対峙して退治
そうして、何度も繰り返していくと、きっと浄化杖を発明する頭を持った子供が出てくるわけです。
しかし、どうやってブラフは、浄化杖が作られたことを知ったのでしょうか。精神共有の魔法は、あんまり離れていると、使えません。
「で、でも、一体どうやってブラフは……浄化杖ができたことを……」
『そこも、父上はお考えの上での実行だ。お前が浄化石を使えば、石原は闇で満たされるのだからな。それが俺から父上への合図、ともいえる。そして、浄化杖を作ること自体は、一日で終わる。そのことは、研究者も知っていた』
「な、なんて頭のいいやつらなんだ」
ゼブルはとても感心し、敵なのに、うっかり褒めてしまいました。
すかさず、チキンは「褒めちゃダメだよ」と文句をいってから、ピピスとブレティを見ました。
「君たちは、僕を裏切ったのか! この国を裏切ったのか!」
チキンが、拡声器越しに怒鳴ります。おうよおうよ、とゼブルも円盤から降り、拡声器に向かって吠えます。
『チキン、これも計画のうちさ。一体、僕たちが何度怪物化したと見せかけたと思っているんだい?』
とピピス。
『こうやれば、人々は怪物化を止めるために、世界を浄化しようとするだろ? 思い出してみろよ。今まで、お前に世界を浄化させようと思わせた出来事はどれだけあった?』
とブレティ。
精神共有の魔法で語りかけています。
ああ、今にして思えば、セブンの大人になりかけた者を怪物化させるという案も、そして図書館館員がチキンに浄化石の本の貸し出しを年齢を理由に断ったのも、浄化杖一本のために、なされた巧みな計略だったのでしょう。
いえ、まだまだ気づいていないところがあるかもしれませんが、チキンが今わかったところは、それくらいです。
『もう、俺たちを殺そうとするのは止めろ。世界は浄化する。それは大人の視点から見ての浄化だが、な。もちろん、真っ先に消すのはエルダリーキングダムだ。キンダーキングダムは、まだわからない。しかし、大人に反抗しなければ、浄化の対象にはならないだろう』
「なあに、ふざけたこといってやがんだよ! うりゃあ! 俺はな、ひねくれた野郎が嫌いなんだよ。特に、お前らのようなややこしいことやってくるやつはな。だから、ぶっ倒す」
どこかピントがずれていますけど、このままでもあまり問題はない、とチキンは判断して、彼の主張を止めないでおきました。
「あんなやつ、このドラゴンに比べりゃあ、大したことねえだろ?」
ゼブルの顔が、チキンへ向けられました。
「おし、いっちょう、俺が本気を出してやるか。必殺技は、俺にかかってんだろ?」
ぴょこん、とゼブルが円盤に飛び乗りました。やる気満々です。一方、チキンは、内心冷や冷やものです。