授業は終了?
子供の国では、子供が子供に勉強を教えます。といっても、教える子供は十八歳から十九歳の者です。
キンダーキャッスル北東区の子供たちの教育係は、ラタが受け持っています。
今日の話は、戦争について、です。
教室では、チキンを含む二十一人の子供がワイワイガヤガヤと騒いでいます。ここの床は、青のレゴブロックだけで造られていて、机と椅子はぴかぴかと光っているものもあれば、くすんでいる物もあります。ちなみに、前にある教卓は、かなりオンボロです。多分、この教室にある机の中で最も年老いているものでしょう。
前には黒板があるにはあるのですが、ラタはほとんどそれを使いません。なるべく、子供たちに書かせようとするのです。
ところで、チキンは十一歳にしてラタ、そしてゼブルと同じように、幹部に就いていましたし、何より発明係を任せられています。そんな彼ですから、授業に出なくてもいいだろ、とよく友たちからいわれるのです。
「やいやいやい、とっても頭のいいお前が、どうしてここにいるんだよ?」
今日もまた一人の少年が、からかってきます。そして、他の数人も、
「どうやって、いつ、どこから、俺たちがここにやって来たのかでも、また考えてたのか?」
と突っかかってきます。
「そうかい、そうかい」
チキンは変わり者扱いには慣れているので、軽く流しておきました。
と、透き通った鐘の音が、カーン、カーンと鳴りました。授業開始のチャイムです。
しかし、教室は相変わらず、大騒動です。
「はい、はーい、みんな、着席、着席!」
ラタが茶色の扉を開けて、入ってきました。
「ベル着って言葉もう知っているでしょ? 早くしなさい!」
「もうしているよ!」
くすんだ灰色のフードをかぶっている少年が、答えます。
「冗談いってないで、さあさあ」
とラタは少しムッとしながらも、優しく注意するのですが、
「ほら見てみろよ」
と少年が、ジップフードをまくり上げ、『ベルトを着用』しているのを見せます。
しばし意味が飲みこめず、かたまっている子供たちでしたが、やがて彼のいう『ベル着』がわかって、笑いの渦が生まれました。
それは、どんどん大きくなって、嵐になりかけましたが、
「うるさい!」
ラタの鋭い声によって、あっけなくつぶされました。彼女は怒ると、怖いのです。いえいえ、彼女の怒る様子が怖い、というより、居残り、宿題が増える、といった罰が恐れられているのです。
大人しくなった子供たちを、ラタは満足げに見て、頷き、
「それでは授業を始めましょう」
さっきまで怒っていたのが嘘なくらいに、爽やかに授業を始めるのでした。