福感

世界は僕のものだった


次第に白み始める世界

僕の時間は終わっていく

明日もまた歩きたい

ワガママを許してほしい



『春を待ち望んで』


人々が空を見上げている

いつの時代もいつの世代も

私は見守るだけ

ただそれだけ


窓から空を見上げる少年

大事な人との別れを惜しむ

子供たちから目を背ける野球選手

自省するために空を睨む


悲しみを堪えて空を見る少女

失恋を乗り越えるため

独りぼっちで夜を歩く青年

目一杯冬の夜を楽しむ


人々は冬と別れを厭う

春を待ち望んでいる

巡り巡って世界は廻る

新たな出会いを望む

本作は「冬の詩企画」参加作品です。

企画の概要については下記URLをご覧ください。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1423845/blogkey/2157614/(志茂塚ゆり活動報告)

なお、本作は下記サイトに転載します。

http://huyunosi.seesaa.net/(冬の詩企画@小説家になろう:seesaablog)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 少しずつ冬が深まっていくような印象がありました。 [気になる点] 肉まんの白さと 白い世界がリンクしてなかったような気がした [一言] 5つもあるな と最初は思いましたが、 最後にまと…
[一言] それぞれのひとびとが心残りを抱えながらも、春に向かって進んでいくというイメージが浮かんできました。
[一言] お久しぶりです。 『まるで……』の詩がキーだなと思いました。 この詩、単独で読むと楽しい詩にも思える。こういうことに感動できる感性ってなんかいいな、って。 でも、「冷たい季節」としてまと…
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