寝る前に得るだけ
チキンの部屋の床も、レゴブロックです。そこには、きちんと薄い絨毯が敷かれています。手巻き時計が、チッチッチッチ、と忙しなく時間を刻んでいました。それ以外は、全くの無音か、というとそうでもなく、時おり、外から化け物の小さな叫びが聞こえてきます。
少し怖いです。深みのある暗さが、部屋に腰を下ろしているのですから、なおさらのことです。石原では浄化石が光っていてくれたし、何より月があったので、外では別にそんなこともなかったのですが。
もちろん、オイルランプはあるにはあるのですが、オイルを無駄遣いしてはいけない、とラタから強くいわれているのです。
読書は、明るいうちにしておきなさい。
これがラタの口癖です。
溜息をついて、チキンはベッドにもぐりこみ、色んなことを考えていました。暗くても、考えることくらいはできます。
今日、彼が考え始めたことは、どうすれば戦争を終わらせることができるか、についてでした。
子供も大人も老人もいがみあってばかりで、仲直りしようなんて、これっぽっちも思っていません。
一度、チキンはセブン王にいってみたことがあります。
「大人と仲直りするのはダメなの?」
答えは、「できているのなら、とっくにしている。無理だからこそ、今もなお俺たちは戦っているのだ。とにかく、君は開発に励んでくれ」でした。
戦争で役立つ発明、それがチキンの仕事です。このキンダーキャッスルの造りにしろ、戦争用ロボットにしろ、全て彼が発案、作成したものです。もっとも、城の方は、チキンの生まれる前からあったもので、それに新設備をつけ足した程度ですが。
しかし、最近、それが嫌になってきました。どうして、争いの種をまかねばならないのでしょう。チキンは、疑問に思っています。でも、ラタもゼブルも、いいえ、キンダーキングダムにいる国民全てが、口を揃えて、大人は憎い、といいます。
一体いつどこで大人と関わった、というのでしょう。もう、それはとっくの昔の話です。なにも、わざわざ五百数十年前の話を蒸し返すのは、ちょっとどうかな、とチキンは思うのです。
さらに、自分がいつからここにいるのか、チキンはわからないので、みんなに聞くのですが、
「どうして、そんな疑問を持つんだい?」
といわれて、終わりです。だいたいみんなそんな感じの返事をします。
どうやっていつどこから、ここにやって来たのか、なんて疑問は、みんな感じないようで、チキンは変わったやつだ、と思われて終わるのでした。
「ダメだ、ダメだ!」
チキンは、ううん、と唸って、自分の頭をぽかぽか叩きました。こんなことは毎晩考えていることです。でも、わかりません。多分、これからも一生わからないでしょう。
チキンは考えをそこから離し、ふと頭に浮かんだ平和について考えてようとして、眠りの中に入っていってしまいました。