決まり悪いくらいに嫌い
十八歳以上の男子は、戦争に備え、訓練を積みます。そして教育係になるにも、十八歳以上しかなれないので、結果として先生役になるのは、女子だけ、ということになっています。
「最近、私も思うようになったことがあります。それは、どうして子供はこうも大人を嫌いなのだろうか、ということです」
何人かの生徒が、自分の胸に手を当てたり、眉根にしわを寄せたりしています。思い当たるところがあるようです。
チキンは前々から思っていたことだったので、疑問に思うことはありませんでした。ただ、今になってラタが自分のいっていたことに気づいてくれて、ちょっぴり嬉しかったです。
「理由もないのに嫌い、この感情はなんなのでしょうね……。でも、理由がないのだから、子供たちは大人を、そして老人を、理由なしに好きになれるのではないでしょうか」
教室の空気が、固まりました。
「私には、もう時間が残されていないので、みなさんで、その答えを探してください。ごめんなさい」
ラタが、ぺこり、と頭を下げます。
みんな、キョトンとしました。チキンも、ラタのいっていることがわからず、聞こうとしましたが、口の中が乾いて、うまく喋れません。
なにか、とてつもなく嫌な予感がするのです。まるで、彼女が、彼女が――
「今日で、私の授業は終わりです」
別の静けさが、教室に流れこんできました。ぱりぱりに乾いた嫌な空気です。
「今日が終われば、私は二十歳になります」
「あ」
「あ、ああ」
「あ――あ――あ――」
思わず、意味のない言葉を、こぼしてしまった生徒もいました。
気づかず、ぽかん、と口を開けてしまった生徒もいます。
二十歳、それは子供が大人になる境界線であり、味方から敵になる瞬間です。
戦争に行かなくてはならない時です。
二十歳になれば、この国では、大人になってしまいます。そして、大人はこの国にいられないのです。しかし、今まで仲間だったことを考えると、ただ追い出すのでは、あまりにかわいそうです。だから、大人と戦わせ、きれいにその命を散らせてやろう、というキンダーキングであるセブンのせめてもの計らいから、そうなったのです。
「嫌だ!」
チキンは、声を大にしてラタに訴えました。
「ラタ姉が、死ぬなんて嫌だ!」
それに続いて、他の生徒も立ち上がります。
「もっと教えてよ」
「どうして死ぬんだよ」
「なぜ、戦争に行くの? 私と同じ女の子じゃない」




