表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/24

死は無駄に……

 そうだ、そうだ! チキンのいう通りだ! ラタ姉は、ピピスやブレティの方がよくできたやつらだって、思ってないじゃないか!」

 クラス全員が立ち上がり、主張します。

 そうなのです。ピピスとブレティが怪物としてここを去った時、ラタは自分の部屋で、夜な夜な泣いていたのですから。

 食もノドを通らず、体調を崩して、授業どころか、日常生活もままならない状態に落ちてしまいました。その間、別の先生が代わりに授業をしていたのでした。

「え? ど、どうして、そ、そう思うの?」

 ラタの言葉が、もたつきます。

「今まで黙っていたけど、俺たちはラタ姉が、夜中に泣いてんの知ってんだ」

 彼らの目と耳は、鋭いのです。ラタは隠れて、静かに泣いているつもりでしたが、授業を三日連続休み、不審に思った数人の子供が偵察に乗り出して、知ってしまったのでした。

「だから、ラタ姉がいってるのは嘘だ!」

 フードの少年の声は、やや荒れていました。よほど、心の中がぐちゃぐちゃになっているのでしょう。

「あの二人がいなくなって、俺たちも悲しかった。キンダーキングのセブンが、なんといおうが、俺たちはやっぱり悲しい。怪物になって、友人が消えるのは悲しい。そして、ラタ姉がいなくなるのも、やっぱ悲しいし、寂しい」

 一気に、フードの少年が話しました。

 それを聞いたラタは、口元を両手で押さえました。目に涙がたまってゆき、もう少しでこぼれそうです。

 彼女は、ふいに走りだしました。そしてそのまま茶色の扉を乱暴に開けて、出ていってしまいました。

「ラタ姉!」

 チキンが叫び、追いかけると、残りの生徒たちも、だだだっと、押し合いへし合いしながら、扉へ突進します。



 あれから、ラタは自室にこもったままで、子供たちが何をいおうと、返事してくれませんでした。何時間もねばりましたが、一向に出てくる気配もなく、チキンは諦めました。といっても、ラタを部屋から出すのを諦めただけです。ラタをそのまま怪物にしてこの国からいなくなる、というのを放っておく気はちっともありません。

 チキンも、本音をいえば、ラタが出てくるのを待ちたいのです。でも、それよりも、もっとやるべきことがある、と彼は確信したのです。

 彼が今いるところは、チキンポット。それは、彼の研究所です。キンダーキングダムから歩いて五分の場所に、ぽつんと建っています。

 形は、立てた卵を横から真っ二つに切って、その断面をえいやっとばかりに地面とくっつけた感じです。

 この研究所は、偶然にも名前がチキンポットでした。まるで、チキン専用の研究所のように思えるのですが、実際は前からあったものです。とはいえ、中にはチキンが望んでいる設備がちゃんとあります。まるで、チキンの頭の中にある理想の研究所を取り出して、作ってみました、というくらいでした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ